エステティシャンの皆様へ

連載シナリオ『黒電話』

１０　正樹の家
　　正樹、受話器を耳に当て電話中
　　イラついた表情で
正樹「・・・だから、サーフィン上手く成り
　たいから、古島(ふるじま)に行くって、
　何回言わすんだよ、まったくもう」
好子の声「どうせ、ナンパするくせに」
正樹「ナンパなんかしねえよ」
好子の声「うそ、古島はＳＥＸアイランドだ
　もん」
正樹「最初は、おまえが古島に誘ったんだぜ」
好子の声「二人ならナンパの心配ないもん」
正樹「それじゃ好子もバイトに来ればいいじ
　ゃん」
好子の声「お父さんが許してくれないの」
正樹「それじゃ、しょうがないじゃん」
好子の声「古島にバイト行くなら、別れる」
　　正樹、少しビックリして、言葉に詰まる
好子の声「・・・・もしもし、別れてもいい
　の？」
正樹「それは、マズイよ」
好子の声「それなら、今のファミレスのバイ
　ト続けながら、コッチで海行けばいいじゃ
　ないの、私も一緒に行けるし」
正樹「だから、湘南じゃいい波来ないし、
　上手成れないだろ、それにガス代だって掛
　かるし」
好子の声「ガス代は私も出すから」
正樹「ガス代は関係ないよ、無理だよ」
好子の声「何が無理なのよ、分かれたいの？」
　　正樹、カチンと来た表情で、
正樹「おう、別れればいいじゃん」
好子の声「なによ、私はコッチでバイトすれ
　ばいいって言ってるだけでしょ」
正樹「だから、さっきから何度も言ってるだ
　ろ、サーフィン上手くなりたいんだよ」
好子の声「私とサーフィンどっちが大事なの」
正樹「サ・・」
　　正樹、言葉を呑込む
好子の声「今、サーフィンと言おうとしたね、
　もいい、別れる」
正樹「違うよ、たのむよ、古島に行かせてく
　れよ」
好子の声「イヤ、行っちゃダメ、別れる」
　　正樹、ウンザリした表情で
正樹「判ったよ、別れてもいいから俺、
　古島に行くよ」
好子の声「うそでしょ、ねえ、ねえ、
　もう一度考えよ・・・ねえ」
正樹「もういいよ」
好子の声「何よ！・・・ねえ、ねえ」
　　正樹、受話器を置いて電話を切る。
　　途端に、呼び出し音が鳴る。
　　正樹、受話器を取る
正樹「だから、何度も言ってるだろ」
男性の声(同時に)「山本さん当たりました
　よ！」
正樹「すみませ、なんですか？」
男性の声「山本さん当たりましたよ、
　全国限定１００名様に限り、海外旅行や
　スポーツジムを格安にご利用出来る、
　特別会員権が山本様に当選しました」
　　正樹、ウンザリした表情で、
正樹「タダ(無料)でくれるの？」
男性の声「無料ではありませんが、この会員
　権があれば、無料招待券獲得のチャンスも
　ございます・・・」
正樹「オタクもマルチ商法、ウチは必要無い
　です」
　　正樹、受話器を叩き着ける様に置く。