深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

臨床の現場から 12

2018-12-11 20:33:44 | 症例から考える

これは月イチくらいに来てくれているHさんのケース。

その日、Hさんから言われたのは「前々週にカゼを引いた。一番ヒドイ状態は脱したが、まだ気管支炎がある。体が右に傾いているように感じる。また座っていると、お尻の一方だけが痛くなる」というものだった。

いつものように臥位(がい=寝た状態)で体を調べる。まず全体的に気の流れが滑らかではあるが遅い。そして本人が言うように気管から気管分岐部にかけて「弱さ」がある。ということで、それらを処理。

続いて、バランスパッドという柔らかいボードの上に立ってもらい、重心の崩れなどを調べる。普通に床に立ってもらって調べることもあるが、バランスパッドの上だと不安定な状態になるので、立位になると体のどこに不自然な力がかかるかが、より分かりやすいのだ。
このテストで左の母趾とASIS(上前腸骨曲)、そして右肩が不自然な状態になっていることが分かり、それは左の後脛骨筋、右の長・短腓骨筋の弱化を取ることで解決した。

そこでふと、そういえばバランスパッドで立位の状態を調べることはしていたが、坐位を調べるのに使ったことはなかったな、と思い、Hさんにバランスパッドの上に座ってもらうことにした。すると左の側頚部と右の肩甲下部が不自然な状態になることが分かった。
だが、それより驚いたのは、坐位になった時に内臓系に何らかの変化が出ていないかどうかを調べた結果だ。相手の体を解剖書にイメージ投影して、キネシオロジーの筋反射テストを使って内臓系の状態を調べるのだが、そこで出てきたのは気管の右半分から右気管支までの「弱さ」だった。

気管は分岐部を経て左右の気管支に分かれるので、右の気管支にだけ「弱さ」が出るのは分かる。けれども気管の方は1本の管であり、気管に「弱さ」が出ているケースは普通にあるが、気管の右半分だけ「弱さ」が出ているというのは、このHさんが初めてだった。

自分の筋反射テストに何か問題が出ているのかもしれない、ということも考えた。そこで使うインジケータ筋を変えたり、臥位、立位の状態でも調べ(そこでは気管にも気管支にも問題は見つからず)、再び坐位になってもらって調べるということもしてみたが、やはり坐位の時だけ気管の右半分から右気管支まで「弱さ」が現れる、という結果だった。

それならそれで、あとはそれを取ればいいだけだ。本来なら坐位の時だけそのような「弱さ」が現れる理由を更に探るべきだが、時間もなかったのでちょっと安直に、「弱さ」があるのが気管だから肺経ラインのツボの反応を調べた。しかし左右の肺経ラインには反応を見つけることができず、今度は脾経と大腸経ラインの反応を調べると(注)、大腸経のツボ、右の陽𧮾(ようけい)にだけ反応が出ていたので、そこにお灸を施した。

それによって、坐位での気管の右半分から右気管支までの「弱さ」がとれたのだが、そこで突然Hさんが「実は座った時、右の脇腹に張ったような感じがしていたのだが、お灸を受けてたらなくなった」と。ちなみに「張り感がある、というのは、聞かれなかったので言ってなかった」とのこと。

そのHさんの言う、座った時にあった右脇腹の張り感が、気管の右半分から右気管支までの「弱さ」と関連していたのかどうかは分からないが、まぁ結果オーライということで。

(注)手の太陰肺経と足の太陰脾経は、同じ「太陰」を冠するので同名経の関係にあり、肺と大腸は五行の金に属する臓と腑なので表裏関係(当然その経絡も表裏関係)にある。経絡と臓腑の関係は、肺が病んでいると肺経に反応が出る、などという単純なものではなく、反応が同名経や表裏経に出ることも少なくない。

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