ここのところツイてない(と一言で言ってしまうとちょっと語弊があるかもしれないが)ことが続いていたところに、facebookでたまたま「神門メソッド」のセミナーの招待があり、いきなり参加することに決めた。
このセミナーは「あなたもスプーン曲げができるようになる」という触れ込みだったので、スプーンでも曲げてムシャクシャした思いを発散して、この流れを断ち切れないかな、という期待を込めての参加だった(本当のところは、セミナーの目的は耳ツボの効果をアピールすることで、スプーン曲げはそれを実感するためのパフォーマンスの1つに過ぎなかったわけだが)。
さて、その「神門メソッド」とはどういうものかというと…
中国医学では陰陽五行説を身体にも当てはめ、体を陰と陽に分類する。例えば上半身は陰で下半身は陽、右半身は陰で左半身は陽。体には気(=生命エネルギー)が流れているが、その体の陰陽のバランスが崩れて気の流れに乱れが生じると「病気」になる。つまり、「病気」に対しては陰陽のバランスを取り戻させることが必要である。
体には陰でも陽でもない中庸の部分があり、それが耳の神門穴である。神門は宇宙エネルギーが身体に出入りする場所であり、そこに適切な刺激を加えることで陰陽のバランスが整う。そして実際に陰陽のバランスが整うと、スプーンくらい曲げられるようになってしまう。
…というのが講師の説明。
で、体が陰の部分と陽の部分に分かれていることを示す実験として、重心検査を使ってこんなことを見せてくれた。
まず被験者に足を肩幅くらにいに開いて立位になってもらい、普通に重心を調べる。
次に被験者には同じ姿勢のままで陰の部分である胸骨柄の辺りに意識を向けさせ、同じように重心を調べると、重心がぶれてしまう。
今度は被験者に陽の部分である臍より少し下の辺りに意識を向けさせ、重心を調べると重心が整っている。
また被験者に、手掌が内方を向くようにして陰の部分である右肩を90度屈曲させ、そのまま左回りに体を1回転させるように回ってもらい重心を調べると、重心がぶれてしまう。
次に、同じように手掌が内方を向くようにして陽の部分である左肩を90度屈曲させ、そのまま右回りに体を1回転させるように回ってもらい重心を調べると、今度は重心が整っている。
ここで重心検査を使っているのは、見ている人に変化が分かりやすいからで、必ずしも重心検査である必要はない。キネシオロジーの筋反射テストを使っても、同じように変化を検出することができる(実際にやって確認済み)。
以前、聖龍先生のセミナーで、ロックしていた(=強い状態にあった)インジケータ筋が被験者の眉間に視点を向けるとアンロックする(=弱くなる)というパフォーマンスがあった(その辺の話は「筋反射テスト考 7」を参照されたし)が、今回もそれと同様に、さまざまな要因によって筋反射テストでのロック/アンロック(=強/弱)が容易に変化してしまうことが示された。
しかも、聖龍先生の場合も今回の「神門メソッド」でも、別にスイッチングが生じたわけではなく、ある種の「必然的な変化」としてそれが起こったわけだ。
それで肝心の神門の効果だが、耳の神門穴に刺激を与えて同じことを行うと、重心のブレがなくなる。同じように、眉間に視点が向けられてもインジケータ筋がアンロックすることもなくなるようだ(ただし刺激し続けなければ、その変化は持続しない)。
で、めでたくスプーンも曲げられて2時間のセミナーは終了(なお、その時には全然気づかなかったが、次の日、上腕二頭筋が筋肉痛を起こしていた)。
最後に、以前「神門メソッド」のことを聞いた時から私がずっと疑問だったことについて、ちょっと補足しておこう。
このセミナーでは、神門とはもっぱら耳の神門穴のことを指していたが、人体には別の神門穴がある。心(しん)の原穴、手関節前面横紋尺側の豆状骨上際にある神門穴である。
「神門メソッド」は耳の神門だけにしか使えないのか、手首の神門でも使えるのか──? 「神門メソッド」のセミナーに出たという人に以前facebookで質問してみたのだが、あまりはっきりした答は得られなかった。今回のセミナーを受けた後、自分もでいろいろ試してみた結果、この疑問に1つの解答を得ることができた。
結論:手首の神門でも耳の神門と同じことができる。なお、実際に使う神門は教科書的な位置より内側の、尺側手根屈筋腱の尺側で、沢田流の神門と一致するかもしれない。また、手首の神門と耳の神門とは左右が交叉性に対応しているようだ。
そこに参加して悪い流れが断ち切れたかどうかはまだわからないが、ブログの記事が書けるくらいのネタは仕入れることができたってことで、まぁよしとしようか。
それから、蒼穹堂治療室では8,9月にキネシオロジーの連続セミナーをやります。今回、「神門メソッド」で学んだことも一部入れ込んでいきたいと思いますので、興味のある方はHPのセミナー案内をご覧ください。
で、あるなら神門への刺激で重心が整うのも納得です。
武道で使えそうですね。
神門へ耳ツボしておくと相手と組んだ時にも崩されにくくなりそうです。
NLPなどの心理的テクニックも相手をコントロールする(主導権をとる)手順の中に、相手の軸を崩すというのがあるんじゃないかと思ってますが、先の聖龍先生のテクニックも実はその一つだったんじゃないかという気がします。(勝手な推測ですが!)
とすると、神門に耳ツボしておくと、他者からの洗脳を受けにくくなるメリットがあるかもしれませんね!
*サラっと書いてらっしゃいますが、スプーンが曲がるのは、別に普通なんですよね?
>私が耳ツボを教わったところでは、神門は自律神経を整えるツボというように説明されました。
そうそう、それを書き忘れておりました。神門は自律神経を整えるポイントだと、セミナーで講師から繰り返し説明されました。
重心が崩れるのは自律神経だけが原因じゃないと思いますが、格闘技などをやっている人は、神門への刺激は意味のないものではないと思います。他にも、成績アップとか美容とか、いろいろ効果があるのを売りにしてましたね。
>サラっと書いてらっしゃいますが、スプーンが曲がるのは、別に普通なんですよね?
普通です。