深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

蟲師(むしし)、そして蟲師的なるもの

2007-04-23 10:46:00 | 一治療家の視点

観ている間は、あまり面白いとか傑作だとか思わないのに、時間が経っても──いや、時間が経つほどに、妙に心の中に残っていることを感じる映画がある。最近観たものでは、『蟲師』がそれだ。前半はともかく眠くて、半分うたた寝状態で観ていたほどだったが、不思議なことに、あれから3週間以上経っても、その余韻が体から抜けない。機会があったら、また観に行きたいと思うほどだ。

漆原友紀の同名のマンガを大友克洋が実写映画化した『蟲師』は、約100年前の日本を舞台に、「蟲」──精霊でも幽霊でも物の怪でもない、太古から存在する“何か”──によって引き起こされる現象──その多くは、ある不可解な“病(やまい)”として現れる──を解き明かし、その“病”を癒す、「蟲師」と呼ばれる者たちの活躍を描く。

活躍と言っても、彼ら蟲師は別に蟲と戦ったり、蟲を滅ぼそうとしているわけではない。蟲は、人がこの世界に誕生するずっと以前から存在するものであり、そんなことは無意味だし不可能であることを、彼らは知っている。彼らがやることは、蟲と人との関係を、あるべき形にただ帰すことだけ。そうすることで“病”は自然に癒えていく。蟲師とは、そんな人と蟲とを取り持つ存在であり、治療家でもあるのだ。

そんな蟲師の“ありよう”が、私にはとても心地よかった(途中で寝ちまったのは、そのせい?)。例えば、それは『エクソシスト』と比較してみるとよくわかる。『蟲師』では蟲師ギンコが、頭に角が生え、絶えず聞こえる異様な音に悩まされる少女の治療を依頼される下りがある。ギンコはそれが蟲の仕業であることを見抜き、それを治すのだが、これがもし『エクソシスト』なら、その少女に憑いた蟲は即ち悪魔であり、それは神の名の下に滅ぼし尽くさなければならないものとして、エクソシスト(蟲師)対悪魔(蟲)の、文字通り命をかけた──しかし不毛な──戦いになるところだ。

この『蟲師』と『エクソシスト』の差は、アニミズムと一神教の世界観の差と見ることができる。唯一絶対神を戴き、その存在を基準に世界を絶対善と絶対悪(もっと正確には、絶対善とそれ以外のもの)にくっきりと二分する一神教的世界観の下では、蟲も悪魔も滅ぼさねばならないものかもしれない。それに対して、日本なら八百万(やおよろず)の神々を戴くアニミズム的な世界観では 善も悪もただ相対的な存在でしかない。こうしたアニミズムの世界観に親和性を感じる私には、唯一絶対神という存在や絶対善といったものの方が、蟲や悪魔より遙かに胡散臭く、不自然で、危険に見える。

そしてそれは、私だけではないのかもしれない。今、世界的にさまざまな形で、キリスト教に代表される一神教、あるいは“一神教的なるもの”への懐疑や否定が広がりつつあるのを感じるからだ。ダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』の波紋や、『ユダによる福音書』の発見といった、一見、無関係にも見えるものが、私には一神教の時代の終焉を暗示するもののように感じられてならない。

ところで『蟲師』の舞台である100年前の日本と言えば、1967年の大政奉還そして王政復古の大号令によって江戸幕府が消滅し、明治の世となって約40年が経った頃。凄まじい近代化の波に洗われながら、日清戦争(1894~95年)、日露戦争(1904~1905年)を経て、世界の一等国目指して驀進していた時代である。(もちろん蟲師というのは架空の存在だが)おそらく彼らは表立って活躍した最後の蟲師であったろう。だから、その美しい日本の原風景とともに彼らもまた歴史の闇の中に消えていくのかと思うと、観ていてたまらなく切なかった。

だが同時に、“蟲師的なるもの”の息吹は自然療法、民間療法の中にスピリチュアリティという形の地下水脈として滔々と受け継がれていることを強烈に感じる。例えば、ウチが行っているキネシオロジーもクラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)も、西洋医学的な解剖学・生理学といった生体機械論的な衣こそ纏(まと)っているものの、その奥には波動医学、エネルギー・ワークといったもう一つの貌(かお)を持っている。蟲師は消えた、しかし蟲師的なるものは消えることはない…ということなのだ。


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2 コメント

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蟲師 (からだworkかこ)
2015-04-05 13:37:00
漫画、読みました!大ファンです。
自分で、ひそかに「私は蟲師みたいだ…」とほくそ笑んでいました。
でも映画みるときっとガッカリするとおもったので見なかった。
高澤さんは漫画見ましたか?
よんでなかったら是非見てくださいね。私も映画見てみます。
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それでは再度 (sokyudo)
2015-04-06 09:57:29
>かこさん

コメントありがとうございます。

マンガの実写化は、それぞれに原作のイメージがあるので、『蟲師』に限らず、受け入れられないという人は多いでしょうね。私は逆に原作のイメージがなかったので、独立した作品として見ることができました。

『蟲師』のマンガは1話くらい読んだ記憶がありますが、あまりよく覚えていません。アニメも一度見たことがありますが、何だかピンとこなくて、それ以降は見ていません(一般的な評価はかなり高いみたいですが)。

今はいろいろ余裕がないのでアレですが、一段落したらマンガかアニメに再度トライしてみましょう。
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