「POP FICTION」とは「通俗」。大正時代1920から1930年、出版華やかなりし頃。徳川夢声、谷崎潤一郎、作家や文化人たちが侃々諤々の議論を交わしながら、面白いものを作ろうと奮闘し、100万部突破の上昇雑誌を作くろうとする様を描いた人間ドラマお仕事小説。主人公の「市民公論」編集部の松川は、担当した企画のせいで、筆者が帝大を追われることになり窮地に立たされていた。奔走する松川に、主幹は驚きの決断を下し対立し衝動的に退職する。同じころ、当代きっての人気作家・菊谷は、「書きたいものを書く」ための雑誌を立ち上げようとしていた。1年の浪人の後、菊谷が立ち上げた文芸誌「文學四季」のテコ入れに参加する。関東大震災を経験してそこでも菊谷と対立して退職。大衆雑誌「エース」創刊に誘われる。主人公、菊池寛、芥川龍之介や中央公論、文芸春秋、講談社・キングなどの雑誌は仮名になっているのを想像しながら一癖も二癖もある登場人物たちやり取りを読むのも楽しかった。
2024年10月文藝春秋社刊