名瀬泉:凪が来る…。
名瀬美月:凪!?
名瀬泉:全てが止まる、停滞の時。そして──境界の彼方。
まず1人の少女──栗山未来(みらい)。
妖夢討伐を生業とする異界士の1人だが、その血に触れたもの全てを死滅させる「呪われた血」の一族として、他の異界士から忌み嫌われる存在である。自らの体から流れ出る血を自由に操り、血を硬質化させた剣で妖夢と戦う。トレードマークは赤のメガネ。口癖は「不愉快です」。
そして1人の少年──神原秋人。
妖夢と人との間に生まれた半妖。そのためか、その身体は異常なまでの再生能力を持ち、ほとんど不死身。高校では文芸部に所属する、メガネとメガネ女子を偏愛する変態メガネ・フェチ。
では質問。
あらゆるものを死滅させる未来の血の剣で心臓を刺し貫かれた不死身の秋人は、一体どうなったか?
──そんな(ヤラセで打ち切りになってしまったけど)『ほこ×たて』みたいなシーンで始まったアニメ『境界の彼方』がクライマックスを迎えている。
『境界の彼方』は孤独な異端者同士のボーイ・ミーツ・ガールの物語であり、それ自体はアニメでは手垢のつきまくった題材であるのだが、「またか…」という感じがない。それは、1つには物語にある仕掛けがなされているからだ。
その仕掛けとは、「あることが明らかになることによって、過去のシーンがそれまでと違って見えてくる」ということ。これと同様のものは、例えば『まど☆マギ』でも使われていて、1人の登場人物の持つ背景が明らかになった時、過去のその人の言動が全く違う意味を持って立ち上がってくる仕掛けだ。
『境界の彼方』の仕掛けは『まど☆マギ』ほど大がかりなものではないが、それがOPにつながっていくところなどは、『まど☆マギ』を意識して作られていたのかもしれない(ちなみに『まど☆マギ』はOPの歌詞に仕掛けがなされていたが、『境界の彼方』はOPの映像に仕掛けがなされている)。
また『境界の彼方』では、その仕掛けが秋人と未来の両方に使われている。だがら見ている側は、それまで見て感じていたものの意味を繰り返し覆されることになるのだ。
例えば、第6話「ショッキング・ピンク」(『境界の彼方』では各話のタイトルに色が入っている)。妖夢の気を引くために未来と秋人は、同じ高校に通う異界士、名瀬博臣、美月兄妹とアイドルになりきって歌い踊るという、完全なギャグ回なのだが、今、改めて見ると何だか切なくて泣きそうになってしまう(ちなみにランニングシャツにマフラーという博臣は、妹大好きの変態シスコンお兄ちゃんだ)。
ついでに京アニつながりで言うと、上の動画には出ていないが、異界士の名門、名瀬家の長女、泉のビジュアルや行動原理は『氷菓』の入須(いりす)冬美(大病院の跡取り)とそっくりで、入須のその後を見ているような錯覚を感じてしまう(なので、個人的には声も川澄綾子ではなく、ゆかなにやってほしかった)。しかも主人公たちの学校での拠点になるのが『氷菓』は古典部、『境界の彼方』は文芸部だし。
実は『境界の彼方』は私の2013年冬期アニメの本命だったのだ。さて残りはあと2話。このボーイ・ミーツ・ガールの物語はどんな終わりを迎えるのだろうか。楽しみ。
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