長く来てくれていたHさんが、検査で肺に影が見つかったという。医師の見立てでは「癌かもしれない」ということで、当面は病院でそちらの治療に専念することになった。
Hさんは以前からよく肺や気管の症状を訴えることがあったため、呼吸器系の状態はルーチンで調べるようにしていて、検査で肺に影が見つかったという話を聞いた時もキネシオロジーの筋反射テストで肺周りを調べた。しかし、その時はいろいろ試してみたものの筋反射テストでは肺に「弱さ」は検出できなかった(もう少し厳密に言えば、インジーケータ(指標)筋がアンロックする(=弱くなる)部分を見つけられなかった)。
(ただ後日、Hさんの身体をリーマン球面として捉える方法を試すと、筋反射テストで肺の「弱さ」を検出することができた。)
──という話を読んで、キネシオロジストの中には「そりゃあ、お前の筋反射テストの仕方が悪いだけだろ。リーマン球面なんてものを持ち出さなくても、俺がやれば一発で『弱さ』を検出できたさ」と思う人もいるだろう。実際その通りかもしれないから、それに対しては返す言葉がないが、私として今度のことで改めて分かったことがある。それは
筋反射テストで「弱さ」が検出されないことと、「そこには問題がない」ということとは違う
ということだ。
ちょっと例を引こう。なお当然のことながら、ここではインジケータ筋はクリア・サーキットの状態にあり、スイッチングは全て除去されている(つまり筋肉の反射は正しく現れる状態にある)とする。
よく言われるキネシオロジーの基本に、「TLしてインジケータ筋がアンロックするなら、そのTLした部分は問題があったり治療が必要な部分であることを意味する」というのがある。それは正しいが、そのことは「TLしてもインジケータ筋がアンロックしないなら、そのTLした部分には問題がない」ということを意味しない。なぜなら、TLでアンロックしなくても、チャレンジするとアンロックするかもしれないからだ。
これは、キネシオロジーの検査法としてTLしか知らなければ検出できない「弱さ」がある、ということを示している(TLとかチャレンジの意味が分からなければ、下の動画を参照されたし)。
一部にはキネシオロジーを「万能にして絶対のツール」のように持ち上げる向きもあるようだが、この例からもキネシオロジーのツールとしてのポテンシャルは、それを使う人の知識や身体に対する見方──もっと大袈裟に言えば、身体認識や世界認識──に依存することが分かる。「キネシオロジー(の筋反射テスト)は誰がやっても同じ結果になるか?」といった問いがある(YouTubeにもそんなタイトルの動画があった。見てないけど)が、私の答は「No」である。
上で私は「筋反射テストで『弱さ』が検出されないことと、『そこには問題がない』ということとは違う」と書いた。それは別の書き方をすれば
筋反射テストで「弱さ」が検出されないとは、「そこには問題がない」ということではなく、「今の私の身体認識や世界認識の範囲においては、そこに問題は見つけられない」
ということだ。つまり筋反射テストとは多分、客観的に何かを保証するものではなく、それを行う人の主観の範囲を明らかにするものだと思う。
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