深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2024年夏アニメの感想と評価 3

2024-10-08 15:30:47 | 趣味人的レビュー

2024年夏アニメとして見た再放送を含む16本の作品のネタバレなしの感想と評価。途中切りしたものは「1」で、10月以降も放送が続くものは「2」で述べたので、この「3」は今期で一旦放送を終えたものについて。

ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。

以下、並びは50音順で、評価はA~E。

『ATRI-My Dear Moments-』

ゲーム原作のアニメ。
原因不明の海面上昇によって地表の多くが海に沈んだ近未来を舞台に、幼い頃に片足を失い海辺の田舎町へと移り住んだ少年、斑鳩夏生(いかるが なつき)は、祖母の遺産が眠るという海底の倉庫の中で人間と見紛うほど精巧に作られたヒューマノイドの少女、アトリと出会い、2人の忘れられない夏が始まる。アトリとは何者で、夏生の少年時代の記憶とどう結びついているのか?
制作がTROYCAだけに非常に手堅い作りで、全13話で物語も破綻なく綺麗にまとまっているが、その反面、物凄いどんでん返しや衝撃展開があるわけでもなく、こぢんまりしすぎているきらいもある。とはいえ、切なさと希望に溢れた第13話は出色だった。
それと後半、アトリには感情があるのか?が1つのテーマとなるが、個人的には、それってそんなに本質的で重要な問題なんだろうか、と思う。西洋ではキリスト教の影響もあって、人間以外の動物に感情があるかどうか延々と議論され続けている(かのシュタイナーでさえ「動物にも人間のような感情があるなとど言う者がいるが、たわごとだ」と著書の中で書いている始末だ)。しかし、そもそも動物どころか(自分以外の)人に感情があるかどうか、どうして知ることができるのだろう? それでも人は普通に他人や動物と接している。なので私には、アトリに感情があるかどうかにあそこまでこだわる夏生たちの気持ちがどうにも理解できなかった。
評価はC+~B-。

『狼と香辛料』1期第2クール

旅の行商人、クラフト・ロレンスが麦の豊作を司る狼の化身、ホロと出会い、各地で商売をしながらホロを彼女の生まれ故郷まで送り届ける、という物語。ロレンスは行く先々で何度も窮地に陥るが、それを賢狼ホロが支え、導き、何とか危機を脱する。
だがよく考えると、その窮地というか危機というのは大抵、ロレンス自身が招いたことだ。ロレンスはいっぱしの商人を気取りながら、そのくせ儲けを焦ったり、いいところを見せようとして、危ない取引に手を出し、結果としてドツボにハマる。それがロレンスの性分だ、といえばそれまでだが、商人としてはどうなんだろう。こういうロレンスの危なっかしさが物語を作り出しているわけだが、ロレンスのような人が現実にいたら、少なくとも私は、こんな山っ気のある人間は商人として信用しないだろう。そういうわけで、どうも私にはロレンスの商人という設定と彼の行動原理が矛盾しているように思えてならない。
評価はC-~C+。2期の制作も決定したようだが、原作(ライトノベル)はまだ続いているようで、果たしてホロは故郷に辿り着けるのだろうか?(とはいえ、この作品はホロがロレンスとの間にできた娘?に2人の旅の出来事を昔語りしている、という体裁なので、物語が始まった時点で既に帰り着いた後、なのかもしれない)。

【推しの子】2期

1期では、主題歌を歌ったYOASOBIを世界のスターダムへと押し上げた大ヒットアニメの2期。今期の物語は1期の最後からの続きになるが、まずは【推しの子】のメインストーリーから外れた、いわばサブストーリーである2.5次元舞台「東京ブレード」編。
サブストーリーとはいっても、業界の裏話を交えた物語展開は文句なしの面白さ。特にマンガ『東京ブレード』の舞台化を巡るゴタゴタは、日テレでのドラマ化で原作者が自殺とおぼしき亡くなり方をした『セクシー田中さん』の事件?を彷彿とさせるものがあり、1期で描かれたSNSによる誹謗中傷問題もそうだったが、【推しの子】の一種の予見性を表していると言える。
そして物語は、舞台「東京ブレード」を終えたアクアへの慰労と新生B小町のMV撮影を兼ねて宮崎へ。ここは「『東京ブレード』がメインで、余った話数を埋めるためのオマケかな?」という雰囲気を漂わせながら、それを完全にひっくり返してくる。そこで衝撃の事実が明らかになり、視聴者は一気に【推しの子】のメインストーリーに引き戻されるのだ。
ネットでは1期と比較して2期を批判する意見も結構見られたが、私はむしろ長い前振りのような1期よりも2期の方が見ていてワクワクした。
というわけで評価はB+~A-。3期も制作決定だ。

『烏は主を選ばない』第2クール

小説「八咫烏(やたがらす)」シリーズが原作の、中世日本を模した異世界もの。
八咫烏の一族が人の姿に「転身」して住まう“山内(やまうち)”。第1クールは、そこを統べる朝廷で次期帝(みかど)となる若宮の后を選ぶ話だったが、第2クールは山内を揺るがす異変と、この『烏は主を選ばない』という物語世界の真実が描かれた。
第1クールがサイコサスペンスだったとしたら、第2クールはホラーを装ったSFミステリか。異世界ものにはしばしば現実世界との関係性に言及する作品(例えば今期の『この世界は不完全すぎる』もその1つ)があるが、この『烏は主を選ばない』も異世界ものであることを逆手に取った衝撃の展開が待っていた。とにかくこの原作者、ミスディレクション(=読者の注意を間違った方向に向ける技術)の巧みさが傑出している。第2クールが第1クールの焼き直しになっていないところも素晴らしい。
評価はA-~A。まだ全ての謎が明らかになったわけではないが、果たして2期はあるのか?

『この世界は不完全すぎる』

個人的には今期の掘り出しものと言える作品。
いわゆる「異世界もの」の1つだが、異世界の物語をガッツリやるのではなく、例えば『異世界おじさん』や少し前の『ログ・ホライズン』のように、異世界と現実世界がリンクした物語構造になっている。異世界ものは現実にはない魔法やクリーチャーなどが登場するが、この『この世界は不完全すぎる』は、なぜそうなのかがちゃんと説明できる。この作品における現実世界と異世界との関係は、これまでも多くの作品で使われてきたものの焼き直しではあるけれど、それをこういう設定(ネタバレになるのであまり詳しくは書けないが)にすることで、新しさを感じるのだから不思議だ。ちなみに主人公たちが窮地を乗り越えるのにも、この設定が生きている。
物語の基本設定の斬新さは買うが、話が中途半端なところで終わってしまい、評価はC+~B-。2期があるかどうかはまだ分からない。

『小市民シリーズ』1期

米澤穂信による、高校を舞台としたミステリ小説「小市民シリーズ」のアニメ化。米澤には、やはり高校を舞台にした「古典部シリーズ」もあって、こちらは『氷菓』のタイトルで京アニによってアニメ化された。今回のアニメ制作は、ミステリもののアニメで定評あるラパントラックだ。
かつて“知恵働き”によって苦い経験をした小鳩常悟朗と、やはり自身の洞察力と行動力で過去に手痛い失敗をした小佐内ゆき(登場人物の名字に「小」の字がついているのは、「小市民シリーズ」に掛けた米澤のこだわりか?)。同じ中学から同じ高校に進んだ2人は、自らの力を封印して平穏に暮らす“小市民”を目指す互恵関係を結ぶのだが、そんな彼らの前にある事件が…。
私は米澤作品を以前から読んでいて、この『小市民シリーズ』も「冬期限定ボンボンショコラ事件」以外は全て読んでいる。だから『小市民シリーズ』がアニメ化されると知った時は、「また米澤作品がアニメで見られるんだ!」とうれしかった反面、不安もあった。『小市民シリーズ』の原作小説はページ数も少なく一気読みする本だ。それを1章1話みたいに切れ切れに見て果たして面白いんだろうか?と(実際、どうやって道具を使わずホットココアを作るかなんて、それだけ見たら死ぬほどどーでもいい話だ)。そして結果として、その懸念は的中したと思っている。アニメとしては心象風景なども取り入れて、工夫されたいい作りになっているが、肝心の1話1話の物語が薄味過ぎて全然魅力的じゃない。やはりこの作品は連続TVアニメの形式には馴染まないと思う(逆に、後でまとめて一気見するような視聴方法だと大きく印象が変わるかもしれない)。
ところで、アニメ『小市民シリーズ』で印象深かったのが、登場人物の瞳の描写だ。京アニ作品は登場人物の瞳の描写に特徴があって、それが『氷菓』でも強く出ていたが、ラパントラックは『小市民シリーズ』で京アニとは違う瞳の描写を打ち出してきて、そこに京アニや『氷菓』への対抗意識のようなものを感じた。
評価はC+~B-。タイトルに「シリーズ」とついているように、この作品は1期では終わらない。1期は「春期限定いちごタルト事件」と「夏期限定トロピカルパフェ事件」、それに短編集「巴里マカロンの謎」から1本が放送された。2025年春期に予定されている2期では、「秋期限定栗きんとん事件」と「冬期限定ボンボンショコラ事件」が放送されるようだ。

『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』

教室で隣の女の子が妙に気になる、という学園ラブコメ。
主人公、久世政近の隣の席の「孤高のお姫様」と称される優等生、アリサ・ミハイロヴナ・九条(アーリャ)は、いつも彼に対して冷ややかで毒舌。そんなアーリャが時々、久世につぶやくロシア語は、実は彼に思い切りデレていたのだったが、久世がロシア語をちゃんと理解できていることをアーリャは知らない…。
…という設定なので、もちろんアーリャ役は声優界随一のロシア語使い、上坂すみれ一択である。『ゴールデンカムイ』では月島上等兵のロシア語が一部ネットで酷評されていたが、アーリャのロシア語はロシア人に言わせると日本語なまりはあるものの悪くないそうだ。
ギャグとシリアスがいい具合にミックスされていて、学園を舞台にしたただのドタバタ劇では終わらないから、見終わった時に満足感がある。内容的に「今期を代表する大作」にはなり得ないが、しっかりと存在感がある作品だった。EDが毎話違っていて、『チェンソーマン』かよ!?と突っ込みたくなるが、『チェンソーマン』のEDは全て新作だったのに対して、『ロシデレ』のEDは上原すみれによるカバーだった(個人的には、第1話のEDにフィンガー5の『学園天国』を持ってきたのには唸った)。
評価はB-。2期の制作も決まったようだ。

『NieR:Automata Ver1.1a』2期(第2クール)

1期(公式での呼び名は第1クール)がこの春期に再放送され、そのままの流れで2期(公式での呼び名は第2クール)が放送された。
1期の終わりで、月の人類会議は地球を支配する機械生命体に対して反転攻勢に打って出るべく、新型アンドロイド<YoRHa(ヨルハ)>部隊による大規模な地球降下作戦を決定する。そして2期ではその降下作戦が描かれるのだが――大規模降下作戦の成否は? そして、その裏にある人類会議の真の目的とは? また、9S(ナインエス)が密かに恋心を募らせる2B(ツービー)の正体は?
全く際の読めないストーリーだったが、この作品が言わんとしていたのは、生命(あるいはそれに類するもの)を得たものは全て、人間的なあり方に帰着していく、ということか(それは言葉を換えると、人間こそが生命進化の到達点である、ということでもあり、個人的には何だかな~と思ってしまう)。もしそうだとすると「全ての生命は滅びるように設計されている」という台詞が持つ意味は重い。ただ、ラストは意味がよく分からなかった(多分、見る人によってさまざまな解釈が成り立つようにしたんだろうが)。
評価はB-。

『逃げ上手の若君』

「少年ジャンプ」に連載中のマンガが原作の、鎌倉時代末期から南北朝時代を舞台にした「歴史もの」。原作者は『暗殺教室』と同じ人。
主人公、北条時行は鎌倉幕府最後の執権、北条高時の嫡男。地位や権力には関心がなく、将来は父のような“形だけのお飾りの執権”でいいと考えていた。だが後醍醐帝を討つべく京に上った足利高氏(後の尊氏)たちが突然反旗を翻して鎌倉を攻め、幕府は滅亡。時行もそこで自害するつもりだったが諏訪頼重にいさめられ、「逃げて天下をお取りなされ」という頼重の言葉を受けて、逃げることで足利と戦うことを決意する。
毎回安定して面白かったわけではなく、回によって話の出来に大きな凸凹があった上、そこここに出てくるしょうもないギャグに、気持ちが一気にだだ下がりになる(「ジャンプ」のマンガなので仕方がない面はあるが)。ただ、中先代の乱という、これまでほとんど注目されることがなかった出来事を題材にした作者の慧眼は買いたい。
私は今を、既存の秩序が崩壊して混沌へと向かう、新しい中世の幕開けの時代だと思っている。近年、南北朝や応仁の乱を論じた新書がベストセラーになったり、大河ドラマその他で中世が取り上げられるようになってきているのも、単なる一過性のブームではなく、そういう文脈で捉える必要があるのではないか(恐らく、私と同じような肌感覚を持っている人が少なからずいるのだろう)。
評価はC+~B-。時行が天下に名乗りを上げるところまで描くのかと思っていたら、そこまで至らずに終わってしまった。2期があるのかどうかは現時点では分からない(『暗殺教室』は最後までアニメ化されたけどね)。

『モノノ怪(ケ)』再放送

劇場版公開に合わせてのTVシリーズの再放送。実はこの『モノノ怪』こそ、私がフジテレビのノイタミナ枠で見た初めてのアニメで、しかも見たのは「海坊主」の回からだったので「座敷童」を見るのはこれが初めて。
物語は、諸国を渡り歩く薬売りの男が、各地で遭遇するあやかしや物の怪を退魔の剣で祓う、という話なのだが、その退魔の剣はモノノ怪の「形(かたち)」と「真(まこと)」と「理(ことわり)」が揃わないと抜くことができない。そして、モノノ怪の「形」と「真」と「理」を明らかにする過程は、モノノ怪を通じて人の真実を明らかにする過程でもある。だが、その薬売りが何者で、なぜそんな退魔の剣を携えているのか、といったことは最後まで明らかにされない。
とにかくアニメーション表現がアヴァンギャルドで、最初見た時は「何だこりゃ!?」と目を見張った。その後も数多くのアニメを見てきたが、ここまでぶっ飛んだ表現はこの作品以外にない。物語の方は、あやかしや物の怪は人の境涯や情念によって生み出される、という点で西尾維新の〈物語〉シリーズと共通する部分がある。そういえばTV版の『モノノ怪』で薬売りを演じた櫻井孝宏が例のスキャンダルで映画版を降板し、その後、映画版で二代目の薬売りを演じることになったのが神谷浩史というのも、何だか〈物語〉シリーズを彷彿とさせる(個人的には、ちょっと熱い神谷版の薬売りより、冷たくて何を考えているか分からない櫻井版の薬売りの方が好み)。
評価はC+~B-。エピソードによって出来は若干ばらつきがあるが、いずれも3話を費やした「海坊主」と「化猫」は出色。今後TVシリーズが作られるかどうかは不明だが、映画版は、2024年7月に公開された「唐傘」に続く第2弾の制作が決まっている。

それから本編の評価とは別に、私の独断と偏見で選ぶ今期のベストOP曲は、『ATRI-My Dear Moments-』のOPで乃木坂46が歌う「あの光」。乃木坂46が公式のフルver.を公開していないので、動画はANIPLEXチャンネルによる『ATRI』のノンクレジットOP。

対して今期のベストED曲はなし。代わりに、今期のベストOSTとして小畑貴裕による『小市民シリーズ』メインテーマを。


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