この詩は、童話作家の新美南吉さんの詩です。
新美南吉(にいみなんきち)は、1913-1943 29歳没
愛知県半田市出身
代用教員をやっていたが29歳の若さで結核に罹り没。
「北の(宮沢)賢治、南の南吉」と云われた童話作家
宮沢賢治 岩手県花巻市出身
でんでんむしのかなしみ
いっぴきのでんでんむしがありました。
ある ひ でんでんむしは たいへんな ことに きが つきました。
「わたしは いままで うっかりして いたけれど、 わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるでは ないか」
この かなしみは どう したら よいでしょう。
でんでんむしは おともだちの でんでんむしの ところに やって いきました。
「わたしは もう いきて いられません」
と その でんでんむしは おともだちに いいました。
「なんですか」
と おともだちの でんでんむしは ききました。
「わたしは なんと いう ふしあわせな ものでしょう。 わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるのです」
と はじめの でんでんむしが はなしました。
すると おともだちの でんでんむしは いいました。
「あなたばかりでは ありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいで す」
それじゃ しかたないと おもって、はじめの でんでんむしは、べつのおともだち の ところへいきました。
すると その おともだちも いいました。
「あなたばかりじゃ ありません。 わたしの せなかにも かなしみは いっぱい です」
そこで はじめの でんでんむしは また べつの おともだちの ところへ いき ました。
こうして、 おともだちを じゅんじゅんに たずねていきましたが、 どの とも だちも おなじことを いうので ありました。
とうとう はじめの でんでんむしは きが つきました。
「かなしみは だれでも もって いるのだ。わたしばかりでは ないのだ。 わた しは わたしのかなしみを こらえて いかなきゃ ならない」
そして この でんでんむしは もう、 なげくのを やめたので あります。
おしまい。 続く。
新美南吉(にいみなんきち)は、1913-1943 29歳没
愛知県半田市出身
代用教員をやっていたが29歳の若さで結核に罹り没。
「北の(宮沢)賢治、南の南吉」と云われた童話作家
宮沢賢治 岩手県花巻市出身
でんでんむしのかなしみ
いっぴきのでんでんむしがありました。
ある ひ でんでんむしは たいへんな ことに きが つきました。
「わたしは いままで うっかりして いたけれど、 わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるでは ないか」
この かなしみは どう したら よいでしょう。
でんでんむしは おともだちの でんでんむしの ところに やって いきました。
「わたしは もう いきて いられません」
と その でんでんむしは おともだちに いいました。
「なんですか」
と おともだちの でんでんむしは ききました。
「わたしは なんと いう ふしあわせな ものでしょう。 わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるのです」
と はじめの でんでんむしが はなしました。
すると おともだちの でんでんむしは いいました。
「あなたばかりでは ありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいで す」
それじゃ しかたないと おもって、はじめの でんでんむしは、べつのおともだち の ところへいきました。
すると その おともだちも いいました。
「あなたばかりじゃ ありません。 わたしの せなかにも かなしみは いっぱい です」
そこで はじめの でんでんむしは また べつの おともだちの ところへ いき ました。
こうして、 おともだちを じゅんじゅんに たずねていきましたが、 どの とも だちも おなじことを いうので ありました。
とうとう はじめの でんでんむしは きが つきました。
「かなしみは だれでも もって いるのだ。わたしばかりでは ないのだ。 わた しは わたしのかなしみを こらえて いかなきゃ ならない」
そして この でんでんむしは もう、 なげくのを やめたので あります。
おしまい。 続く。