そんなことを考えながら、次第にしっかりと目が覚めていく。
グレゴリオ聖歌隊の歌声がフェイドアウトしていくと、近くの中学校のチャイムが大きく聞こえた。
起き上がって見ると、夫も居ないし、テレビもついていなかった。
あの歌声は、中学校から聞こえた合唱の声なのか、それとも私のそら耳だったのか…。不思議な気分だったけれど、何れにしても、悪くない目覚めだった。
午後から、一人で久しぶりに豊平川沿いを歩いた。
サイクリングコースがまだ閉鎖されていた。
大雪の影響で整備が進まず、今年は豊平川マラソンが中止になったとニュースで伝えていた。
コースは閉鎖されているにもかかわらず、結構みんな走ったり、サイクリングしたりしている。
私も、歩いたことのない川べりを選んで歩いてみた。天気は良かったが、歩いているうちに、どんどん風が強くなっていった。
最近つば広の帽子を被って歩いている。
ヘアカットの動画をみていたら、美容師さんが「髪の分け目が日に焼けると毛穴が開くので、時々分け目を変えたほうが良いですよ」と言っていた。分け目を変えるのも中々に難しかったので、それならば日に焼けないようにと、昔買った帽子を引っ張り出して被り始めた。
緩めの帽子なので、風ですぐに飛ぶ。
先日も風にあおられ、あっという間に帽子が飛ばされた。その時に、映画「ライアンの娘」のワンシーンを思い出した。
せつない映画なのだが、何度でも見てしまう映画だ。
デビッド・リーン監督の1970年の古い映画だ。サラ・マイルズ、ロバート・ミッチャム、クリストファ・ージョーンズが出演している。
イギリス軍将校を演じたクリストファー・ジョーンズに惹かれた主人公サラ・マイルズは、ロバート・ミッチャム演じる夫がいながら、不貞をはたらいてしまう。
20世紀初頭のアイルランドがイギリスからの独立を望んでいる時代背景があり、イギリスの将校と通じていた主人公は、裏切り者として人々からリンチを受けるはめに陥る。
身も心も傷ついたサラ・マイルズ演じる主人公が、つば広の帽子をかぶり歩いていると、突風に帽子があおられ飛ばされてしまう。そこであらわになったのは、リンチで坊主に刈られた酷く悲しい姿だった。
このシーンを見た時のショックはいつまでも忘れられない。
帽子を飛ばされないよう、つばをつかみながら、川に野鳥を探しながら歩くと、真っ白なかもめのペア。
下の写真、カラスがちょっかいをかけにやって来た。分かりづらいが、黒いのが飛んでいるカラスで、その左側にカモメ。ちょっとした空中戦。すぐに事態は収拾した。
サイクリングコースは川に近づいたり、離れたり。
サイクリングコースは川に近づいたり、離れたり。
まだ桜が咲いていた。
私より身長が低い華奢な桜の木。
川のそばは気温が低いから、開花が遅かったようだ。他の桜はどこも、ほぼ散ってしまっている。
途中ヒバリのペアを見かけた。豊平川沿いはヒバリが多い。ジョギングしている時も今日も、すぐ足元からヒバリが飛び立つ。今日みたいに晴れた日は、上空からずっとヒバリの鳴き声が聞こえている。これを「揚げひばり」と言うそうだ。
藻岩橋まで歩き、橋を渡って対岸の道路沿いを戻って来ると、
早々とハマナスが咲いている。
河川敷を見下ろすと、サイクリングコースの掃除がはじまっていた。散水車でコース脇の草むらに水を撒いたりしている。“草むら”にしか見えないのだが、わざわざ散水するということは、“芝”の扱いなのだろうか。
豊平川に来ると、元気が出る。
川の水音が心地よいのは、なぜだろう。太古の記憶が、遺伝子に組み込まれているからだろうか。