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ポジティブな私 ポジ人

家族の風景

連日30度超えの気温に何をする気も失せてしまう。
今日も荷物の発送へコンビニに行かなければならないのに、もう少し日が傾いてからとダラダラと過ごしていた。そして重い腰を上げたのが夕方の5時を回った頃だった。

時刻は夕方だが、まだ西日はギラギラと強く、日傘を差して出かけた。

少し歩くと、前方から家族と思われる4人が歩いてくるところに遭遇した。
左からお母さん、その隣に2~3歳の女の子、更に隣に小学2~3年生くらいの女の子。3人は並んで手をつないでいた。その後ろに、お父さんらしき人がいた。

私の目は一番小さな女の子に釘付けになった。目がクリクリして、とっても愛らしい女の子だったのだ。

女の子が舌足らずの可愛らしい声で言った。

「ねね、パパと手ちゅないで」

ねねとはお姉ちゃんの事らしかった。

「やだ!」
お姉ちゃんがそう言うのと、私がその家族とすれ違ったのとほぼ同時だった。

「ねね、パパと手ちゅないでって!」

私の背後で、小さな女の子が再び、ちょっと怒り気味の声で言っているのが聞こえた。
その後、お姉ちゃんが何と答えたのか聞こえないまま、家族から距離が離れた。

あの小さな女の子は小さいながらも、パパが手をつながずに一人でいることを気遣ったのだろうか。或いは家族全員が手をつなぐことで、一つになりたかったのだろうか。

すれ違いざまの、家族の何気ない会話だった。
お姉ちゃんがパパと手をつなぐのを拒否した。でも、あのおチビちゃんは、めげずにお姉ちゃんにもう一度希望を伝えた。怒った声で。ただそれだけの事なのだが、何だかとても幸福な気分になった。きっと仲の良い幸せな家族なんだろうなと感じられた。

お姉ちゃんはパパと手をつなぐことを拒んだけど、まだ小学校の低学年だ。深刻なことでは無さそうだなと思った。
ティーンだとそうはいかない。

それで思い出した。
つい数日前、テレビで紹介されていた相鉄東急直通線開通記念のWebCM。

オダギリジョーさん演じるお父さんと幼い女の子が電車に乗っている。
そろそろ降りようかという所で、父親が娘の乱れた襟元をなおしてあげる。
向き合う親子からカメラが遠ざかり始めると、電車の中に成長していく娘と父親とのやり取りの一瞬一瞬が、次々と現れる。季節感も半袖、長袖、マフラー等で表現されている。長い電車の中に、成長する娘とやや老けていく父親の”時の経過“が長い行列となってつながって行く。

四季が流れ、お父さんには白髪がチラホラ見え始める。成長に伴い、ティーンの娘の反応が冷ややかになったり、父親が手を伸ばすと避ける身振りなど、数秒のやり取りの中に、親子の関係性の微妙な変化も表現されている。父と娘あるあるな情景。

最初と最後のシーンはオダギリジョーさんが演じていた。中間のお父さん達は、似た格好をした別々の俳優さん達が並んで撮影した様だ。

最後は成長した娘と父親が良い関係性を築いている様子で終わる。大変秀逸なCMだ。

CMの背景に流れる音楽は、ハナレグミの「家族の風景」。何だか映像と相まって感動し、直ぐにCDを購入した。そのCDが届いて、「家族の風景」を聞いたのが昨日だった。

そして今日、先の“家族の風景”とすれ違ったのだった。

あのお姉ちゃんはパパと手をつないだだろうか?

そんな事を考えながら、しばらく幸せな気分に浸リながらコンビニへと向かった。





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