深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

数学の音楽が聞こえる

2014-02-04 14:19:32 | 趣味人的レビュー

アニメ『Robotics;Notes』のED2「トポロジー」のライブ版とともに。ただ、この曲、凄くいいんだけど、なぜタイトルが「トポロジー(位相幾何学)」なのかが謎だ。

 

『素数の音楽』は、そのタイトルが示すように素数について書かれた本だ。1と自分自身以外に約数を持たない数=素数を実際に書いてみると、2,3,5,7,11,13,17,…と続くが、その出現パターンはランダムで、次の素数がどこに現れるかをあらかじめ知ることはできない。

けれども、そんな気まぐれな素数にすら何らかの秩序があるはずだと考える者たちがいる。それが数学者だ。数学とは、この世界の中に隠された秩序を発見するための学問であり、数学者とはその先兵なのだから。

まずエウクレイデス(ユークリッド)が、素数は無限に存在することを証明した。エラトステネスは素数を見つけ出すための方法、エラトステネスのふるいを考え出した。オイラーはζ(ゼータ)関数と素数の関連性を見出した。ガウスは次の素数が現れる位置を割り出す代わりに、任意のnに対して1~nの中にどのくらいの素数が含まれるかを近似的に求めることを可能にした。そして、そのガウスに師事した1人、ベルンハルト・リーマンが登場する。


リーマンはガウスのものより更に誤差の少ない、1~nの中に含まれる素数の個数を近似的に求める関数を見つけ出すのだが、それだけでなく

ζ(x)=1/1^x+1/2^x+1/3^x+…+1/n^x+…
で表されるゼータ関数のグラフを実数軸と虚数軸からなる2次元の座標系にプロットした時、ゼロとなる部分(ゼロ点)が一直線上(もっと詳しく言うと、実座標が1/2である直線上)に並ぶのではないか?

と予想した。仮にその予想が正しいとすると、1~nの中に含まれる素数の個数を近似値ではなく正確に求めることができるのだ。

これが今なお未解決の数学の問題のうちの最大のものの1つ「リーマン予想」である。


ちなみに『素数の音楽』というタイトルは、バイオリンの弦の振動によって発する音が基音とあらゆる倍音の全てを足し合わせた無限級数になることに注目した数学者が、上記のゼータ関数でx=1の場合、つまり
ζ(1)=1/1+1/2+1/3+…+1/n+…
を無限調和級数と呼ぶなど、数学と音楽には相同性があることからつけられたものだが、それだけでなく数学そのものの「風景」を音楽に例えたものでもある。


私は理学部の数学科では位相幾何学(トポロジー)を専攻したが、どういうわけかこれまでずっと、数論というのはとにかく鬼のように難しいので怖くてとても近づけない、というふうに思っていた。だから、これまで数論については一切ノータッチで来た(大学でも数論についての授業はなかったし)こともあって、数論では一体何が研究されているのかも、ほとんど何も知らなかった。この『素数の音楽』を読むまでは。


そして『素数の音楽』は、数学がどのようにして作り出されていくのか、その過程を美しく描き出している。

素数が無限個あることはわかっているから、ゼロ点も無限にある。リーマン予想を解決するには、その無限にあるゼロ点が一直線上に並ぶことを証明するか、その直線上にないゼロ点を見つけ出さなければならない。

確率論というアイディアの投入、コンピュータによる解析(現在までに100億個のゼロ点が全てリーマンの予想通り一直線上に並ぶことが確認されている、という)、素数を使った暗号化技術(RSA暗号)の開発(とインターネットによる爆発的な普及)、ゼロ点の間隔と物質のエネルギー準位の間隔との類似性からの量子物理学との共闘、カオス理論という切り口からの検討、幾何学からの挑戦など、多種多様なノウハウとツールを持った人たちがまるで呼び寄せられるように集まり、競い合い、そのダイナミズムの中で、また新たな数学の形が生まれていく。

だが、それでもなおリーマン予想が解決する見通しは立っていない。

現在、リーマン予想を解決した者には100万ドルの賞金が出ることになっている。しかし多分ほとんど誰も、そんな賞金を目当てにこの問題に挑んではいない。なぜなら、100万ドル程度ではリーマン予想を解くのに費やす労力に全く見合わないからだ。100万ドルが100億ドルだったとしても、額として十分と言えるかどうか…。

では、なぜそんなものに人生の大半を費やす人がいるのか、といえば、地球上の全ての富をもっても贖うことのできない

感情が揺さぶられて、受け身でいることも、無関心でいることもできない

啓示の瞬間を誰よりも早く体験するためだ。そして、そんな偉大なるバカヤロウたちがいる限り、数学という音楽は鳴り続ける。


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