YouTubeでたまにクラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)関係の動画を見たりするが、よくあるのは「こうすれば第1次呼吸が感じ取れるようになる」という内容だ。まるでクラニオというメソッドは施術者が相手の第1次呼吸を感じ取れるかどうかで決まる、といわんばかりである。
けれども(バイオダイナミックなクラニオの考え方に則れば)、第1次呼吸運動とは単一のものではなく複数の階層がある。その階層とは一般的には、CRI(クラニアル・リズミック・インパルス。クラニオセイクラル・リズム=頭蓋仙骨リズムともいう)、ミッド・タイド、ロング・タイドの3つであり、それぞれの階層にアクセスするにはそれぞれのやり方が必要になる(が、YouTube動画のほとんどは、その中のCRIしか考えていないようだ)。
その「それぞれのやり方」はクラニオの流派(?)によっても違い、それについては「バイオダイナミックなクラニオと施術者の意識のあり方 3」に書いたが、フランクリン・シルズが『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.1』(以下CB)で述べているところに従うなら、それは施術者が意識のあり方を変えることで、ということになる。その中で今回は、特に(シルズ的な)ロング・タイドへのアクセス方法について述べる。
ちなみに、その辺りCBにはどう書かれているかというと、「知覚場をシフトする」練習には──
6.さあ,知覚場をロング・タイドにシフトしよう.そのために,再び意思をシフトして知覚場を広げる.上では手を体液の中に浸すイメージ/感覚を持った.今度は手をポーテンシーの中に浸すイメージ/感覚を持てるだろうか.患者がその中心にあって,あなたがその中に手を浸しているような,ポーテンシーの場をイメージしよう.そこは,かすかではあるが触診可能な生体電気場の中に存在するような場である.7.この感覚を持って,ゆっくりと知覚場を地平線に向けて広げていこう.注意の場の中心に患者を包み込みながら,地平線に向かって広げるのだ.安全に守られていると感じる範囲を超えて認識を広げてはならない.ただ心がより大きな全体感覚を持てるようにするのだ.心を静めて地平線に向かう意思が,返ってくる感覚情報とバランスが取れているか見てみよう.全体のバランスの中で,心が文字通り命の息吹によって呼吸しているかのように思えるかもしれない.
──となっている。私はこの「知覚場を地平線に向けて広げていく」というのがなかなか上手くできなくて、どうすればいいか考えてきた。そして、そこで思いついた1つの方法をYouTubeに動画としてアップしている。
これはこれで使える方法ではあるが、最近もっといい方法を思いついた。それを以下に記そう。
トポロジーでは、n次元の実座標空間に無限遠点{∞}を加えたものはn次元球面と位相同型(あるいは同相ともいう)になることが知られている(具体的な両者の対応関係は添付した写真を参考に)。
つまり知覚場として球面を設定すれば、「知覚場を地平線に向けて広げていく」ことをしなくても、既に知覚場は地平線(どころか無限の範囲)まで広がっているので、そこでロング・タイドにアクセスすればいいのだ。何と簡単な!(とはいえ、それだけでロング・タイドにアクセスできるわけではないので、そこんとこヨロシク。)
そのことが理解できたなら、この記事の目的は果たされたと言えるだろう。
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