「日本の都市公園100選」に認定されている中島公園は、札幌市のほぼ中心部にありながら、水と緑豊かな憩いの場として親しまれている公園だ。
広大な敷地の中に、歴史的建造物で国の重要文化財に指定されている、美しい“豊平館”や“八窓庵”があり、日本庭園や“菖蒲池”、コンサートホール“KITARA”などもある。
子供の頃からお祭りの縁日の露店や見世物小屋が広大な敷地にたくさん並び、父に様々なおねだりをしては散財させた場所でもある。
ここ2年ほどはコロナ感染防止で「札幌まつり(北海道神宮例祭)」の関連行事は中止となっている。
中島公園を囲む外側の歩道を歩いていると、北海道立文学館が見えてきた。
現在開催中の催し物が大きく看板に記載されている。見てみると、「手島圭三郎の40年」とあった。
手島圭三郎、聞いた事ある名前だ。副題に「彫り続けた北の自然ー絵本画家」とあり、ピンときた。シマフクロウの版画絵本で有名な方だ。
なんと有り難いことに観覧料無料とある。閉館が午後5時。もう閉まっている。休みの日に来ようと心に決め、幌平橋駅から地下鉄に乗りその日は帰宅した。
日曜日、午後から自転車で北海道立文学館へ向かうことにした。
観覧料無料だから、交通費も無料にしようと、また、しみったれた考えを起こす。
出発前に近所のホームセンターに寄って、空気入れを借りて、最近空気が抜け気味で気になっていた自転車のタイヤを、空気で満タンにする。
お店の人にご挨拶することなく空気入れをお借りしたけど、また自転車の事でお世話になる事もあるし…と、お店を出た。
天気は良いし、準備万端。スタートすると、空気満タンのタイヤは、気持ち良いほど転がり進む。20分ほどで目的地へ到着。
マスクは自宅から着用。消毒と検温を済ませ、入館。緊急事態宣言中ということもあって、先客は私と同年代と思われる女性二人のみ。
彼女らの「素敵・かわいい・すごい」のかしましい声が、最初気になったが、じっくり観て回っているうちに、いなくなり、貸し切り状態に。
静かな空間の中、手島圭三郎氏の絵本、原画、版画、版木などをじっくり観て回る。
版画の元になる原画の数々は、もうそれだけで美しい絵画作品だ。
作品は、ほぼ北の自然の中の動物たち。シマフクロウ、キタキツネ、リス、クマゲラなどなど。版木に丁寧に彫り出される様々な木々。だんだん森の中にいるような気分になってくる。
北海道紋別市出身の氏は、中学校の美術の教師をしていたが、1981年「しまふくろうのみずうみ」で木版画による絵本で絵本作家としてデビューした。デビュー作で「絵本にっぽん賞」を受賞した。
現在手島氏は江別市にお住まいで、近くの野幌森林公園に出向いては、日々自然の観察を欠かさずに、作品に生かされていらっしゃる。
86歳の今年の春、40作目の「きたきつねとはるのいのち」を刊行した。衰えることの無い創作意欲が素晴らしい。
また、この絵本の表紙絵の版木は、4パターンも彫っている。手島氏の妥協を許さない作品へのこだわりと情熱が感じられる。
会場では、アイヌの人々が語り伝えてきた話を絵本にした「イソポカムイ」と「ふぶきのとり」の版画とお話が展示されている。
白うさぎが主役の「イソポカムイ」のお話は、人の一生に重ね、示唆に富んだ物語だ。また、「ふぶきのとり」では、木々に降り積もった雪から現れる動物たちの白いシルエットが、幻想的で美しかった。どの作品も、森と生き物の息吹を感じる、生命力溢れるものだ。
その他にも、作品の構想を書いた直筆文書や書物の装丁や挿絵など、氏がこれまで取り組んだ物の展示などもあり、大変見応えのある内容だった。
シマフクロウの蔵書票(エクスリブリス)が、素敵だったなあ。
絵本は英語圏をはじめ、スペイン語、中国語などに翻訳され、世界の子供達にも紹介されている。
北海道の大自然の素晴らしさが、木彫りの版画で表現された素晴らしい絵本作品の数々。スッキリと彫られ、浮かび上がる動物たち。鬱蒼とした森。
森の中の空気を胸いっぱいに吸い込んだ様な、清々しい気分で会場を後にした。
ほぼ、一時間近く鑑賞していた。
来て良かった。
目的を果たしたら、すぐ帰宅。コロナだからな。
直ぐに自転車に乗って家を目指した。
♪行きはよいよい帰りは…、来る時は下り坂だったが、帰りは上り坂。自転車のギアを軽い方へチェンジ。
走りながら、ちょっとタイヤの空気感が満タンに感じられない事に気付いた。帰途の路面は豊平川沿いの道路の歩道、石畳なので結構ガタガタ衝撃がある。ほぼ、家に近づいた時に「これはおかしいぞ」と思い、降りて前輪を確認するとタイヤがつぶれている。パンクだー。直ぐにホームセンターへ方向転換。修理に出す。
基本料金1000円。穴が2箇所だと、追加300円。応急処置が出来ない状態だとチューブまるごと交換。最低のチューブで約700円。修理は明日の1時までかかるとの事。いくらかかるのかなー。
今日のマイイベントをタダで終わらせるつもりだったのにー、残念。
ホームセンターにはいつかお世話になると、そう思って出発前に空気入れをお借りしたけど、今日だったとはなー。
それでも、行って良かった。
コロナで「不要不急は出かけない」を守って、鬱々としていたから。
今日は、会場の絵本の中のバーチャル大自然で、かなり元気になった。
近隣にお住まいで興味のある方へ
10月17日(日曜日)まで、開催中。
(休館日:月曜日)
開館閉館時間はコロナの関係で変更する場合もあると思うので、事前確認を。