手元にある「旺文社レクシス英和辞典」でsagaを引くと、こんなふうに書かれている。
①サガ(中世北欧の散文文学の総称)②(サガ風の)英雄物語、武勇伝、冒険談③系譜小説、大河小説(一家・一門などの変遷をたどる長編小説)④(口)(長期にわたる)一連の出来事(の話)
しかしアニメ『Zombieland Saga(ゾンビランドサガ)』(長いので以下『ZS』)は、不慮の事故で死んだ少女たちが謎の黒メガネの男、巽(たつみ)幸太郎によってゾンビィとして復活させられ、過疎化が進む佐賀を救うためのご当地アイドルになることを命じられる、という物語(ちなみにエンドロールを見ると、本当に佐賀県が企画協力している)。つまりSaga=佐賀というわけだが、それと同時にこれは、図らずも死から甦ってアイドルを目指すことになった少女たちの英雄物語、武勇伝、冒険談でもある。
そういえば、sagaはもう1つ別の意味でも使われている。OPの前奏部分に入る主人公、源さくらのこんなナレーションで。
「死んでも夢をかなえたい。いいえ、死んでも夢はかなえられる。それは絶望? それとも希望? 過酷な運命乗り越えて、脈がなくても突き進む。それが私たちの性(さが)だから」
ここ最近、アイドルを目指す少年、少女を描いた話(「なろう系」と呼ぶらしい)はかなり作られているし、ゾンビ物も『がっこうぐらし』などちょっと変わった切り口の作品も含めてそれなりにあるが、まさか「なろう系」とゾンビ物を合体させようなどとオソロシイことを考え出す人がいようとは…。
第1話では冒頭、源さくらがアイドル・グループのオーディションに応募する書類を出しに家を飛び出すのだが、そこで彼女は走ってきたトラックにはね飛ばされて死亡する(『進撃の巨人』でも、物語のかなり早い段階で主人公のエレンが巨人に食われてしまうショッキングなシーンがあるが、冒頭3分で主人公が死ぬ作品は他にないかも)。
再び意識を取り戻した彼女は不気味な館の中でゾンビィたちに襲われるのだが、実はさくら自身もゾンビィになっていた。そしてそこに現れた黒メガネの幸太郎に、まだキチンと意識の戻っていない6体のゾンビィとともにグループとして人前で歌うことを命じられる。
その後、さくらは意識を取り戻したメンバたちとともに青ざめた肌を厚化粧で隠し、幸太郎の下、グループ「フランシュシュ」(「腐乱シュシュ」)としてアイドル活動を始めるのだが…。
見てつまらなければ3話切りどころか、最近は1話切りも珍しくない中、最初は切ろうかどうしようか迷っていたが、尻上がりに面白くなる物語に魅せられて最後まで見続けることになった。彼女たちは全員ゾンビィだから基本どんなブラックな労働にも耐えられるし、過労死することもない。そういう部分をギャグとして使いながら、物語はしっかり群像劇として成立させている、というそのギャップが『ZS』最大のウリで、それを支えていたのが幸太郎を演じる宮野真守のギャグの部分とシリアスの部分の振れ幅の大きさだろう(ただ、かなり『Steins;Gate』の岡部倫太郎/鳳凰院凶真が入っていたのはご愛敬)。
さて、最終回で念願の佐賀アルピノのステージに立った「フランシュシュ」。だがEDとCMを挟んでの「あれ」は一体何? まさか第2期がある…のか?? …と、それはともかく、記事のラストはED「光へ」で。
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