コロナ下の東京に、オリンピックの幕が上がった。香港、上海、ソウル、東京・・・分断された世界に、希望は生き残れるか?小説だから見えてくる、光と翳のオリンピック。変貌をとげるアジアの街で、人生の岐路に揺れる若者たちの4つの短編集。香港。ビクトリアピーク。蝋人形。「この香港のどこかを、もう一人の自分が歩き回っているような気がして仕方ないんだ」ボート選手枠で入社して10年、タイムが低迷する偉良はコーチから思わぬ宣告を受ける。・・・「香港林檎」。
上海。郊外の団地。再開発。高層ビル。「私たち、上海に住でるのよ。欲しいものは欲しいって、今、世界で一番言える街に」ケガで体操選手を諦め、臨時体育教師になった阿青。結婚目前の恋人には初めてのチャンスが訪れていた。・・・「上海蜜柑」。
上海。郊外の団地。再開発。高層ビル。「私たち、上海に住でるのよ。欲しいものは欲しいって、今、世界で一番言える街に」ケガで体操選手を諦め、臨時体育教師になった阿青。結婚目前の恋人には初めてのチャンスが訪れていた。・・・「上海蜜柑」。
ソウル。近くて遠いアメリカ。スケート場の掃除をバイトにする主人公。バランスを崩すフィギュア・スケーターの少女。「がんばるって、約束したじゃないか」スケート場で働くクァンドンは、三回転ジャンプに挑む赤い練習着の少女に心惹かれるが・・・「ストロベリーソウル」。
東京オリンピック2020。無観客の競技場。「誰も悪くない。なのに、誰も幸せじゃないのはなぜだ?」東京五輪が始まった。開会式を前に失踪した部下を探す白瀬は、国立競技場の前に立つ・・・「東京花火」(改題前「オリンピックに触れる」)短編だからこその無駄のない筆運び。コロナ禍のオリンピックだからこその物語。登場人物の心情描写が細かくていい。
2021年9月KADOKAWA刊
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