池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

ピアノの音の語尾はどこ?

2006-07-09 | 作曲/鍵盤(打)楽器

ピアノの音は「ポーン」と鳴る。鳴り始めの「ポ」は、あらゆる楽器の中でも最高にはっきりしている。その反面、「…ーン」の「ン」がどこにあるのかは、かなり判りにくい。
事実ピアノの音にそれほど敏感でない学生が、ピアノの演奏で聴き取りテストをすると、タイと休符の区別が出来ない。
それで僕はリズム聴音の際、中音域の442HzのA音ではなく、その1オクターブ下の音でする。低い音の方が減衰音が強く、音の切れ目がはっきりするから(何て親切な…)。

このピアノの特徴は、ピアノ曲をオーケストラに編曲する際、要注意点となる。
まず休符の扱い。多くの場合、ピアノの休符をそのままオケの休符にする訳には行かない。ピアノの休符の殆どは、実際には前の音がペダルで延ばされているからだ。
これに気づかず、楽譜通りオケも休符にしてしまうと、緊張感の途切れた、間の抜けた、まるで落とし穴に落ちたような瞬間が生ずる。
また、休符が無い場合も要注意だ。
1小節で音が終わっているように見えても、ピアノでは実際はペダルでその小節全体の響きが延ばされていることが多い。
1小節目の響きの上に2小節目が重なり、これら2小節分の響きの上にさらに3小節目が重なり…というように。
しかしこういう場合でも、ピアノの楽譜は、各小節で弾かれる音しか書かれず、残響まではいちいち書かない。
だからその効果をオケに移すには、それぞれの残響のパートを新たに作ることになる。

ただし、何でもかんでもペダルの時は音を引き延ばせば良い、というものでもない。
その例がスフォルツァンド。スフォルツァンドの箇所でもペダルを使うが、この場合は音を延ばすためではなく、倍音を増やして音を目立たせるためだから、他の場合と同じように、ビィーッと音を長くしたら、全然ピリッとせず、目立つどころか埋没してしまった。逆に、実際の譜面よりも短めの、スタッカートにしたらしっくり来た。

…極めてピアニスティックに書かれた原曲を、どこまで「極めてオーケストラ的」に編曲出来るか。
そう考えると―Transcription(編曲)―もなかなか創造的な仕事だ。
(絵:月の原画からパソコンで編集作成したArabesque/唐草模様)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿