K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

18th DOMANI・明日展

2016年02月01日 | 美術
こんばんは。ビールは飲めませんがビアカクテルなら美味しく飲めます。ラドラーが大好きな女子力高めのただけーまです。



もう、会期終わっていて今更かよと突っ込まれそうですが「18th DOMANI・明日展」に行ってまいりましたので、その感想でも書きます。



本展示会は、文化庁が若手芸術家を育成するために海外の大学などでの研修を支援する「新進芸術家海外研修制度」の成果披露会の場として開催されています。
毎年若手の力強い作品が鑑賞できて好きだったのですが、ここ数年は名古屋勤務だったので行かれず……久しぶりの参戦となります。今回は「表現と素材 物質と行為と情報の交差」をテーマにしての開催、非常にレベルの高い大満足の展示でした。

昨今の美術作品の素材は本当に幅広くて、それが例え平面作品であったとしても、アルミや銅などの金属が使われていたり、果てはミクストメディアなる言葉でしか表現できなかったりもします。そんな深くて幅広いお題が今回のコンセプトだったわけですが、どの作家さんもかなり力の入った個性的な展示をされていて、正直圧倒されてしまいました。

個人的に気になった作家さんをかいつまんで紹介します。


木島孝文 ≪A.R.#496 "Citrus" Paraiso≫
※2009年にブラジルにて研修

今回の展示で最も印象に残ったのがこの作品です。コンクリートの見上げるほど大きな作品がどーんと展示室に飾られていました。
その存在感によるインスタレーション特有の(シックスセンスが反応するような)快感もちろんありますが、それにもまして綿密に練られたであろう構図と繊細な背景に目を奪われます。どのようにしてこの文様を掘ったのだろう、という鑑賞者の目を素材に向けさせるような、コンセプトにも十分に沿った作品でした。
この作品はセメントが主な素材になってますが、実はところどころに漆喰や水晶、骨などが使われており、多様化する美術作品の素材に関しても意識を向かせられましたね。


線幸子 ≪Layer≫シリーズ
※2007年にベルギーにて研修

これは何層にと重ねて綿で描くという手法によって作られた作品です。アクリルボックスに囲われた、黒い背景に綿で描かれた作品。まさに「綿」という素材に目がいってしまいます。普段目にしている綿が、その繊維の流れに随意性を付与するだけで、こうも「見慣れないもの(=付加価値を得る)」になるというのは非常に興味深いです。
美の本質的価値は決して物質に存在するわけではない、という美学的命題にも迫るような作風ですね。


富岡直子 ≪朝陽のめざめ ー I≫
※2005年にアメリカにて研修

リヒターの絵画のように、その記憶特有の瞬間的印象を留めた平面作品になります。朝陽、夜明け、あけぼの等、時刻によって色を変える空の様子を、様々な色彩で鮮やかに描写しています。
しかし、ここで疑問に思うことは、これはテーマである「素材」に対して何かしらの提言をしているのか、ということです。一見普通の平面ドローイングのように思われますが、この作品の真価は「素材」というテーマに対してどのようなことを鑑賞者に投げかけているのでしょうか。
それは恐らく、この作品と対峙することでしか見えてこないでしょう。というのも、この平面に乗せられた絵具の「発色」が、移り変わる空の瞬間的な印象を色鮮やかに蘇らせているからです。つまり、彼女のオーロラを思わせるような幻想的な作品群は、「絵具もまた素材である」という当たり前の事実を改めて実感させてくれるのです。

やはりその作家さんの想いのこもった作品っていうのは力がありますね。日本のこれからのファインアートが楽しみになるような展示でした。

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