私が使っているキネシオロジーというメソッドは非常に便利で、例えば実際にメスで身体を切り開かなくても、解剖写真があれば身体内部の状態をかなり高い確度で調べることができる。で、時々「この部分を細胞レベルで調べられればなー」と思うことがあるのだが、なかなか普通の解剖書では各細胞を精細に捉えた写真が載っていなくて、果たせないままでいた。
誤解されるといけないので追記しておくと、「キネシオロジーで調べるのには写真が必須」ということは必ずしもない。施術者の側に写真で見るように身体内部の精密で明確なイメージがあればいいのだが、そこまで勉強していない私は、つい写真に頼ってしまうのだ。
そんな時、たまたま見つけたのが、この『新・細胞を読む』だ。
この本はサブタイトルが『「超」顕微鏡で見る生命の姿』とあるように、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡まで使って撮影した、さまざまな細胞の写真が満載されている。それが実際どんなものかは、このカバー写真からもわかるだろう。
中には人のものではないのも混じっているので、載っている写真全部が人相手のキネシオロジーの検査で使えるわけではないが、それでもこれを使えば細胞レベルの状態まで調べることができる(はず)。
それだけで私にはこの本を買う十分すぎる理由になるが、掲載された写真や図に対する著者、山科正平の非常に詳しい解説もついているのが、またいい。どこかの解剖書から引用したような通り一遍のものではなく、まさに「ここでしか読めない」話題が数多く盛り込まれているのだから。
細胞の話は、生物学や医学を学ぶと露払いのようにまず一番最初に出てくるものだが、それ以降は器官や器官系の方が中心となって、特に必要ない限り細胞レベルであれこれ論じられることはなくなってしまう。
例えば、分泌(内分泌、外分泌)についても、どんな物質が、どこの器官から、いつ、どこに向けて分泌され、それがどういう働きを持つか、といったことは詳しく学ぶが、細胞の各小器官がどのように働くことで分泌という行為が可能になるか、といったことは、まず教わらないし、この本を除けば、ほとんどの解剖学書、生理学書には書かれていない。
ただ「それを知って何になるのか?」ということはあるだろう。1つには、相当医学の勉強をしていると自負している人でさえ知らないようなことを知って、ちょっとだけ優越感に浸れる、というメリットはあるかもしれない。
しかしまあ、そういう暗~い喜びについてはともかく、「神は細部に宿る」という言葉を思い出すなら、この本を片手に、器官や器官系ばかりでなく時には生物の持つ細胞レベルの精妙さに思いを馳せてみるのも悪くはないだろう。
※これは「ブクレコ」に『新・細胞を見る』のレビューとして書いたものに加筆修正したものである。
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