2018年5月10日
前回のアリゾナ、ツーソン留学記で、アメリカの歌手、トム・ウエイツに因んで、もうひと話。
高校教師を退職したポルトガル人の友人、マリアさんが、時折自分が手がけた劇の脚色の話をしてくることがある。先日も話の弾みでわたしたちは日本語授業そっちのけで、30分ほど話が盛り上がったのだが、
「それでね、その場面にTom Waitsの歌を使ったのよ。」との彼女の言に、
「ま、待てぃ!トム・ウエイツってあのトム・ウエイツ?」
トム・ウエイツにあのもこのもないのだが、わたしがこれまでこのアメリカの歌手の名を引きあいに出しても、一人として知っている人に出会った験しがなかったのである。そして彼の歌を紹介すると、決まって聞かされるのが、「なんだ、この声?」という感想である。若いときからトムの声は酒とタバコで潰れたシャガれ声で、近年は歌うというより、語りと言った方が適していよう。
しかし、1970年代も終わりに渡米して、たった半年ではあるがアリゾナにいたわたしにとって、トム・ウエイツはノスタルジックでたまらない。目を閉じれば、ツーソンNorth 2nd Avenue 927番地のドアの向こう、裏庭に面し、遅い午後の光を取り込んだ空間の一隅で、くわえタバコにアンダーウッドタイプライターでパチパチ原稿を打っているハウスメイト、ジョンのシルエットが浮かび上がってくる。
「ワルツィング・マチルダ(Tom Trauberts Blues)」と「ニューオリンズに帰りてぇな」(I wish I wasin New Orleans)」は、トムのシャガれた声が却ってジンと染みていいのである。(↓わたしの持つ1976年版Small Change LPジャケット裏のTom Waits)
tom waits
♪疲れちまってよ。
月のせいじゃねぇんだ、身からでたサビってことよ。
また明日な。おい、フランク、2、3ドルばかり貸してくんないか?
To go waltzing Matilda,waltzing Matilda,
You´ll go a waltzing Matilda with me.
(spacesis訳)
今日は英語で書かれてあるWaltzing Matildaの解釈なのです。
このワルツィング・マチルダがどうも意味がつながらなくて、長い間気になってきたのだ。「2、3ドルばかり貸してくんないか?マチルダとワルツを踊りにいくのによ」と、考えてみたのだが、それだとMatildaの前に前置詞withが入らなければならないではないか。英語の部分2行目のように。
マリアさんと話すことで、久しく忘れていた疑問を思い出したのである。
トム・ウエイツが編曲して引用しているワルツィング・マチルダは、今はどうか知らないが、わたしが若い頃はよく耳にした歌で、オーストラリアの第二の国歌とも言われる。渡米の資金調達のために、わたしは、昔バイトで大阪梅新のアサヒ・ビアハウスの歌姫をしていたことがあるのだが、よくこの歌をリクエストしたのが日本人の奥さんを持つオーストラリア人のマーチンさんだった。時にはステージに彼やアメリカ人の友人ブルースを呼び出して一緒に歌ったりもした。
アサヒ・martimgreen
♪Once a jolly swagman camped by a billabong
昔、陽気な放浪者が池の側にキャンプをはった
Under the shade of a Coolibah tree
ユーカリの木の下で、
And he sang as he watched and waited till his billy boiled
ブリキ缶の湯沸しが煮え立つのを待ちながら歌ったとさ
You'll come a waltzing Matilda with me
お前が俺と一緒にくるのさ、ワルツィング・マチルダよ
「a waltzing Matilda」とはswag(山の放浪者が携帯する今で言う寝袋?)を背負いながら放浪すること、と見つけたり!
Matildaは、紀元前300年頃からエルバ川北方に移住し始めた民族(主にドイツ人を指す)の逞しい女性の代名詞。同時に、移動するワンダーラー(Swagies)達に同行し夜は侘しい彼らを暖める女、妻の意味もあることから、放浪者が携帯する毛布、寝袋等の荷物をMatildaと呼ぶに至ったらしい。(興味のある方はこちらを参照。英文です)
そう言えば、当時わたしが勤めていたオフィスの本社のアメリカ人、ボブ君が、「この歌は英語を話す僕らもなんだか意味がよく分からない不思議な歌なんだ。」と言っていたのを思い出した。
オーストラリアの「Matilda」の意味は分かったが、それでもトム・ウエイツの「2、3ドルばかり貸してくんないか?To go waltzingMatilda=旅に出るのによ」では、まだしっくり来ない。昔のこととは言え、2、3ドルでは旅には出られまい。
ねぇ、トム。あんたの歌ってあんたの心の中のように、分からないのかね?と思わずトムの口調で呟いてしまう本日のspacesisでありました。
ちなみにワルツィング・マチルダは、かつてわたしがチャット・ルームでお開きの合図として流してたものです。本日の色々な検索で、トムもこの曲をライブのトリに使っていたようです^^
また、日本のテレビドラマ「不毛地帯」のエンディングに流されていたと聞きます。
一編聴いてみてもいいかなと思われる方は、下記でどぞ。
本日もお付き合いいただき、ありがとうございます
前回のアリゾナ、ツーソン留学記で、アメリカの歌手、トム・ウエイツに因んで、もうひと話。
高校教師を退職したポルトガル人の友人、マリアさんが、時折自分が手がけた劇の脚色の話をしてくることがある。先日も話の弾みでわたしたちは日本語授業そっちのけで、30分ほど話が盛り上がったのだが、
「それでね、その場面にTom Waitsの歌を使ったのよ。」との彼女の言に、
「ま、待てぃ!トム・ウエイツってあのトム・ウエイツ?」
トム・ウエイツにあのもこのもないのだが、わたしがこれまでこのアメリカの歌手の名を引きあいに出しても、一人として知っている人に出会った験しがなかったのである。そして彼の歌を紹介すると、決まって聞かされるのが、「なんだ、この声?」という感想である。若いときからトムの声は酒とタバコで潰れたシャガれ声で、近年は歌うというより、語りと言った方が適していよう。
しかし、1970年代も終わりに渡米して、たった半年ではあるがアリゾナにいたわたしにとって、トム・ウエイツはノスタルジックでたまらない。目を閉じれば、ツーソンNorth 2nd Avenue 927番地のドアの向こう、裏庭に面し、遅い午後の光を取り込んだ空間の一隅で、くわえタバコにアンダーウッドタイプライターでパチパチ原稿を打っているハウスメイト、ジョンのシルエットが浮かび上がってくる。
「ワルツィング・マチルダ(Tom Trauberts Blues)」と「ニューオリンズに帰りてぇな」(I wish I wasin New Orleans)」は、トムのシャガれた声が却ってジンと染みていいのである。(↓わたしの持つ1976年版Small Change LPジャケット裏のTom Waits)
tom waits
♪疲れちまってよ。
月のせいじゃねぇんだ、身からでたサビってことよ。
また明日な。おい、フランク、2、3ドルばかり貸してくんないか?
To go waltzing Matilda,waltzing Matilda,
You´ll go a waltzing Matilda with me.
(spacesis訳)
今日は英語で書かれてあるWaltzing Matildaの解釈なのです。
このワルツィング・マチルダがどうも意味がつながらなくて、長い間気になってきたのだ。「2、3ドルばかり貸してくんないか?マチルダとワルツを踊りにいくのによ」と、考えてみたのだが、それだとMatildaの前に前置詞withが入らなければならないではないか。英語の部分2行目のように。
マリアさんと話すことで、久しく忘れていた疑問を思い出したのである。
トム・ウエイツが編曲して引用しているワルツィング・マチルダは、今はどうか知らないが、わたしが若い頃はよく耳にした歌で、オーストラリアの第二の国歌とも言われる。渡米の資金調達のために、わたしは、昔バイトで大阪梅新のアサヒ・ビアハウスの歌姫をしていたことがあるのだが、よくこの歌をリクエストしたのが日本人の奥さんを持つオーストラリア人のマーチンさんだった。時にはステージに彼やアメリカ人の友人ブルースを呼び出して一緒に歌ったりもした。
アサヒ・martimgreen
♪Once a jolly swagman camped by a billabong
昔、陽気な放浪者が池の側にキャンプをはった
Under the shade of a Coolibah tree
ユーカリの木の下で、
And he sang as he watched and waited till his billy boiled
ブリキ缶の湯沸しが煮え立つのを待ちながら歌ったとさ
You'll come a waltzing Matilda with me
お前が俺と一緒にくるのさ、ワルツィング・マチルダよ
「a waltzing Matilda」とはswag(山の放浪者が携帯する今で言う寝袋?)を背負いながら放浪すること、と見つけたり!
Matildaは、紀元前300年頃からエルバ川北方に移住し始めた民族(主にドイツ人を指す)の逞しい女性の代名詞。同時に、移動するワンダーラー(Swagies)達に同行し夜は侘しい彼らを暖める女、妻の意味もあることから、放浪者が携帯する毛布、寝袋等の荷物をMatildaと呼ぶに至ったらしい。(興味のある方はこちらを参照。英文です)
そう言えば、当時わたしが勤めていたオフィスの本社のアメリカ人、ボブ君が、「この歌は英語を話す僕らもなんだか意味がよく分からない不思議な歌なんだ。」と言っていたのを思い出した。
オーストラリアの「Matilda」の意味は分かったが、それでもトム・ウエイツの「2、3ドルばかり貸してくんないか?To go waltzingMatilda=旅に出るのによ」では、まだしっくり来ない。昔のこととは言え、2、3ドルでは旅には出られまい。
ねぇ、トム。あんたの歌ってあんたの心の中のように、分からないのかね?と思わずトムの口調で呟いてしまう本日のspacesisでありました。
ちなみにワルツィング・マチルダは、かつてわたしがチャット・ルームでお開きの合図として流してたものです。本日の色々な検索で、トムもこの曲をライブのトリに使っていたようです^^
また、日本のテレビドラマ「不毛地帯」のエンディングに流されていたと聞きます。
一編聴いてみてもいいかなと思われる方は、下記でどぞ。
本日もお付き合いいただき、ありがとうございます
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