2006年から続くシリーズ第12弾。(スピンオフでは第三弾)信念のキャリア竜崎の突然の異動。その前後周囲にはこんな波瀾があった人気シリーズの名脇役たちが活躍する9つのスピンオフ短編。
米軍から特別捜査官を迎えた件で、警察庁に呼び出された竜崎伸也。審議官からの追及に、竜崎が取った行動とは・・・「(表題作)審議官」。家族や大森署、神奈川県警の面々など名脇役も活躍する、大人気シリーズのスピンオフ。「斎藤治警務課長は、全身から力が抜けてしまったように感じていた」たった今しがた、大森署を去っていった竜崎。新任の署長が一日遅れの時に事件発生・・・「空席」。「内助」「荷物」「選択」は、それぞれ竜崎の妻・冴子、息子・邦彦、娘・美紀の視点で描かれていて家族小説のようだ。竜崎の後任の大森署署長が新たに登場、美人で魅力的なキャリアの女性署長藍本百合子・・・「非違」神奈川県警に異動してからのエピソードも描かれる・・・「専門官」。「参事官」、「信号」は、「たてまえと本音」の相違、考え方が書かれた。一般の常識ではたてまえというのは表向きの意見で、本当のことは別にあるという意味に捉えられているかもしれないが、竜崎はたてまえこそが、真実だと断ずるのだ。なぜなら、たてまえを重んじることこそが、警察官僚の生きるべき道だと信じているからだ。鮮やかさ、爽やかさ、清々しさは何とも言えず、とにかく胸のすくような快感が、読んでいて全身に湧いてくる竜崎マジックが全編にあり満足感一杯の読後感でした。
2023年1月新潮社刊