三毛猫は相変わらず孤独を好んで過ごして居る。
他者を寄せ付けない眼光は今でこそ少し緩んだが、鋭い眼光を一度(ひとたび)放てば怯む輩は怯む。
けれどそんな三毛猫にも最近、少しだけ悩みがあるのだ。
それは孤独が辛いと感じる日が増えてきた事。
それ以外は寝食はちゃんと規則正しいとまではいかなくても大きな不安は無い。
身体の疲労も問題は無い。
一時期に比べたら。
と、云う但書は付くが。
それなりに悪いなりに良好な方であるのは明確である。
弱ってる要素など一見したら何もない三毛猫。
では、何故、こんなにも孤独が辛いと強く感じるのだろうか。
1人、部屋にいる事なんて当たり前。
他者が傍に居る方が落ち着かないと云う始末なのに。
そんな三毛猫が孤独を少し怖れだしている。
自分でも理由は分からない。
けれど怖れている。
心の支え。
三毛猫はふと、その言葉が浮かんだ。
それは偶発的なもの。
考えるに考え込んだ訳ではなく、ふとした瞬間に閃いたのだ。
今迄、三毛猫が他者を心の拠所にするなんて先ず天地がひっくり返っても有り得なかった。
信じる度合いは違えども信用する者は片手に数える程度なら居る。
でもその誰もが三毛猫にとってどんな存在かと云えば孤独と引換にしたい様な存在では無かったのだ。
それ故に三毛猫は他者が心の支えになった事は無いに等しい。
白狐くらいかも知れない。
嘗て恋をした彼のゴールデンレトリバーは心の支えになるのは仕事時のみで私事では有り得なかった。
そう考えれば自分は本気で自分が気付かないで居た理解していなかった或いは知らなかった根本にある自分を垣間見てる。
三毛猫はそう思ったのだ。
心の中から白狐の存在を消す事は三毛猫の心の死を今なら現すのだろう。
それくらいに今、三毛猫は白狐に支えられて居る。
本人に自覚があるかは分からないが。
それでも構わない。と、三毛猫は想う。
傍に居てくれて同じ時間を共有してくれる。
それだけで幸せな筈なのに。
三毛猫は気付いたらどんどん欲を出しつつある自分に嫌気を差しつつも自分を制御する方法を考えている。
振り回したり、束縛したりするのは三毛猫の美学に反するからだ。
けれど偶には盛大に我儘に振舞い、自分だけの白狐にすべく彼の大半を占拠したい。
そんな欲望に度々、駆られながらもそれを三毛猫は理性で押さえ付ける。
大事にする。
そう決めたから。
だからこそ三毛猫は有言実行で在りたい。
縛りたくない。
この気持ちに勝るものは何も無い。
自分本位に動かない様に三毛猫は細心の注意を払うのである。
孤独は怖い。
けれど失うことの方が今は数倍、怖い。
三毛猫はそう感じて居るのである。
欲を抑え御す。
これは今迄、自由奔放に生きてきた三毛猫にはあまりにも難しい事柄やも知れないのである。