逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

10000ミリシーベルトの意味と再臨界の可能性

2011年08月03日 | 放射能と情報操作

『福島県内で震度5強』

31日午前3時53分ごろ、福島県などで東日本大震災の余震と考えられる強い地震があり同県楢葉町、川内村で震度5強を観測したほか、東北地方を中心に北海道-近畿の一部にかけて5弱~1の揺れを感じた。
気象庁によると震源地は福島県沖で、震源の深さは約57キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6・5と推定される。
東京電力は31日、福島県沖を震源とする同日未明の地震の影響とみられる不具合が福島第2原発で起きたと発表した。
福島第1原発では、地震による異常は確認されなかったが、2件の水漏れが発生したと発表している。

『測定限界越えの毎時1万ミリシーベルト超の放射線量』

3~4千ミリシーベルトが致死量であるが、震度5強の地震の翌日8月1日の午後に、東京電力福島第一原子力発電所1号機と2号機の原子炉建屋の側の屋外(排気搭付近)で、これまでで最も高い1時間当たり1万ミリシーベルトを超える放射線量が計測された。
翌2日1号機の原子炉建屋で米国製ロボット「パックボット」が測定限界の毎時5000ミリシーベルト以上の線量を記録した。
(何れも計測器の限界を超えており、毎時10000ミリシーベルト以上の意味であり、その何倍の数値の可能性も十分ある)
これまで計測された最も高い放射線量は、福島第一原発1号機の原子炉建屋地下の汚染水付近の1時間当たり4000ミリシーベルトであった。
今回はそれを2倍以上も上回っている。
しかも数値が高くて当たり前の原子炉建屋内ではなくて、低い筈の屋外であるから問題点は深刻である。
東京電力は、すぐさま付近を立ち入り禁止にした。
この付近で今のところ復旧作業を行う予定はなく、1号機を覆うカバーの設置も遠隔作業で行うため、影響はないと説明。
東電は、あいも変らず深刻過ぎる事態を何とか過小評価することに躍起となっている模様である。

『5ヶ月も前のベントが原因とは!』

東京電力は1万ミリシーベルトの汚染原因を、『今回、極めて高い放射線量が見つかった配管は、地震の翌日の3月12日に、1号機でベントと呼ばれる外部に放射性物質を放出した際に使用したもので、その際に高濃度の放射性物質が付着したのではないかとみて調べています。』と語る。
5ヶ月前の『ベント』のせいにするとは、無責任にも程があり呆れ果てて言葉も無い。
東電が言うように『5ヶ月前のベント』が原因であれば今までに大勢の作業員が1万ミリシーベルトをうっかり浴びてしまい大量死して大問題に成っていないと辻褄が合わない。
確実に死ぬレベルの放射線が観測されたのは、今まで誰も入らなかった原子炉建屋ではなくて、誰でもが通行する野外の排気塔付近なのです。
そもそもベントは大量発生した水素ガスや放射性希ガス類など『気体』を格納容器から排出することだが、1万シーベルトの数値は通常『使用済み核燃料本体からしか考えられ無い』と、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は驚きの声を上げている。
東電は、何としても原子炉本体の致命的な損傷を『無かったことにする』心算のようで、原発村の無責任体質は骨がらみであり救いようが無い。
勿論(普通の常識や注意力があれば誰でもが気が付く)この汚染原因と地震の関連性や時間的な近さを報じる、日本のマスコミは何処にもない。
この事実は、原発安全神話の政官産学報、既得権益の『鉄の五角形』は、未曾有の福島第一原発の大事故後でも、未だ少しも損傷せず健在であることが証明されたのですから恐ろしい。

『排気塔付近での閃光とテルルの検出』

可能性としては『核燃料の破片がその辺に転がっていた』というとんでもない場合も無いこともないが、普通に今度の1万ミリシーベルト超のあり得ない数値の原因を推測すれば再臨界の可能性が真っ先に頭に浮かぶだろう。
31日未明の地震直後に福島第一原発の24時間ライブカメラに翌日8月1日に10000ミリシーベルト超の驚きの数値を観測した排気塔付近で閃光らしきものが写っている。
再臨界が継続している可能性は高いが、その場合には崩壊熱よりも量的にも質的にも時間的にも格段に違いがあり、溶解している核燃料が自然に冷えて収束する見通しが益々遠くになっていく。
この時期に枝野幹事長が20キロ圏の除染作業の開始を示唆するが、いったい本当の福島第一の現実が見えているのだろうか。
実に不思議だ。
福島原発で再臨界した可能性があると、IAEA原子力安全局が当初から指摘しているが、仮に再臨界が起きても、圧力容器や格納容器のような密閉された丈夫な構造で無い限り、核爆発のような爆発が無いことは、東海村JCO臨界事故で証明されている。
東海村の臨界事故では上部に溶液投入口が開口していた為に、幸いにも圧力が逃げて爆発には至っていない。
国会で自民党などが散々大騒ぎしてベントや海水注入など、瑣末な話は如何でも良い。

『説明とは全く違う原子力安全機構のシュミレーション』

発生した水素ガスなどで格納容器の耐圧性能を超えるベントの時期とは、『燃料棒の皮膜のジルコニウムと水が化学反応して水素が発生する』との東電や政府やマスコミの説明とは大違いで、福島第一原発で実際に起きている事実はもっと深刻である。
商産業省の独立行政法人原子力安全基盤機構が、沸騰水型原子炉(BWR)マークⅠ型(福島第一原発1~3号機)の全電源喪失・全冷却水喪失という過酷事故を想定した、原子力防災専門官向け『炉心溶融シミュレーション』によれば、炉心溶融後二十数時間後の原子炉の下に落下した溶融核燃料がコンクリートを溶かしている状態で水素や希ガス類が大発生して格納容器の中に溜る最悪の状態である。
6月3日、原子力安全・保安院は1号機が水素爆発する3月12日の朝から午前にかけて、東電福島第一原発から約7㎞も離れた浪江町などで100ベクレル/m3を超えるテルル132が検出されていたと発表している。
ベント実施の前の時点で保安院は、ヨウ素132の親核種で原子炉内部にしかないテルル132に検出されていたことを発表しているが、これは原子力安全基盤機構のシュミレーションよりももっと早期に原子炉が破壊されメルトスルーで汚染物質が漏洩していたことを示している。
東京電力は6月29日福島第一原子力発電所1号機の取水口付近の海水から、テルル129mを初めて検出したと発表。 半減期が33日と短い放射性物質が事故後4か月近く経過して新しい核種が検出された意味は大きい。
福島第一原発の原子炉の地下のコンクリート部分かその下の岩盤部分では、溶融した核燃料による再臨界が非連続的にぶすぶすと間欠泉のように継続していると見るのが正しいだろう。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 8月2日のXデー(デフォル... | トップ | 米国ソブリン危機(Xデー)... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
恐ろしいです・・・ (えちごっぺ)
2011-08-03 22:49:33
いつも、読ませていただいております。
また、TBありがとうございました。

それにしても、あとから大変な情報をさらりと出すあたりが、許せません。
きっと、この毎時1万ミリシーベルト超の放射線量も以前より、把握していたと思われます。
敷地内の地表が地割れを起こし、黒っぽい蒸気が噴出しているという情報も取り沙汰されていましたが、真偽のほどは不明です。

もはや、チェルノブイリより深刻な状況だというのに、多くの人は事故以前の状況が今後も続くかのように生活していますが、小出裕章助教が言われたように「3.11を境に日本は変わってしまった」ことを認識して、具体的な方策を進めなければと思いますが、もはや打つ手はないのかもしれません。
震災後の統一地方選でも、旧態依然の結果が多く、この国にはもはや自浄作用は望めないのかと暗澹たる気持ちです・・・
返信する
やっと5ヶ月も経ってから (宗純)
2011-08-04 16:35:13
えちごっぺさん、コメント有難うございます。

福島第一ですが今でも3000人近くも毎日毎日働いているのですから、原発構内の目立つ場所に1万ミリシーベルトが5ヶ月間も出続けていた可能性は低いと思われます。
測定した前日の震度5強の地震の影響が大きいでしょう。
これだけの大きい地震で何の影響も無いとは思われません。
民主党ですが、やっと重い腰を上げたようです。
福島第一原子力発電所の事故の対応などを考える民主党のプロジェクトチームは3日、原発付近の土地を場合によっては国有化するなどの提言をまとめた。
と報道されているが遅すぎるでしょう。
提言では、福島第一原発の原子炉内の核燃料を安全な場所に移すまでには膨大な時間がかかり、その間、近隣に人の居住を認めることはできないとしているが、そんなことは原子力事故では当たり前です。
放射能の怖いところは人類には未だ無毒化する技術が全く無いとであり、完璧にもとの状態なら10万年ぐらいは必要でしょう。
25年前のチェルノブイリでも全く帰還出来ないでいるのです。
長期間人が住めない場合は、土地を国が買い取って国有化する。
住民には移住を促し、十分な支援策を講ずる等、ですが、そんなことは3月の避難した時点で出すべき対策ですよ。
被災民に対して直ぐにでも帰れるかの様な安易すぎる気休めを延々と語っていたマスコミや政府の対応は腹立たしい。
これでは生活の再建が出来ない。
5ヶ月も経ってから出すとは・・・呆れ果てる遅さです。
安全神話に首まで今でも浸かったままなのです。
原則的危険極まりなく暴走した時には誰にも止められないのですから、そもそも原発とは安全に稼動している時点で、その様な全員の疎開対策を立てていても少しも早くないのですよ。
我が日本国ですが、小さい小さいと言われているがそれはアメリカとカ中国とかと比べるからであり、実は東西では2時間以上も時差がある大きな国なのですね。
農地だって不便だからと放棄された場所は全耕作地の3~4割もあるのですよ。
特に大東島とか与那国島など辺境の離島ではかっては万を数えていた島の人口が今では10分の1程度まで減ってしまっている。
同じことは北海道などにも言えてJRのローカル線は廃止され、交通の便利の悪い場所の人口は最盛期の何分の一に減っているし、中国地方や中部北陸などの僻地の村は蓮如上人のゆかりの土地であるとか長い歴史や伝統があるにも係わらず廃村になっている場所は数多くあるのですね。
原因は全て交通の便の悪さです。
ですから例えば沖縄の離島などはフェリーの料金の無料化などをすれば、素晴らしい自然に恵まれているのですから幾らでも住みたいと思う人はでてくるのですが、現在は逆で、都会にでるまでに莫大な時間とお金を浪費するので誰も住みたがらないのですね。
そういえば3月の事故直後にロシアのメドベージェフ大統領がシベリアや極東地域に日本人の集団疎開を歓迎するとの声明を出していましたよ。
返信する

コメントを投稿

放射能と情報操作」カテゴリの最新記事