三毛猫は深く考えて居る。
自分と云う存在が如何に他者を傷付けるしか能が無いかを。
過去を思い返せば返す程、三毛猫は不安になる。
自分は傷付ける事には長けて居るけれど…
慈しんだり癒したり…
そんな方向はまるで向かない。
けれど今、心から寄り添いたい存在が出来た。
「僕(やつがれ)は他者を傷付ける術は幾らでも知ってるし、持ってる。」
そう、周りに断言するくらいに三毛猫は心を壊す事に長けて居る。
三毛猫は自分の短所を十分、理解して居る。
三毛猫にとって生きるとは破壊の基に成り立ってきた。
縁を切り…
心を閉ざし…
動物(人間関係)を破綻させ…
他者を踏み台にし…
他者を裏切り、踏み躙り…
利用出来るものは全て利用する…
己意外は誰1匹(人)として信じず、己すら信じてない。
そんな生き方しか知らない三毛猫。
自分が生き残る為には無意識の裡にそうやって生きるのが当たり前になって居た三毛猫。
ある日、仕事をする上で凄い尊敬出来る存在に出逢い背中を追う様になってから変わった。
ある程度、他者へ気遣える様になったし、労われる様にもなった。
でも、それだけだった。
三毛猫の心は空虚だ。
自分には決して持ち合わせないものに対して空虚を感じるのだ。
その空虚は年々、大きくなって三毛猫の心の中に蟠る。
「どうして僕はこうも違う?
どうして当たり前に得る筈だったものを与えられず、与えられてると感じれなかったのだろう?」
三毛猫は自問自答を只管に繰り返す。
繰り返せど、繰り返せど…
答えは出ない。
どうして目の前で疲れ果てて弱ってる者の為に何もしてあげれないのだろうか。
心は在るのに気持ちは在るのに何故、其れを現す術を持たないのだろうか…。
もどかしい。
悔しい。
自分の表現力の無さに苛立ちを覚える。
「愛情って何?優しさって何?
どうやってその心を分かり易く現せば良いの?
どうやったら現せるの?」
誰か…教えてよ…
そう、小さく心の中で呟いて三毛猫は深い深い溜息を漏らす。
呟いた言葉は三毛猫の心に傷を残す。
深い深い傷を残す。
自分はこの心優しい狐の為に何が出来るのだろう?
この狐の為に何か出来てるのだろうか?
自分が癒されてる満たされてる様に何かしら役に立ってるのだろうか?
出口が見えないまま、答えを求め彷徨う。
なんて自分は小さくちっぽけな存在なのだろう。
決して大きくは無いけれど、それでも役に立つ存在で居たかった。
けれど…三毛猫はそんな理想の存在にはなれていないし、それを白狐に問う勇気は無い。
「いつからこんなにも臆病になったかな。」
三毛猫は思い返す。
けれど…分からない。
臆病な素直に問い掛けられなくなった理由が分からない。
もしかして白狐に対してだけなのだろうか?
ふと、気付いた時、三毛猫は妙に納得する。
「そうか…この心地いい関係を壊したくは無いのだ。それくらいに今、傍に居てくれてる事が大きく心に根付いてるんだ。」
そう、自覚した時、三毛猫は納得したのと同時に時にとって白狐がどの様な存在かを認識した。
こんなにも大きな存在なのに…
何もしてあげれない…
何の為に自分は白狐の傍に居るんだろう?
そう、思い悩む。
ねぇ…僕は貴方の心にどの様に存在して居るのですか?
僕はそれを知りたい…。