2003年、楽器編成が指定された宗教的な作品募集に応募するために作曲。
テキストは、聖職者でもあったイギリスの詩人、トマス・トラハーン(Thomas Traherne: 1637or9~1674)の"The Salutation(挨拶)"を選んだ。
ハープ、チューバ、アコーディオンは「天・地・人」の象徴。合唱は最大12声部に分かれる。
≪挨拶≫
これらの小さな手足、
わたしがここに見出したこの眼と手、
私の生命がそこから始まるこの息づく胸、
おまえたちは何処にいたのか、どんな
カーテンの後にこんなに長い間隠れていたのか、
どこに、どんな深淵に、私の作られたばかりの舌は?
物言わぬ私が
何千年も遠い昔のこと
混沌の中で土の下に横たわっていたとき、
どうして私は微笑みや、涙や、
唇や、手や、眼、耳などを認めえたろう?
ようこそお前たち今私の受ける宝よ。
これほど長い間
永遠の昔から無であった私は、
思ってもみなかったこの耳や舌のような喜びを
讃え或いは見ようとは、
耳にとどくこの音を、ものにふれるこの手を、この足を、
このような地上で出合うべき、このような眼と物を。
新しく磨き上げられた喜びよ。
比いない黄金や真珠にもまさるものよ。
そのような尊い宝なのだ、魂の宿りすむ
少年の手足は、
その整った関節や青い静脈は
生命なき世界が含む富よりも遥かに多くのものを蔵する。
私は塵から立上る
無の中から今目覚める、
私の眼に会釈するこの明るい国を
神からの賜物として私は受ける、
地も、海も、光も、高い空も、太陽も星も私のものだ、
若しこれらの価値を知っている私が大切にするなら。
私はこの世界には無縁だったもの、
珍しいものに出会い、初めて栄光をみる、
この美しい世界に宿る珍しい宝は姿を現わす、
私にとってすべては珍しく新しいもの、
然しそれらが今まで無であった私のものになろうとは
それこそとりわけ不思議なこと、しかもそれが成就したのだ。
(『英詩珠玉選』訳:石井正之助)
♫ 試聴(PC.音源)
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