人の心理状態や性格的傾向といった、本来見えないはずの「心の姿」を計測し数値化することをテクノロジーが可能にした近未来。そこでは数値化された「心の姿」はPSYCHO-PASS(サイコパス)と呼ばれ、機械的に算出されたPSYCHO-PASSの中の「犯罪係数」が基準値を超えた者は、社会における危険因子と見なされ、強制排除される──それがアニメ『PSYCHO-PASS』で描かれる世界だ。
『PSYCHO-PASS』はただの深夜アニメだが、そこで描かれる世界は全くの絵空事だろうか? そんなことを思わずにはいられなくなるのが、ジョン・ロンソンのルポルタージュ『サイコパスを探せ!』である。
というわけで以下、『PSYCHO-PASS』のOP「Abnormalize」(まだ正式リリースされていないのでショート・バージョン)とともに。
『サイコパスを探せ!』の「サイコパス」とは、もちろんPSYCHO-PASSではなくpsychopathのこと。
サイコパス[psychopath]
精神病質。正常から逸脱した性格。その人格の異常性に自らが悩むか、またはその異常性のために社会が悩む異常性格。一般に、非常に独善的で、「他人への同情」や「良心の呵責」を持たない捕食者である。魅力や巧妙な手口、威嚇、セックス、そして暴力を用いて他人を支配し、自らの利己的な要求を満たす。罪の意識も後悔もなく社会規範を破り、期待を裏切る。(中略)彼らの脳波パターンは通常人とは異なり、生来的に深い「感情」を経験できない。その一方、彼らはしばしば容姿端麗で、口がうまく、人当たりがよく、チャーミングで人を惹きつける。刑務所人口の25%がサイコパスで、一般社会においては人口の1%を占めるといわれているが、CEOや政治家など社会の上層部に限ると、サイコパスの人口はその3~4倍になるという。治療法はいまだ確立されていない。
上では「捕食者」という表現が使われているが、まさにサイコパスは人間社会における「名前のない怪物」と言うことができる。
「なまえのないかいぶつ」といえば浦沢直樹のマンガ『MONSTER』だが、そこに登場する、高い知能と美しい容姿を持ち、言葉だけで周囲の人間を殺戮へと駆り立てていくヨハンは、紛れもないサイコパスの典型である。
そして『サイコパスを探せ!』には、
ヘアは、サイコパスを治すことは不可能であり、治癒を目指す代わりに、彼が生涯をかけて改良を重ねてきたPCL-Rチェックリストを使用してサイコパスを探し出すことに全力を傾けるべきであるという主張しており、世界中の司法機関や仮釈放委員会がその主張を受け入れている。
という、サイコパス研究の権威、ロバート(ボブ)・ヘアが作成した「サイコパス・チェックリスト(PCL-R)」が掲載されている。それが次の20項目だ。
項目1:口達者/うわべの魅力
項目2:自己価値に対する誇大な感覚
項目3:刺激を必要とする/退屈しやすい
項目4:病的な嘘つき
項目5:狡猾/人を操る
項目6:良心の呵責あるいは罪悪感の欠如
項目7:浅薄な感情
項目8:冷淡/共感性の欠如
項目9:寄生的な生き方
項目10:行動を十分に抑制できない
項目11:相手を選ばない乱れた性行動
項目12:幼少期からの行動上の問題
項目13:現実的な長期目標を持てない
項目14:衝動的
項目15:無責任
項目16:自分の行動に対して責任を取ろうとしない
項目17:何度も結婚するが長続きしない
項目18:少年犯罪
項目19:仮釈放の取り消し
項目20:多様な犯罪歴
これら各項目に対して0点、1点、2点で採点し、合計が30点を超えるとサイコパスと見なされる(え、私? 私は10点なのでサイコパスではないよ。自己採点だけど)。
そしてジョン・ロンソンはこのチェックリストを手に、サイコパスを探す旅を始めるのだが、そこで彼が知る現実とは…?。
──実はこの先も書いているのだが、どんどん長くなっていくので、一旦ここで切ることにした。続きは後日。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます