手足の痛みを訴える初診の患者が来て、治療を始めた。病院では頚椎症と診断されたという。初診の人に対しては、問診票に書いてもらったことについていろいろ尋ね、整形外科テストを行い、治療はその後に始める。そこまでおよそ30分。そして、AK(アプライド・キネシオロジー)治療のために、スイッチングを除去する一連の処理を行ってから治療に入る。
この時の治療は、クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)と頚部へのフォーカシングで始めた。後頭部をホールドし、そこから感じられる動きを追いながら、患者には頚部(頚椎)に意識を向けて、そこに何が感じられるかに注意してもらうのである。この処理を始めて5分くらいたった時、頚椎に向けているはずの患者の意識が、そこから消えるのがわかった。そして、その少し後、患者が突然言った。
「こんなこと、いつまで続けなきゃならないんですか? 一体何を感じろっていうんですか? だいたい、何の説明もなしに!」
ウチでは毎回、治療がある程度進んだ段階で、そこまでの内容をまとめて説明する体裁を取っているため、その人に対しても説明なくそれを始めていた。しかし、そう言われてしまったため、一旦治療を中断して説明を始めたのだが、(説明が下手だったこともあったのだろう)こちらが意図していることがなかなか理解してもらえず、
「私はここに痛みを取ってもらいに来たんです! こんなことされることがわかってたら、ここには来なかった」
と言われるに至り、私もちょっとキレかかり、こりゃーダメだ、と思った。
「わかりました。治療はここでやめにしましょう。おカネはいりませんから、お帰りください」
と告げて、治療を打ちきった。その人は
「残念です。ここには期待して来たんですけど」
という一言を残して、帰っていった。
これまで、治療中に患者が何かの用で呼び戻され、治療を中断したことはあったが、こういう形で──しかも(治療面接や検査の時間を除いて)始めてから5分くらいしかたっていない段階で──治療を打ち切ったのは初めてで、その後しばらく、この時のことを思い出しながら、いろいろ考えた。
まず確かに、言われたように説明なしに始めたのはマズかった。人一倍説明には気を配っていたつもりだったが、上にも書いたように、ある程度進んだところで、まとめて説明する形を取ってきた。1つひとつの処理に事細かに理由を説明することは、ほとんどしてこなかった。特に初めての人には、もう少し説明の仕方を考えないといけない。
それと、クラニオ+フォーカシングという、極めてわかりづらい──そして説明しづらい──方法から治療に入ったことだが、これは患者の体に聞いた時、まず頚椎から、そこがどういう状態なのかを患者自身に感じてほしい、という要求があったためである。
ある時期から、私の治療には何らかの決まった手順がなくなり、(ちょっと変に聞こえるかもしれないが)全て患者の体に聞いて、それが指示する通りに治療を進める方向に変わった。それがクラニオセイクラル・バイオダイナミクスで言う、固有治療プラン(inherent treatment plan)なのかどうかはわからないが、全ての方針は患者の体にゆだねている──もちろん、途中で「○○なら、△△も診ておいた方がいいのでは?」という問いかけや提案をすることもあるが。そういうわけで、その時も頚椎からの要求を受けて、まずそこにフォーカシングしてもらうところから始めたのである。
しかし今度の件があって、体から示された最初の治療プランに不都合がある場合、体に対してセカンド・プランを求めることができるのではないかと思いついた。そして、やってみると実際にそれができることがわかった。
それはある意味、当然のことだった。カイロプラクティックでしか治せない患者や、鍼灸でしか治せない患者などいない。体には治るためのさまざまな仕組みが用意されていて、カイロ、鍼灸、オステオパシー、クラニオなど、世にあるさまざまな治療法は、その仕組みのごく一部を作動させるための手段に過ぎない。とすれば、体が提示する治療プランも、その中の1つの流れを示しているに過ぎない。求めれば、体はセカンド・プランもサード・プランも見せてくれるはずだ(そんなことは当然わかっていたはずなのだが、今までそれを明確に意識化していなかった)。
今度の件では、そういうことを学んだのであった。
この時の治療は、クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)と頚部へのフォーカシングで始めた。後頭部をホールドし、そこから感じられる動きを追いながら、患者には頚部(頚椎)に意識を向けて、そこに何が感じられるかに注意してもらうのである。この処理を始めて5分くらいたった時、頚椎に向けているはずの患者の意識が、そこから消えるのがわかった。そして、その少し後、患者が突然言った。
「こんなこと、いつまで続けなきゃならないんですか? 一体何を感じろっていうんですか? だいたい、何の説明もなしに!」
ウチでは毎回、治療がある程度進んだ段階で、そこまでの内容をまとめて説明する体裁を取っているため、その人に対しても説明なくそれを始めていた。しかし、そう言われてしまったため、一旦治療を中断して説明を始めたのだが、(説明が下手だったこともあったのだろう)こちらが意図していることがなかなか理解してもらえず、
「私はここに痛みを取ってもらいに来たんです! こんなことされることがわかってたら、ここには来なかった」
と言われるに至り、私もちょっとキレかかり、こりゃーダメだ、と思った。
「わかりました。治療はここでやめにしましょう。おカネはいりませんから、お帰りください」
と告げて、治療を打ちきった。その人は
「残念です。ここには期待して来たんですけど」
という一言を残して、帰っていった。
これまで、治療中に患者が何かの用で呼び戻され、治療を中断したことはあったが、こういう形で──しかも(治療面接や検査の時間を除いて)始めてから5分くらいしかたっていない段階で──治療を打ち切ったのは初めてで、その後しばらく、この時のことを思い出しながら、いろいろ考えた。
まず確かに、言われたように説明なしに始めたのはマズかった。人一倍説明には気を配っていたつもりだったが、上にも書いたように、ある程度進んだところで、まとめて説明する形を取ってきた。1つひとつの処理に事細かに理由を説明することは、ほとんどしてこなかった。特に初めての人には、もう少し説明の仕方を考えないといけない。
それと、クラニオ+フォーカシングという、極めてわかりづらい──そして説明しづらい──方法から治療に入ったことだが、これは患者の体に聞いた時、まず頚椎から、そこがどういう状態なのかを患者自身に感じてほしい、という要求があったためである。
ある時期から、私の治療には何らかの決まった手順がなくなり、(ちょっと変に聞こえるかもしれないが)全て患者の体に聞いて、それが指示する通りに治療を進める方向に変わった。それがクラニオセイクラル・バイオダイナミクスで言う、固有治療プラン(inherent treatment plan)なのかどうかはわからないが、全ての方針は患者の体にゆだねている──もちろん、途中で「○○なら、△△も診ておいた方がいいのでは?」という問いかけや提案をすることもあるが。そういうわけで、その時も頚椎からの要求を受けて、まずそこにフォーカシングしてもらうところから始めたのである。
しかし今度の件があって、体から示された最初の治療プランに不都合がある場合、体に対してセカンド・プランを求めることができるのではないかと思いついた。そして、やってみると実際にそれができることがわかった。
それはある意味、当然のことだった。カイロプラクティックでしか治せない患者や、鍼灸でしか治せない患者などいない。体には治るためのさまざまな仕組みが用意されていて、カイロ、鍼灸、オステオパシー、クラニオなど、世にあるさまざまな治療法は、その仕組みのごく一部を作動させるための手段に過ぎない。とすれば、体が提示する治療プランも、その中の1つの流れを示しているに過ぎない。求めれば、体はセカンド・プランもサード・プランも見せてくれるはずだ(そんなことは当然わかっていたはずなのだが、今までそれを明確に意識化していなかった)。
今度の件では、そういうことを学んだのであった。
私自身も治療を受ける前に説明を受けたいタイプです。
特にsokyudoさんがやられている治療方法に関しては、クライアントの理解が(共同作業という意味も含めて)治療効果を最大限に引き出すための非常に重要なファクターでもあるように思われます。
今後のご活躍ご期待いたします。
おっしゃる通りで、私のやっているような治療は、患者側の協力なしには成立しません。
今度のことでは反省すべき点がありました。今後に生かしていきたいと思います。
患者不在の治療には未だ変わりないように思います
治るも治らないも患者さんの意思でいつでも、変化可能なものではないでしょうか?治ってもいいプロセス、準備のお手伝いの要素があるとすれば、信頼・不信のフィルターを意識することが第一ではないでしょうか
まだまだ試行錯誤中です。
こちらとしては、自分が現段階でできるベストの治療をしようと考えていますが、それが患者の意に沿ったものでないこともあります。また、即よい結果が出るケースばかりでもありません。
その辺を踏まえて、いろいろ模索しながら自分のやり方を再構築するしかなさそうです。
ところで質問なんですが、
>患者の体に聞いて、それが指示する通りに治療を進める
と本文にありますが、具体的にはどうされているのでしょうか?
ぶしつけですみません、以前からとても気になっていました。
以上宜しくお願い致します。
患者の体への質問ですが、キネシオロジーの筋肉反応テストを使って行います。
正常な状態にある筋肉を選び、それを指標として使います(これをインジケータ筋と言います)。心の中で患者に質問を行い(それを私たちは「マインドで聞く」と呼んでいます)、その答がYesならインジケータ筋が弱化(アンロック)、Noなら強いまま(ロック)と約束します。
そして、体に対して「一番優先的に行わなければならない箇所を教えて下さい」と頼んで、あとは頭の先から足の先まで「ここですか? ここですか?」と順番に聞いていき、Yesの答えが出るところを探すだけです。
主訴とは全く無関係な場所を指定されることも多々ありますが、私の経験上、体が指定する順番通りにやっていくと、結果として体が必要としていた順番に必要な治療が行えるようです。
ただ、それは1回で終わるものではなく、また主訴の部分になかなか行き着かないことも多い(当然、患者には「治療を受けたけど、何も変わらなかった」と思われてしまう)ので、ブログの本文に書いたようなことが起こってしまうわけです。
さらに質問してもいいですか?すみません。
同じ患者さんが来院される度に毎回やるわけですよね?
その都度一番優先的な治療箇所は変化しますか?
お手数かけてすみませんが、よろしくお願いいたします。
同じ患者でも一般に、筋肉反応テストで聞いた優先的に治療を行う箇所は毎回変わります。
これは、同じ人であっても体は変化しているわけですから、全く不自然ではありません(主訴だって、その時その時で変わりますし)。
ついでに書くと、患者の体とのマインドでのやり取りでは、単純に体から治療箇所の指示を受けるだけでなく、「ここだったら、○○も調べといた方がいい?」のような提案も行います。
例えば、顎関節が出てきたら、「側頭骨や歯も調べといた方がいい?」のように。
さっそくトライしてみます。
どうもありがとうございました。
うちは、紹介者は、「だまっとったら、先生が悪い所、勝手に見付けてくれるけん、だまっときんしゃい!」と言ってくれるので、インフォームドコンセント無しです。
身体からの要求も変わって来ますし、どんな治療になるのか、さっぱり解らなくなって来ました。