その彼は私より20才以上も若く息子と差のない若者でした。10年くらい前のある日、1人でコーヒーを飲みに来て、ポツリポツリと話し始めました。
「この辺りはどうですか?」
質問の意図がわからず、どう答えたもんかと首をひねると
「この先に空いてる店舗あるんすけど、あそこで店やろうかなと思ってて」
なるほど、商売について聞いているのだなとわかり
「この辺りは新規のお店には厳しいらしいけど、居抜きでやるなら良いかも知れないですねー」と背中を押すような返事をしました。その後、ややあってめでたく開店。色々悩みながらもしっかり常連さんを集めて、近所にも周知されコロナを乗り切っていました。もちろん、うちの店も人を心配するような余裕はなかったのですが、なんやかんや一緒にイベントを企画したり、釣ったお魚を使ってくれたり仲良くさせてもらっていました。その彼が突然の不幸に見舞われ、急逝したのはあまりにショックで、未だに信じられません。海釣りに連れて行って欲しいと言ってた彼、またある時は私が調理師免許を取る際に気軽に身分証明に応じてくれたこともありました。思い出すと恥ずかしそうにはにかむ表情が浮かび、切なくて仕方ありません。互いの店でお客さんとして呑むことはあったけど一緒に乾杯することがなかったのが悔やまれます。いつかまた会う時は、美味しい酒を呑もうね。
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