スターアニスの 『大和路 里の光彩』

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『飛鳥味噌』(法論味噌)復活の嶋田味噌店を訪ねて ⑦

2007-10-11 22:49:29 | 奈良県のモノづくり探訪記

嶋田味噌・麹製造元 19代当主 嶋田 稔さん。

1週間前に立ち寄った時、「午後から春日大社の権宮司ご夫妻が味噌作りに来られるので・・・その準備で・・」という事だった。

そして今日、あらためて奈良県田原本町の味噌・麹の醸造元「嶋田味噌店」第十九代当主の嶋田さんを訪ねた。

創業250年の老舗の店構えは、看板もなく敷地に蔵が建つだけで、ひとつの民家として見過ごしてしまうほどの佇まいだ。
屋号の看板の文字も薄くなっており「これは新しく掛け直さないといけませんなぁ。」と写真を撮る私の横で嶋田さん。

厚かましくも部屋に上がらせて頂き、茶菓子とお茶をご馳走になりながら、いろいろお尋ねした。

嶋田家のルーツは江戸時代初期までさかのぼるという。
八代目の「茜屋八兵衛さん」が醤油・味噌の醸造を始められ、その後代々「八兵衛」を襲名して「茜八(あかはち)」を屋号として親しまれてきた。

現在の当主が高校・大学生の頃、この店を継ぐのが嫌だったため、後継者が無いと諦めた18代目の父親は、初代から続く「麹室(こうじむろ)」だけを残して、醤油樽などの諸設備を失くしたという。

18代目の期待に背き、会社勤めとして大手カメラメーカー「ペンタックス」へ。
そして重役を定年退職されてから、やっと家業を継ぐことに目覚めたとか。

昔は、この大和地方に味噌・醤油に必要な「麹」を作るところは、80軒もあったが、今では3軒ほどしか残っていないという。

この嶋田さん、昨年暮れに江戸時代から途絶えていた「法論味噌(ほろみそ)」(飛鳥味噌とも言う)なる古代味噌を復活させ、奈良・春日大社に奉納されたのだ。

法論味噌とは、室町時代に南都の寺院(東大寺・興福寺など)において僧侶が法論を行う際、睡魔を払うために味噌を用いたことから名づけられたもの。
味噌を焼き、胡麻・胡桃・麻の実・山椒などを煮込み、これを天日に乾し、最後にホウラクで煎って作るものだ。
当時は、奈良の名物としてもてはやされていたが、製造に手間がかかるため、500年以上もの長い間絶えていたのです。この間、白味噌や赤味噌で代用されていたとか。

春日大社の岡本・権宮司の力添えもあり、これまでの代用品に変え、今年の「歳旦祭(元旦未明に行われる行事)」に「法論味噌」を奉納されたのだ。
そのときの苦労は、「大和志」などの古文献などを参考に昔ながらの製法で造り上げられたのだ。
これらの模様は、当時の新聞や雑誌で紹介され、街起こしのひとつとして注目されているのです。

味噌は1400年前、中国から朝鮮を経て日本に来た伝統ある食品で、日本人の知恵で今日の味噌が出来たものです。
今日では、味噌は買うのが当たり前となっている。

嶋田さんは、着色料など一切使わず無添加の本物志向の味噌を自分の手で作って貰おうと、朝日カルチャーセンターの講師として「手作り味噌教室」も開いておられる。
9月は5回も開催したとか。商売度外視の心意気だ。数名の希望者が揃えば応じるという。毎回好評で、年々開催数が増えているという。

米麹、国産大豆、赤穂の塩で「茜八味噌」を作るのだ。まさに「手前みそ」作りだ。
市販の味噌との違いは・・・と聞くと、
「麹菌は日本にしかないもの。中国、アメリカには無い。日本の気候でしか麹菌は作れないのです。」
「手作り味噌を、ビニール袋に入れておくと醗酵が進み膨れてしまうのです。でも市販品は膨れないのです。これが麹菌の有無なのです。」

味噌の風味は、「麹」の出来具合で決まるという。
そのため麹作りには、江戸時代から使われているレンガ造りの「麹室(こうじむろ)」で、約2日間、40度の温度と70~80%の湿度を保ちながら醗酵させるのだ。
何度も混ぜながら徹夜が続く作業となる。

麹蓋の木枠に「茜八店」や「大正○年」の焼印が見える。昔のままなのだ。ここにも美味しい酵母菌が住み着いているのだろう。

『元気で活発な微生物が住み着いている味噌でなければ「本物の味噌」とは言えません。味噌は生き物なんですよ。』と、天然醸造味噌の素晴らしさを熱く語っておられた。

今度、「手前みそ」づくりに参加したくなった。


創業250年の老舗の店構えは、看板もなく民家のようで・・見過ごしてしまうほどの佇まいだ。

江戸時代から使われているレンガ造りの「麹室(こうじむろ)」。

麹蓋の木枠に「茜八店」や「大正○年」の焼印が見える。


朝日カルチャーセンターの講師として「手作り味噌教室」も開いておられる。年々、好評で、数名が集まれば開いてもらえるという。商売度外視なのだ。


麹味噌(粗・粒なし)、白味噌、減塩味噌、麦味噌、モンゴル湖塩味味噌などの天然醸造味噌だ。


嶋田味噌・麹 醸造元
住所:奈良県田原本町505
電話・fax:0744-32-2114



5 コメント

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Unknown (のび太)
2007-10-12 05:53:33
お早うございます。
味噌というのは、日本古来のものとばかり思ってましたが、大陸から日本に来た食品とは知りませんでした。 終戦直後の物資がなかった頃、自家製の味噌を我家でも作っていた記憶がありますが、今も田舎の農家では作っているのかと思ったりしてます。法論味噌の製法等につきましては、興味深くジックリと読ませていただきました・・・。
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Unknown (みやちゃん)
2007-10-12 09:03:09
おはようございます。
このお味噌はどこへ行けば購入できるのでしょうか?お醤油同様、お味噌の味でお料理の味が変わります。子供のころは母、祖母が手作りしておりました。母は時たま近所の人と作っているようです。お味噌汁の底にだまだま?が残るのが普通と思っていた私で、市販のお味噌を使って不思議に思ったのを覚えています。お味噌作りを体験したいと思いつつなかなか実現できないでいます。あ~昔のお味噌汁飲みたーい!
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Unknown (Mitsuko)
2007-10-12 21:34:20
こんばんは。お久しぶりです・・・
味噌作り是非参加してください。
私も5年前にJA主催の味噌作り教室参加し、
美味しい味噌を作りました。
以来来毎年、作っています。
自分で作ると・・・添加物も入らず、安心して食べることができます。 是非チャレンジしてください。
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Unknown (ヒキノ)
2007-10-13 00:01:39
実家が醤油・味噌の醸造業でした。醤油は戦中に廃業しましたが、麹と味噌はつい最近までやってました。麹ムロは板張りで周囲、天井を三尺の厚みで籾殻の壁になってました。麹箱に文政の文字が見えましたから古いものと思いました。今はすべてありません。懐かしい話を聞かせてもらいました。
レンガは明治になって補修したものと思います。湿度に強く、温度調節で火を使いますから火災にも強かったからと思います。
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Unknown (なりちゃんじいじ)
2007-10-13 16:37:13
こんにちは
おいしい味噌食べたいですネ、今のスーパーの味噌は麹は使ってないんですか。そういえば昔は麹屋さんってありました。米持って行って麹と交換してもらいました。味噌もカメ持って買いに行かされました。
味噌つくり講座もあるんですか?
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