先の記事「体に悪い食品」の中で、私は
そもそも食の問題というのは、「何を食べるか」ということ以上に「どう食べるか」、あるいはもっと言えば「食べるとは何か」ということが問われなければならないはずだが、食品のことを問題にする人たちの中で、そこまでキチンと論じているのは、少なくとも私の知る限り、おのころ心平さんを除いて誰一人いない。
と書いた。それについて詳しく述べたい。
で、今回のBGMに選んだのは劇場アニメ『空(から)の境界』の第7章「殺人考察(後)」のOST。その理由? それは、この「殺人考察(後)」に登場する白純里緒の“起源”が「食べる」だから。その辺を知りたければこの動画を。ただし、かなりエグイので視るなら自己責任で。
なお、以下はおのころ心平さんのセミナー・テキストがベースとなるが、そのテキストのネタ資料は松本丈二、大滝百合子両氏の共著『自然史食餌学』である。そして、その『自然史食餌学』で述べられているのは、「生物系統的に人間から離れているものほど、それを食べることは健康によい」ということだという。
なぜか?
それは「食べる」という行為は、自分以外のものの経験を「取り込む」ためのものだから。そして取り込む経験は、自分という存在から遠ければ遠いほど、自分を豊かにしてくれる。それゆえ、同じほ乳類より魚や(最近、国連などが推奨しているという)昆虫、あるいは動物ではない植物、菌類などが食品として優れている、ということになる。
少し私自身の考えをつけ加えると、「食べる」という行為は自分を取り巻く外の世界を知るためのもの、だとも考えられる。
人が外から内に取り込むものは大きく2種類あって、それは空気と食物である。とすると、呼吸器は主に非物質的なもの(酸素だけでなく、その場の空気感や雰囲気など)を取り入れる作業を担い、消化器は主に物質的なものを取り入れる作業を担っている、と見ることができる。
話を戻すと、「食べる」とは自分以外のものの経験を取り込み、理解し、身に着ける、一連の流れの総体として捉えなければならない(とすると、「食べる」ということを考えた時、一般に栄養学で重視される栄養素だとかカロリーだとかは、実は問題としては、ほとんど(全くとは言わないが)カスみたいなものなのかもしれない)。
そのために、まずしなければならないのが咀嚼、つまり噛み砕くという作業だ。複雑なものはよく噛み砕き、細かく分けることで、取り込み、理解し、身に着けやすくなる。
私の家は商売をやっていて、そのためか子供の頃、食べるのが遅いと言われてよく叱られた。父親からは「お前はいつまでもモグモグ噛んでるから、食べるのが遅ェんだ! 食べ物なんてものはなぁ、口入れて2,3回噛んだら、そのまま飲み込むものなんだ」と。
そのため高校の頃は本当に食べるのが速くなり、修学旅行などに行くと「誰よりも遅く食べ始めても、誰よりも速く食べ終わる」ようになっていた。けれども胃腸が弱いという問題を抱えていた。
会社員になった頃、ある雑誌で「食べ物は50回噛め」という記事を見て、実践し始めた。すると以前ほど胃腸の弱さは感じなくなったが、人と食事することができなくなった。私が人と同じペースで食べられなくなったからだ。人が食べるのを見ていると、とにかく速い。食べるのが速い理由は、もちろん噛まないからだ。
今は50回も噛むことはしないが、それでも彼らと一緒に食べると、かつてのようにほとんど噛まずに丸呑みしなければならない。それがイヤなので、特にランチはできるだけ1人で食べるようになった。それは私にとって、ある種の自衛手段のようなものである。
人が食事をしているのを見ていて気づくのは、とにかく噛まないことだ。その上、手は食べ物を口に運んではいるが、意識はほとんどケータイやスマホに取られてしまっている。自分が今、何を食べているのかも、半分わかっていないんじゃ?とさえ思う。
おのころ心平さんはセミナーの中で、「たとえ体に悪いマックを食べても、ちゃんと噛んで唾液をたくさん出して、それと混ぜていけば、毒の成分をかなりのところまで消すことができるんです」と言っていた。「大切なのは、何を食べるかよりも、まず『食べ方』です」と。
そんな生物として基本的なことすらできていないことも認識せず、ただただ「この食品は体に悪い。これは食べるのを止めなさい」などとご高説を垂れている人たちが、「ああ自分は素晴らしいアドバイスをしてるなぁ」なんて思ってるのだとしたら、チャンチャラおかしいよね、ということが言いたかった。
ちなみに、1日一杯の青汁のみで、13年生活(健康的に)している女性が日本にいます(著作も有)
その方の腸内細菌叢は、野生の草食獣と変わらぬ程だとか(腸内細菌がセルロースを分解→栄養分を発生?)
インドにも、水のみで数十年とかいう仙人がいるらしいですが…
いろんな方がいるもんです。
>素人の私見ですが、世の疾病の大半は、単なる食べ過ぎ・食べ方の下手過ぎによるものと思います。
同感です。
本文にも書きましたが、「食べる」ことは生物としての基本であるにも関わらず、その基本さえマトモにできていないのだから病になって当然、だと言えます。
そのくせ「癌にならないようにするには何を食べたら/食べなければいいですか?」なんて聞いてくる。
世の中、健康情報が溢れてますが、何かそれ以前の問題のような気がしますね。