強行犯係長安積剛志警部等が活躍するシリーズ。グラビアアイドル・立原彩花の死体が江東マリーナで発見され、近くのプレジャーボートで被害者のものと思われるサンダルが見つかった。船の持ち主は、立原が愛人との噂がある芸能界の実力者、プロダクションサミットの柳井武春だという・・・。
芸能界の闇に、安積班メンバーがそれぞれの持ち味を出して事件の解決に立ち向かう。
お馴染みのメンバーの活躍、ぶれない安積など心理描写を面白い。意外性がないのが難点か。
2019年6月角川春樹事務所刊
MOBAILE INVESTIGATION UNT235。警視庁第二機動捜査隊所属の高丸(34歳)の相棒としてやってきたのはすっかり髪が白くなった、皺の目立つ男「縞長省一」だった。機捜にこんな定年間際のロートルがきて、しかも俺のパートナーになるなんて・・・。しかし、縞長は独特の能力「見当たり捜査」の経験を秘めた刑事だった。次々に起こる事件を、時に痛快に、時に味わい深く解決していく機捜の刑事コンビの活躍を描いた九つの連作短編集の警察小説。
見た目や雰囲気はダメだけど合気道の有段者でもあるところなど実に良くできる、淡々と覆面パトカーで街を流して次々指名手配犯を捕まえていく様子はちょっと出来過ぎか?
2019年3月光文社刊
日米関係の闇に挑む本格的警察インテリジェンス小説。法務官僚の神谷道雄が殺された。警察庁警備局の隼瀬順平は神谷殺害事件の専任捜査を極秘に命じられる。神谷が日米合同委員会に関わっていたこと、コードネームらしい“キンモクセイ”という謎の言葉を残していた事実を探り当てる。しかし警視庁は捜査本部を縮小、公安部も手を引くことが決定される。やがて協力者である後輩の岸本行雄の自殺体が発見される。隼瀨はキャリア仲間の土曜会メンバーの木菟田(外務省),燕谷(厚労省),鷲尾(防衛省),鵠沼(経産省)とで情報交換をし,さらに同僚の水木と極秘に捜査継続。捜査本部の解散は.日米関係の圧力か,と考えているウチに,岸本の自殺は殺人の可能性も出てきて隼瀬自身が岸本殺害の容疑者として逮捕されそうになる。記者の武藤の計らいで野党代議士の力を借りることに。・・・・
「米地位協定ってのは、要するに、在日米軍は日本国内で好き勝手やっていいですよっていう協定だ。こんなもん結んでいるのは世界中で日本だけだ。」「共謀罪を含む改正組織犯罪処罰法が施行されたときに、こんなことを言ったやつがいる。俺たち公安はこれでようやく特高に戻れたってな・・・。」国家の秘密というが、国家って何だ? 国民を守るための器が国家なんじゃないのか?
日本の法律が及ばない米軍基地。基地を通じて自由に出入りするCIA達。普段は見えてこない日米関係の闇が怖い。政府の上に米軍があるかのような状態が戦後ずっと継続している現実に吃驚した。
キンモクセイ・・・「禁止の禁、沈黙の黙、制圧の制・・幻の監視システム。」
「マスコミの役割報道・教育・娯楽・警鐘つまり権力の監視」(P279)
2018年12月朝日新聞出版刊
鬼龍と孝景シリーズ。常識では解決できない事件に、必ず現れる安倍孝景と鬼龍光一の二人。都内の私立高校で、男子生徒の西条文弥が教師の中大路力也を刺す事件が起きた。警視庁少年事件課の富野輝彦は、事件の供述に違和感を覚える。女子生徒の池垣亜紀と中大路が淫らな行為をしているところを目撃した西条は、彼女が襲われていると思ったという。だが、亜紀は、西条とは食い違う奇妙な供述をしていた。中大路が入院している病院に向かった富野は、そこでお祓い師の鬼龍と孝景に再会する。彼らがいるということは、間違いない、この事件は常識では測れないところで起きているはずだ。大災害の序章なのか?
二つの宗教組織の対立で起こった事件を、鬼龍と孝景、そしてトミ氏の末裔である主人公で少年課に属する富野が解決していく。その過程で、著者の伝奇的な知識が豊富に出てくるので、その方面に興味がある人はとても楽しめると思うのだが。・・・歴史的事実がちりばめられているのだが、ちょっと全体的にオカルトチックな感じで書かれているため、記述が全部作者の創作のように感じられて楽しめなかった。
2019年3月角川書店刊
「逆風の街」「禁断」「防波堤」「臥龍」に続く、横浜みなとみらい署シリーズ。神奈川県警みなとみらい署刑事組織対策課暴暴力団対策係係長「ハマの用心棒」こと諸橋のもとを県警本部監察官の笹本が訪ねてきた。県警本部長が諸橋、そして相棒の城島との面会を希望しているという。横浜・山手の廃屋で、中国人の遺体が発見された。被害者は中華街で一財産を築いたが、三年前から消息不明だった。事件の背後に暴力団関与の疑いがあると判断した本部長の要請で、所轄外ながら捜査に加わることになった諸橋と城島だったが・・・。
会話中心の文体は展開の面白さもありサクサクと読める。今回は何かと難癖付けるキャリアの笹本監察官が一緒に行動して、いつものメンバーや登場人物とのコラボがいい。後半の畳みかける展開は楽しめた。
2019年2月徳間書店刊
任侠シリーズ第3弾。日村誠司が代貸を務める阿岐本組は、東京下町で長年ちっぽけな所帯を持っている。堅気に迷惑をかけない正統派ヤクザであったが、地元新住民の間から暴力団追放運動が起こってきた。そんなおり、組長の阿岐本雄蔵が、潰れかけた病院の監事となって再建を引き受けることになった。暗い雰囲気の院内、出入り業者のバックには関西大物組織の影もある。再建先と地元、難題を二つ抱え込んだ阿岐本組。病院の理事もさせられた日村は・・・。
どの登場人物もキャラが際立って展開も痛快。医療現場さえも暴力団のフロント企業の餌食とされている展開にビックリさせられた。耶麻島組との争いがあっさりしすぎてちょっと物足りなりなかったが病院の裏事情も解り、今回もこのシリーズは面白く一気読み出来ました。
2011年10月実業之日本社刊