元々はKさんから「クルミが簡単に割れない」と相談が来たので、もしかしたらそれはオニグルミではないかと伝え、オニグルミの殻を容易に割る方法をネットで調べて教えたのだが、Kさんはギブアップして、私にくれたのだった。
オニグルミの硬さは尋常じゃない。
私も昔、近所の遊歩道から2~3個拾ってきたことがある。その頃はオニグルミの基礎知識もなかったので、金づちで思い切り叩き割り、結果粉々になったクルミを殻と実とに選り分けて、カップケーキに入れて焼いたのだった。
オニグルミの実は、自然界ではカラスなどが高い空からアスファルトめがけて落として割ったり、身の危険を顧みず車道にオニグルミを置いて、車にひかせて中の実を食べたりしている。
人間様はネットで取り扱い法を調べる。一晩水につけておき、翌日水を切ったクルミをフライパン等で炒るとくるみの殻に亀裂が入り、容易に割ることが出来るとあった。たまたま見たテレビのドキュメンタリーでも、オニグルミを長年扱っている老夫婦が同じように扱っていた。
やり方は分かったのだが、50個ほどあるオニグルミに取りかかる気持ちが、なかなか起きなかった。
リタイアしてからの生活リズムを作るのに、身体も心も何だか混乱していた。今も生活リズムこそ何となく整ったが、心はいつも迷いやモヤモヤでスッキリしないことも多い。
今週はそんな自分のお尻をちょっとだけ叩いて、たまった未読の新聞を全てザッと読んで片付け、一つだけ小さな目標を立てた。「今週何冊本を読めるか」と。結局、悲しいことに1冊で終わりそうです。
でも、そうして小さな目標を立てた事で一気にやる気が出て、オニグルミに取りかかることが出来たのだった。
再度ネットの動画でやり方を確認してから、クルミを水につけて眠りについた。
そして翌日、大きな中華鍋に水を切ったクルミ50個程を入れ、火にかけた。焦げないように火に注意しながら、執拗なくらいに炒った。
ネットの動画では、クルミのはぜる音がピシピシと聞こえていたが、実際にはあまり聞こえないなあと思いながら、火を止めた。すると、火を止めたにもかかわらず、小さくピシまた一つピシという可愛らしい音が聞こえ安心した。頑なだったオニグルミが降参したようで、かわいい音だった。
粗熱が取れ鍋の中のオニグルミを確認してみると、ガッチリ合わさった殻に細い隙間が入っていた。
くるみ割りの道具というと、パッと思いつくのは「くるみ割り人形」だけど、コイン程の大きさで、隙間に入れてひねるだけで殻を割れる道具がある。昔西洋クルミをもらったときに付いてきたものがあったのだが、見つからなかったので試しに包丁の刃元を隙間に入れてひねってみると容易に殻が割れた。
台所でコツコツとクルミの殻を割る私のところへ珍しく夫が「殻を割ろうか」とやってきた。それで実をほじり出す作業を早速お願いした。
オニグルミは西洋クルミと違い、殻からスポンと実が外れない。殻を割る先から大抵実が欠けて、双方の殻にしっかり実がとどまるのだ。
これは奇跡の1個。
50分の1の奇跡。
実がきれいに気持ちよく外れた。
その他は、全て爪楊枝でホリホリして殻からセッセと掘り出した。
ホリホリしたクルミの殻の山。
オニグルミの殻割り。夫と二人の共同作業。二人共黙々系の仕事が好き。黙々と30分ほどで終了した。
奇跡の1個を真ん中に置いてみた。
全部で100グラムほど。これを贅沢にもぜ~んぶパウンドケーキに入れちゃう。
バターだけは10グラム減らしたけど、後の材料は全部100グラムで統一。ブランデーはいつもより多めの大さじ2杯位ドボッと入れた。
出来上がり。
久々にしては、上出来かな。
クルミはなかなか高価な木の実だが、不飽和脂肪酸が多く含まれ身体に良いらしい。悪玉コレステロールの抑制や過酸化脂質の発生を予防する効果があるそうだ。
オニグルミをくれたKさんに感謝しながら、たまたま訪れた息子と一緒にいただいた。ごちそうさまでした。