治療では体の解剖・生理を理解していることが基本となる。もちろん「理解している」といっても、どのレベルで理解しているかが重要で、CBSのセミナーは毎回前半が機能的な解剖・生理の講義になっているが、あれを聴いていると自分が「理解している」などというレベルには到底達していないことを思い知らされる(その割には、相変わらず勉強してないが)。
ただ解剖・生理はあくまで、外側から客観的に見た体のこと。以前ある患者と出会って、そうした外側からの視点で体を評価するだけでは決して見えないものがあることを思い知らされた。それ以降、患者自身に内側から自分の体を見てもらうフォーカシングを取り入れて、臨床ではかなりの時間をかけて患者にそれを行ってもらっている。
フォーカシングはフランクリン・シルズの"Craniosacral Biodynamics VOL.1"(日本語版は、不肖私の翻訳による『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.1』)の記述を参考に、主にクラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)と組み合わせて行っているが、正直なことを言えば、自分がやっているものが本当にユージン・ジェンドリンのフォーカシングなのかについては自信がない。
ジェンドリンのフォーカシングは、体に意識を向けたときに感じる、うまく言葉にならない微妙な感覚(フェルト・センス)をとらえ、それを言語化することで、その人の深いレベルの気づきのようなものを引き出す、というのが私の理解だが、自分のやっていることが、そういう本来のフォーカシングの方向性とズレている気がするからだ。が、別の名前をつけるのも面倒なので、一応フォーカシングということにしてやっている(フォーカシングに詳しい誰かが「お前のやっているのはフォーカシングなんかじゃない」と言ってきたら、自分の施術には何か新しい名前をつけて、私はその「創始者」を名乗ろうかとも思っている)。
で、最近出合ったちょっと面白いケースとしては──
まず、いつも頭に圧迫感のようなものを感じると訴えて来られている人。いろいろ調べて治療してきて、今は小学生の時に起こった左上腕の骨折が(トラウマというのとは違うが)体に何らかの形で未解決のまま残っているようだと考えて、そこを中心にフォーカシングを行ってもらっている。フォーカシングする部位は毎回キネシオロジーの筋肉反応テスト(筋反射テスト)を使って調べていくが、これまで
左上腕の骨折の手術痕 → 左前腕 → 左手首付近 → 左中指付近 → 左側胸部
と移ってきている。
その中の、左側胸部にフォーカシングした時のことだが、その人は最初、左下歯6,7番付近の痛みと左乳様突起付近のしびれるような痛みを感じた。その痛みが徐々に右側に移っていき、右に抜けきった後、今度は後頭部の痛みと下歯の右から左に移っていく痛みが現れた。
まるで、左顔面部付近を強く打った時の様子を超スローで再現しているようだと感じた私は、途中でその人に「左上腕を骨折した時、左顔面部の特に顎の付近もどこかにぶつけなかったか」と質問したが、「覚えていない」という答。なので真相は不明だが、骨折と同時だったのかどうかは別として、左顔面部に過去に強い衝撃を受け、それが未解決のまま体に残っていたのではないか、と私は思っている。
もう1つ、別の人の例。この人は定期的に来てくれているのだが、その時の主訴の1つが左手掌のしびれだった。フォーカシングはキネシオロジー的に調べて、右季肋部上部(ツボで言うと右不容の付近)に行ってもらった。そこで感じたものは、自分の未解決の感情がそこに集められ、(一部はまだ「消化」の途中段階らしく、まだ多少原形を留めているものもあるが)ドロドロになっている様子だった。そしてドロドロになったものは、ずっと奥へ奥へと送られ、その先は外へと続いているようだ、と。そして、その人にそれを感じてもらっていると、左手掌のしびれは消えていた。
以前、別の患者を治療する中で、脳が未解決の感情を各内臓器に振り分けて処理させていることを知った。今回の治療でわかったのは、人の体は消化器が食べ物を処理するのと似た仕方で未解決の感情を処理しているということ。その人の訴えにあった手掌のしびれは、その感情処理に生じた何らかの滞りが原因だったのかもしれない。
──フォーカシングは、解剖・生理に基づく外側からの客観的な視点とは真逆の、内側からの主観的な視点である。それは言ってしまえば「本人がそう感じる」というだけものであって、極めて曖昧で外部的に検証できない。その点で、それを盲目的に信奉し頼り切るというのは危険なことでもあるのだが、そこからしか見えないものがあるのも、また事実なのだ。
-----8<--チョキチョキ--8<-----
2/11(水・建国記念日)と3/20(金・春分の日)に1Day セミナーを行います。詳しくは蒼穹堂治療室のHPをご覧下さい。
ただ解剖・生理はあくまで、外側から客観的に見た体のこと。以前ある患者と出会って、そうした外側からの視点で体を評価するだけでは決して見えないものがあることを思い知らされた。それ以降、患者自身に内側から自分の体を見てもらうフォーカシングを取り入れて、臨床ではかなりの時間をかけて患者にそれを行ってもらっている。
フォーカシングはフランクリン・シルズの"Craniosacral Biodynamics VOL.1"(日本語版は、不肖私の翻訳による『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.1』)の記述を参考に、主にクラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)と組み合わせて行っているが、正直なことを言えば、自分がやっているものが本当にユージン・ジェンドリンのフォーカシングなのかについては自信がない。
ジェンドリンのフォーカシングは、体に意識を向けたときに感じる、うまく言葉にならない微妙な感覚(フェルト・センス)をとらえ、それを言語化することで、その人の深いレベルの気づきのようなものを引き出す、というのが私の理解だが、自分のやっていることが、そういう本来のフォーカシングの方向性とズレている気がするからだ。が、別の名前をつけるのも面倒なので、一応フォーカシングということにしてやっている(フォーカシングに詳しい誰かが「お前のやっているのはフォーカシングなんかじゃない」と言ってきたら、自分の施術には何か新しい名前をつけて、私はその「創始者」を名乗ろうかとも思っている)。
で、最近出合ったちょっと面白いケースとしては──
まず、いつも頭に圧迫感のようなものを感じると訴えて来られている人。いろいろ調べて治療してきて、今は小学生の時に起こった左上腕の骨折が(トラウマというのとは違うが)体に何らかの形で未解決のまま残っているようだと考えて、そこを中心にフォーカシングを行ってもらっている。フォーカシングする部位は毎回キネシオロジーの筋肉反応テスト(筋反射テスト)を使って調べていくが、これまで
左上腕の骨折の手術痕 → 左前腕 → 左手首付近 → 左中指付近 → 左側胸部
と移ってきている。
その中の、左側胸部にフォーカシングした時のことだが、その人は最初、左下歯6,7番付近の痛みと左乳様突起付近のしびれるような痛みを感じた。その痛みが徐々に右側に移っていき、右に抜けきった後、今度は後頭部の痛みと下歯の右から左に移っていく痛みが現れた。
まるで、左顔面部付近を強く打った時の様子を超スローで再現しているようだと感じた私は、途中でその人に「左上腕を骨折した時、左顔面部の特に顎の付近もどこかにぶつけなかったか」と質問したが、「覚えていない」という答。なので真相は不明だが、骨折と同時だったのかどうかは別として、左顔面部に過去に強い衝撃を受け、それが未解決のまま体に残っていたのではないか、と私は思っている。
もう1つ、別の人の例。この人は定期的に来てくれているのだが、その時の主訴の1つが左手掌のしびれだった。フォーカシングはキネシオロジー的に調べて、右季肋部上部(ツボで言うと右不容の付近)に行ってもらった。そこで感じたものは、自分の未解決の感情がそこに集められ、(一部はまだ「消化」の途中段階らしく、まだ多少原形を留めているものもあるが)ドロドロになっている様子だった。そしてドロドロになったものは、ずっと奥へ奥へと送られ、その先は外へと続いているようだ、と。そして、その人にそれを感じてもらっていると、左手掌のしびれは消えていた。
以前、別の患者を治療する中で、脳が未解決の感情を各内臓器に振り分けて処理させていることを知った。今回の治療でわかったのは、人の体は消化器が食べ物を処理するのと似た仕方で未解決の感情を処理しているということ。その人の訴えにあった手掌のしびれは、その感情処理に生じた何らかの滞りが原因だったのかもしれない。
──フォーカシングは、解剖・生理に基づく外側からの客観的な視点とは真逆の、内側からの主観的な視点である。それは言ってしまえば「本人がそう感じる」というだけものであって、極めて曖昧で外部的に検証できない。その点で、それを盲目的に信奉し頼り切るというのは危険なことでもあるのだが、そこからしか見えないものがあるのも、また事実なのだ。
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2/11(水・建国記念日)と3/20(金・春分の日)に1Day セミナーを行います。詳しくは蒼穹堂治療室のHPをご覧下さい。
面白いですね!
感情というよく判らないものを「ドロドロしたもの」として感じることができるというのもスゴイですが!
東洋医学の中にも臓腑と感情の対応関係はありますし、(本文にも書いた通り)内臓が感情処理も行っていることは過去の臨床で知っていましたが、今回のようなフェルト・センスを報告された方は初めてでした。
私自身、目が点です。
出席できる人が羨ましい!!!
ウルさんも、さぞかし行きたい事だと思います。
>ワンデーセミナー出席できる人が羨ましい!!!
そう言っていただけるとは、うれしいです。
またそのうちやりますので、機会がありましたらご出席下さい。