今年の目標の一つは、「クラニオセイクラル・ワークがもっと上手くなること」だった。この「もっと上手くなる」という、実に曖昧な目標は自分でもどうかと思うが、これ以上、表現のしようがなかったのだから仕方がない。治療院の中には「一発で痛みを取ります」みたいなことを売りにしているところもあるが、そもそも症状を取ることが治療の目的なのか
と考えると、それも違うような気がする(症状というものは、さまざまな要因が重なって「結果として」出てくるものだから、治療でも、治っていく中で「結果として」症状も取れていくものだと、私は思っているから)。結局、治療が上手くなったかどうかは、治療家が主観的に判断するしかないのではないだろうか。
ただ、そういった目標を掲げるまでもなく、治療のやり方はどんどん変わっている。今年に限った話ではないが、1年前と今とでは、外見的には同じことをしているように見えて、実はやっていることが全く変わってしまっているものも多い。特にクラニオセイクラル・ワークではそれが顕著で、自分の勉強がてら本も出したが、読む本が変わると、それに引きずられる形で、また、こんなやり方はどうかなというアイディアも湧いてきて、自分の施術がその時々で大きく変わるのを、まざまざと実感することになった。
私の場合、クラニオについては、定期的に参加している勉強会では主に(バイオダイナミック派がバイオメカニカルなクラニオと呼ぶ)アプレジャー流の手法を教わっているが、バイオダイナミクスについては師と呼ぶ人はおらず、その時、自分が読んでいる本が師となる。ところが、同じバイオダイナミクスを名乗っていても、本によって書いてあることが大きく違ったりするモンだから、自分の施術もスクラップ&ビルドの繰り返しになっていく。そういうわけで、私のクラニオは今年の初めはフランクリン・シルズ流だったのが、今はチャールズ・リドリー流のそれに、大きく変わった。
と言っても、それはチャールズ・リドリーの『スティルネス』(エンタプライズ刊)を読んで自分なりに解釈したもの、という意味にすぎない。この『スティルネス』はクラニオの専門書ではあるが非常に謎めいた本で、その中身を本当の意味で理解し実践するのは極めて難しい。私もどこまで理解できているか、実はよくわからない。それに『スティルネス』に書かれていることに全て忠実に従っているわけでもないので、今の私のクラニオは、もっと正確に言えば、自己流解釈版リドリー風(笑)である。それについて、少し詳しく述べると…
7月にりゅうしろうさんの主催するワークショップ『元気と勇気の祭り』に参加した時、非常に短時間で変性意識状態に入れる方法というのを学んだ。変性意識状態に入る方法として一般に紹介されているのは、自分の呼吸に意識を向けて吸う息、吐く息を追っていく、というやり方だ(例えば、シルズの『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.1』(エンタプライズ刊)に紹介されているのも、その方法だ)。だが、ワークショップで習った方法を使うと、それより遙かに速く、数秒から十数秒で変性意識状態に入れるのである。その方法とは、外後頭隆起に意識を向けることである。
で、東京のN歯科に通う電車の中でそれを練習していて、ちょっと思いつきで、その変性意識状態を心臓に移してみた。私には変性意識状態がある種の場(フィールド)のように感じられていたので、その場を頭から胸の心臓の当たりに移動させたのである。これは、リドリーが『スティルネス』の中でしきりに、施術者が心臓の中の心臓たる洞房結節に留まることの重要性を述べていたことに由来する(注1)。そして目を閉じたまま試みに、前に立っている人の姿をその場の中にとらえる、ということをやってみた。すると、その場の中にはその人が大きく「く」の字に曲がった姿が映し出されたのである。それだけではない。対象を別の人に変えると、今度は体がある点を中心に渦を巻いているイメージが現れた。
(注1)場を頭に置いたまま同じことをすることも試してみたが、心臓に持って行った場合と比べると、そこに映し出されるイメージに感じ取れるものが少なくなるように、私には思えた。それがmindとheartの差なのだろうか?
面白かったので、今度は目を開いて、同じ人に対して体のどこが悪いかをキネシオロジー的に筋肉反応テストを使って調べてみた。すると、そこで見つかった部分が先ほどの場──これを私は、認識-思考場(awareness-thought field)、略してATフィールドと呼ぶことにした(注2)──に映し出されたイメージの、変だった箇所とぴたりと一致したのだ。
(注2)もちろん、この名前は『エヴァンゲリオン』に出てくる、あのATフィールドのアナロジーでもある。ただし『エヴァ』のATフィールドは、absolute terror field(絶対恐怖領域)の略なので、意味が異なる。
また、中には場に姿を映し出そうとすると、そういった視覚的なイメージの上での異常ではなく、代わりに、苦しいような重いような、何かイヤ~な感じが場の中に広がる人もいる。本人が自覚しているかしていないかは別として、何か重い病気を持っているのかもしれない。
そういうわけで、最近はもっぱらこのATフィールドを使って、クラニオを行っている。クラニオと言えば、アプレジャーもシルズも、そしてリドリーも、体に周期的に現れるリズム──タイド(潮流)──というものを非常に重視する。私も今年の前半くらいまでは、このタイドに基づいて施術を行っていたが、今はタイドを意識することを全くしなくなってしまった。今やっているのは、ATフィールドを使ってそこに患者のイメージを映し出し、頭蓋にホールドしながらそれを整える──いや、「クラニオの要諦は『無為の為』にある」というリドリーの教えに従って、「ひたすら何もしないでいる」──のである(注3)。
(注3)と言っても、本当に「ひたすら何もしないでいる」と非常に時間がかかるので、実際には時間短縮のためにフォーカシングなどを併用している。ただ、これについて書き始めると、また長くなるので、今回はこれ以上触れない。
上でも述べた通り、このやり方がどれだけリドリー本来の流儀に適っているのかは、よくわからない。ただ、こうして考えてみると、アプレジャーのやり方(バイオメカニクス)もシルズのバイオダイナミクスも、(シルズは間違っていると主張する)リドリーのバイオダイナミクスも、実は頭蓋・仙骨を主軸にアプローチする方法の、ほんの一部分に過ぎないのではないかと思えてくる(実際、彼らの源流であるサザーランドとは別の流れを持った、頭蓋仙骨療法はたくさんある)。
ただ、上に書いたものも、私の「今の」やり方を述べたに過ぎない。多分、数カ月も経てば、また違うやり方をしているだろう。で、2008年の私の目標の一つは、やはり「クラニオセイクラル・ワークがもっと上手くなること」である。相変わらず内容が具体的でないため、いつになったら達成できるのかわからないけれど、そういうアバウトさも自分らしくていい、と思う。
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>先生の場合、眠くなることは無いですか?またこれに対する良い方法はあるでしょうか?
僕の頭蓋はもっとメカニカルなLASを使ったりバイオダイナミックス?の様なことをするのですが、一番の問題点は、このバイオ的手法をとると待ちに入った途端寝てしまうと言うことです。
先生の場合、眠くなることは無いですか?またこれに対する良い方法はあるでしょうか?
ジムは寝て良いと言うそうなんですが…いくらなんでもねぇ…圧はぶれるし~頭付き危険だし(笑)