失礼ながら、彼が生きているのか死んでいるのか、知らずに過ごしていたが、つい最近テレビでほとんど昔と変わらない姿を見かけた。
「あれっ、大村崑生きてたんだ」と思った。
ごく最近の映像だったのだが、過去の映像かと一瞬疑ったほどだ。それほど、昔のイメージと変わりが無かった。
私にとっては大昔の方なので、信じられずにネットで検索してみると、生年月日は昭和6年11月1日とある。西暦でいうと1931年…現在91歳。
「ええーっ、91歳!」
ビックリ仰天、たまげた!あらゆる、驚きの表現を持ってしても足りないくらい驚いた。
だって、“あのCM”どおり、「元気ハツラツ!」としていて、とても90歳を超えているとは思えなかったからだ。
2021年に「崑ちゃん90歳 今が一番、健康です!」という本を出版していることも知った。
本の表紙で着ているこのトレーニングウェアには見覚えがあった。あの「結果にコミットする」ライザッ◯だ。
こんなビフォー、アフターの写真も本の帯を飾っていた。
子供の頃から白黒テレビで親しんだ大村崑さん。
私の父は昭和5年生まれだったので、崑さんと1つ違いだ。
父と一緒に見たテレビ番組「番頭はんと丁稚どん」、「頓馬(とんま)天狗」などなど。
ずり落ちたメガネのオロナミンCドリンクのCMが最も記憶に残る。
懐かしさと共に、その大村崑さんの大変身の秘密を知りたくなって、本を購入したのだった。
読んでみると、崑さんが語りかけてくれるような軽快な関西弁で始まった。直ぐに引き込まれて、瞬く間に読んでしまった。
現在の姿からは想像もできないが、崑さんの86歳当時の状態は、『標準以下の「ザ・おじいちゃん」だった』そうだ。
『膝も腰も曲がり、背中も丸まり、肩も首も前方に出て』いて、『歩幅はわずか10センチ』ヨタヨタとしか歩けなかった。肺が片方しかないので、直ぐに息切れし、家族と肩を並べて歩くことも出来ないほどで、顔色も不健康な土気色。腹回りは1メートル近くあった。
それが、ある日奥さまの誘いでライザッ◯へ。
本人曰く『仕方なく、行くだけ行って、入会は断固断るつもり』だったのだが、結果的に、何と86歳から筋トレを始める事になったのだ。
私はこれまで、「年を取ってから体を鍛えると壊れる」と思い込んでいたのだが、プロのパーソナルトレーナーの指導のもとに筋トレをすると、大村崑さんの様に、素晴らしい結果になるのだと、考えを改めさせられた。
人体は不思議だ。いくつになっても底知れない可能性を秘めているものだ。希望が湧いてくる。
「筋トレの魔法」と題したが、ビフォー、アフターの比較写真を見ると、ホントに魔法でも使ったのでは無いかと思う程の変わり様だ。
実際には、5年以上の月日を費やして鍛え上げられた筋肉だ。これはもう崑さんの努力の賜物だ。
86歳当時の体の不調は改善し、猫背と布袋さんのようなお腹ともおサラバ。”歩き“も速歩きの奥様と肩を並べて歩けるようになり、息切れもしない。
『90歳で、自分史上最高の体』になったと言う。
現在崑さんは、40キロのバーベルを担いで10回3セットのスクワットをこなしている。次は、50キロのバーベルが目標だという。凄すぎる!
本書には、自宅でできる簡単な4種の筋トレと、崑さんが実践している健康法なども紹介されている。
後半では、崑さんの生い立ちが書かれており、子供の時から番組で名前や顔を知っているとはいえ、実際には彼について何も知らなかった。
大村崑さんは元々『ええし(いいとこ)のぼん』、つまり、お金持ちのお坊ちゃまだったのだ。
しかし、父親が42歳の時にチフスにかかり他界した後は、随分とご苦労をされたようだ。
当時のチフスはやはり大変恐ろしい病気だった為、差別や偏見があり、「チフスの子」といじめられたり、家のガラスを石で割られたりと、ひどい目にあったようだ。
コロナの流行り始めもそんな偏見があった。いつの世も変わらず心無い人がいるものだと悲しくなる。
一家の大黒柱を失った崑さんは、9歳で家族離散、伯母に育てられた。まだ小学3~4年の子供にとって、母親と離れて暮らすのは随分と辛い事だ。
更に肉体的にも、元々弱視の上に、子供時代に難聴になったり、19歳で肺結核を患い片肺を摘出。58歳の時には大腸がんになったりと、様々な苦労を負っている。
それでも、崑さんはいつも前向きに物事を捉える大変ポジティブな方だ。超ポジ人!だからこそ、幸福な現在があるのだ。
今後については『102歳まで生きて、100歳まで仕事も筋トレも続けます』とおっしゃっている。
そして『この歳になって、「もったいない生き方」だけはしたくない』『幸せになりたければ、いやなことはしないに限ります。』『自分の嫌いなことや、いやな気分にさせられることに、残された貴重な時間を費やすのはもったいなすぎる』と。『人間関係でも同じです。いやなやつとつき合うことはありません。一緒にいて楽しい人間とだけつき合う。言ってみれば、人間関係の断捨離ですわ』。
この一冊を読んで、筋トレと、これからの人生を生きる上で、ブラスになることを教えられたり、気づかせてもらった。叔母さんとの関係もジンと来る話だ。
本の帯にある『たとえ90歳でも…筋肉は裏切らない!』
そして、本書は期待を裏切らない!良書だった。