K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ヨルゴス・ランティモス『女王陛下のお気に入り』

2019年03月26日 | 映画
こんばんは。花粉症に苦しむただけーまです。
もう桜が咲き始めたとか。一年のなんと早いことでしょう…

今回は、残念ながらアカデミー賞で猛威を震えなかったヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』の鑑賞録です。




《Story》
18世紀初頭、宿敵ルイ14世のフランスと交戦中のイングランド。揺れる国家と女王のアンを、彼女の幼馴染で女官長を務めるレディ・サラが操っていた。そこに、サラの従妹で上流階級から没落したアビゲイルが召使として働くことになる。サラに気に入られ、侍女に昇格したアビゲイルだったが、彼女の中に生き残りをかけた野望が芽生え始める。夫が総指揮をとる戦争の継続をめぐる争いにサラが没頭しているうちに、アビゲイルは少しずつ女王の心をつかんでいくのだが─。
(「映画『女王陛下のお気に入り』公式サイト」より)


個人的に激推し監督のランティモスが個人的に激推し女優のエマ・ストーンを起用!こんなに新作が待ち遠しかったのは久しぶりでした。

人間の嫌らしい部分をこれでもかとうまく描写した、実にランティモスらしい作品です。ただ、個人的には『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』の方が好みでした。
史実に基づいたものより、完全フィクションの方が監督の類いまれな脚本能力が生きるのでは〜と思っていたら、本作は脚本にランティモスが噛んでないのですね。なるほど納得。

三人の名女優
本作は、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズという名優たちによって成立しているといっても過言ではありません。
(もちろん脇を固めた男優たちも素晴らしいのですが!)
まず、今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマン。孤独で寂しがりやな子供っぽい側面と女王ならではの冷酷な側面を見事に演じ分けていました。
そして、お気に入りエマ・ストーン。相変わらずの美貌で、今回は小悪魔的演技がとても素晴らしかった。クラシカルの衣装も抜群に似合います。



そして、寵愛を奪われるサラを演じたレイチェル・ワイズ。『ロブスター』の時はヒロイン役として素晴らしい演技を見せていましたが、今回はとにかくイケメン!
男装の麗人という言葉が似合う振る舞いでした。



この三者が宮廷で少しコミカルで少しゾッとする人間模様を描いていきます。
人間の嫉妬と溺愛は怖いもので、寵愛以上の意味を持つ女王の「お気に入り」。人間関係の不協和音が響きます。


「画」への拘りと魚眼レンズ
走る馬を正面から捉えた映像や暗闇に灯る燭台の美しさなど、とにかく画に対する拘りが強い作品でした。
突然踊り出されるコンテンポラリーダンスも意味不明なシュールさながら、画としては目を奪われてしまう。

そうした拘りからか、多用されるのが魚眼レンズです。広角に撮れる分、こちらが覗き見る超越的な視点を強制されます。





見え方が異なるのはいいんですが、少し画質が落ちているような気が…個人的にはそんなに妙手とは思えません…


孤独の女王
アン女王は寂しがり屋であるがゆえに、二人の女性に利用されていました。
友達関係を装われ、政治に利用される。一方的に友情を抱いていた女王のなんと孤独なことか。



孤独の重要なアイコンとなるのが、アン女王が失った子息の人数分飼育するうさぎです。
エマ・ストーンの演じたアビゲイルが重用される発端となり、最後寵愛を失うきっかけともなります。
最後は、アン女王とアビゲイル、そしてうさぎがラップされた映像で終わりますが、それは子息を失い女官に利用され続けた果てのないアン女王の孤独を暗示しているのでしょう。


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