K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

ハバネラ×ブルーオーロラ サクソフォーン八重奏コンサート

2015年10月27日 | 音楽
こんばんは。この前、久しぶりにクラシックサックスのコンサートに行ってきました。青葉台のフィリアホール。ハバネラとBASQの共演とか、サックス吹きには堪らない垂涎の組合せ!ジャンプで例える()ならそうですね…トリコとソーマがコラボしてるイメージですかね!?その前日はハバネラが単体でリサイタルをやっていたようですね。後輩の話を聞くと「異文化に接しました」とのことだったので、そっちも行きたかったなー。金曜日じゃなければと思うと口惜しい限り。

プログラムは下記ですが、もう個人的に大好きなブランデンブルグ協奏曲やらメンデルスゾーンの弦八やらを演奏してくれていたので、かなり満足度の高い演奏会でした。

■プログラム
リュエフ:サクソフォン四重奏のためのコンセール 第1楽章
J.S バッハ:主に向かって新しい歌を歌え BWV225 第1楽章
J.S バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第3番ト長調BWV1048 Ⅲ Allegro
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲より第1楽章
ラヴェル:「クープランの墓」よりプレリュード、トッカータ
平野公崇:「エスプリ・ドュ・ジャポン」より 赤とんぼ
真島俊夫:ラ・セーヌ
ボロディン:ダッタン人の踊り

[アンコール]
平野公崇:「エスプリ・ドュ・ジャポン」より 江戸の子守唄
ピアソラ:ブエノスアイレスの春

正直なところ余りの超絶技巧ぶりに参考には全くならなかったのが、自分の力量的に残念なところです。しかし、下手ではありながら感想はしっかり書きますので適度に読み流してやってください。

■アマチュア的所感
【リュエフ:サクソフォン四重奏のためのコンセール 第1楽章】
これは元々四重奏用の曲だったので、プログラム見たときは「どっちだどっちだ?もしかしてごちゃ混ぜか!?」なんて思っていたんですが、8人フルメンバーでの演奏。まあ冷静に考えればわかったことで、オープニングですものね。オープニングであのバリトンサックスの"D"音をゴージャスにやりたかったんですもんね。わかりますわかります、あの圧倒的オープニング感!
フランス系でこんなにバリトンサックスがかっこいい曲は他にはピエルネの「民謡風ロンドの主題による変奏曲」くらいではないでしょうか。結局フランス系をほとんどやらずにここまで来てしまったのはなんだか王道を経験していないような気がして悔しいです。あー、リュエフやりたい……(できるとは言っていない)
肝心の演奏ですが、四重奏での演奏に耳が慣れ過ぎていたせいか、曲のイメージと余りにも違いすぎて置いてけぼり食らってしまいました。しかし8人でやるとあんなに音圧がくるんですね。個人的にはそれぞれのアンサンブルの四重奏版で聞いてみたかったかもしれません。(特にハバネラはTHEおフランスなカルテットなので)

【J.S バッハ:主に向かって新しい歌を歌え BWV225 第1楽章】
個人的には今回の演奏会の中で1番好きな演奏でした。曲自体は初めてでしたが「八重奏として」かなり完成度が高かった気がします。そして、ハバネラとBASQのカルテットとしての方向性の違いが浮き彫りに…ハバネラの音色の神々しさがバッハの教会音楽とマッチすることやんごとなきです。BASQの現代的なバッハ解釈と個性際立つアンサンブルも個人的には大好きなんですけど、こうした古典的なありのままの楽譜をなぞるときは、やはり溶けるようなフランス式の格調高い音色が合うのでしょうね。ハバネラとBASQで分かれたり、8人で絡み合ったりと、各々の役割が不定なまま最後まであれよあれよと緻密に絡み合う編曲で、本当に見事な演奏でした。

【J.S バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第3番ト長調BWV1048 Ⅲ Allegro】
この曲は大学生の頃から好きなんですよね~。しかもこの楽章のAllegroがとりわけ好きだったので、なんという幸運かしら!と興奮してしまうのもわけないでしょう。YouTubeに上がっていた超高速演奏を毎朝聞いていたのを思い出します。
バッハの室内楽曲を代表する作品ですが、まさかサックスの生音で聞ける日が来ようとは!という感動でいっぱいでした。弦での演奏に慣れ過ぎていたせいか、こちらでも妙な違和感が…席の位置の問題かもしれませんが、もう少し高音が響いてても良かったのかなーと感じました。高音で提示される主題を中音・低音が追いかけて音の洪水みたいになるイメージが強かったので、ちょっと想像よりも落ち着いた印象だなと。
しかし、よくあんな連符が吹けるなあと羨望の眼差し。実は今、来月の本番に向けてイタリア協奏曲の第3楽章を練習しているんですが、それの低音連符がバリサク泣かせ(という名の左手小指殺し。Low Cそんなに出さないで…)で苦労しているので、改めてプロの凄さを思い知った次第です。あー、がんばらなきゃー。
因みに彼らが吹くイタリア協奏曲がこちら。は…早すぎる……

habanera saxophone quartet play bach

【メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲より第1楽章】
これも実はとても好きな曲!好きな曲の連続で本当にテンションが上がりました。サックス四重奏のメンデルスゾーンと言えば、元々のピアノ曲を伊藤康英さんが編曲した「プレリュードとフーガ」(以前バリサクでやった、フーガがめちゃカッコ良い編曲)が有名ですが、この八重奏曲はそれとは比にならないほどの難易度!元々弦楽で音のダイナミクスレンジが広すぎるので、サックスでは不可能な音の連続なわけですが、ハバネラのソプラノ奏者であるクリスチャン・ヴィルトゥは吹いちゃうんです。サックスという楽器の限界を軽々と超えてしまうのは、流石は世界を代表するサクソフォニストですね。
ぼくも1回くらいは弦楽アンサンブルの曲もやってみたいです~とか思いましたが、そういえばチャイコフスキーの弦楽四重奏曲でAndante Cantabileやってました。でもこう、なんか、あの、連符でごちゃごちゃやる感じの音の洪水みたいなやつ(伝われ)がやりたいんですよね。
実は日本の埼玉大学の学生がチャイコフスキーの弦楽六重奏「フィレンツェの思い出」をサックス四重奏でやった演奏がYouTubeに上がってるのでこちらも紹介しておきましょう。

サックス四重奏「フィレンツェの思い出」埼玉大学

【ラヴェル:「クープランの墓」よりプレリュード、トッカータ】
そしてTHEおフランスの定番!ラヴェルの「クープランの墓」です。いやあ、ハバネラの上品な音色がとてもマッチしていました。本当に色彩豊かで宮廷を思わせる上品さです。アルモサックス四重奏団の演奏に慣れてしまっているせいか、メヌエットやリゴードンが無いと何となくもやっとしてしまうのは、クラシックサックス吹きならでは?な気がします。でも、BASQの平野さんが参加しているサクスケルツェットの「クープランの墓」の録音はプレリュードとトッカータだったので、これからトッカータが演奏される機会は増えるのかもしれません。でも今回の演奏を踏まえて改めてアルモ四重奏団の録音を聞いてみると、確かに良い意味で「和」な感じがする気がします。ロマン派は色彩感豊かとよく表現されますが、確かに小川の潺(せせらぎ)のようなプレリュードや甘美なメヌエットはもう美術で言うところのロココ式の柔らかな色彩が想起されますが、リゴードンやトッカータは寧ろ民族的な熱と土臭さが感じられるような(=和製の音色がマッチする)印象もあります。ええと、つまりですね、プレリュードはハバネラの上品な音色の良さが存分に出ていて、トッカータはBASQの個性際立つ演奏が映えているように感じました。

【平野公崇:「エスプリ・ドュ・ジャポン」より 赤とんぼ、江戸の子守唄】
おフランスの次は日本の楽曲。童謡の「赤とんぼ」を平野さんがアレンジしたものです。アンコールでやった「江戸の子守唄」もまとめて書いちゃいますが、この「エスプリ・ドゥ・ジャポン」はBASQの最新アルバム「和楽」に収録されています。(これも結構前に買ってるので早く感想をまとめねば…)コラール的な「赤とんぼ」とジャズ風の「江戸の子守唄」の他に「ずいずいずっころばし」がスケルツォ的に演奏されたものも収録されていますので、是非ご購入くださいませ。回し者のようですが、サックスで篳篥(ひちりき)や三味線、三線の音を出すんですから、サックスの新境地的にもこれは買いですよ!
肝心の演奏の感想ですが、「赤とんぼ」はさすがの平野さん編曲というか、本当に心象風景を音に落とし込んだ感じがします。上では「コラール的」と書きましたが、どちらかというとアイルランド民謡のような雰囲気の方が強いかもしれません。ユニゾンによるバグパイプ風の音色が出てくると、あっ、アイルランドだ!とか安直に思ってしまうのです。でも、そうした民族音楽の持つノスタルジーが日本民謡に合っているのかもしれませんね。そして「江戸の子守唄」はもう全然子守ではない!笑 ジャズ式に編曲されていて、もう平野さんのかっこいいジャズソロが響き渡っておりました。ちょうど席がソプラノサックスのベルの直線上にあって、かつ割と前方だったのでものすごい音圧でした。どうしたらあんなに楽器を鳴らせるんだろう…音圧って割と聴衆の本能に訴えかける効果があると思っている(多少間違っても音圧で不出来の印象を誤魔化せてしまう)ので、非常に身につけたいスキル(?)なんですよね。はあ、それにしても惚れ惚れするほどかっこいいソロだったな~…

【真島俊夫:ラ・セーヌ】
有名な曲!らしいんですが、実はほとんど聞いたことが無かったりします。良い曲でした。邦人作曲家によるフランスの曲、まさに今回の演奏会にぴったりの演目!

【ボロディン:ダッタン人の踊り】
「ダッタン人の踊り」と言えばボロディンの代表作で、吹奏楽で演奏されることも多いポピュラーナンバー。元々はオペラ『イーゴリ公』の曲なんですが、実は吹奏楽の演奏でしか聞いたことがありませんでした。そして、そのままオリジナル編成を聞かない状態でサックス8重奏編成を聞くという邪道をしてみましたが、これはでも、うーん、これも吹奏楽(=大編成)の演奏に慣れてしまっているせいか、なんとなく物足りない印象は拭えず。もちろん、演奏自体は非常に活気で躍動感のある良い演奏でしたが、結構パーカッションの有無が曲の印象に対して大事な役割を担っているような気がしました。

【ピアソラ:ブエノスアイレスの春】
はい、みんな大好きピアソラさん。アルゼンチンタンゴとサックスn重奏編成の相性の良さは折り紙付きですね。パッション溢れる演奏で最後まで大満足の演奏会でした。原曲よりの編曲が最近は演奏される機会が多いようですが、個人的には啼鵬編曲のピアノ付が好き(何故ならバリトンサックスがかっこいいから!)なのでそっちを演ってほしかったかも。


あー、書きすぎましたね。勢いで書いたので読みぐるしい点はご容赦を。気付いた誤字脱字は修正しますので。いやあ、しかし良い演奏会だった。おかげさまでサックス熱が再燃、来月の演奏に向けてがんばるぞい!待ってろイタリア協奏曲!

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