K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

デヴィット・ベント『帰ってきたヒトラー』

2016年12月15日 | 映画
こんにちは。忘年会シーズンですね。ボーナスが出て日々ハッピーなただけーまです。そろそろ2016年の映画ベスト10を決めなければ…あとジャンプのワースト打ち切りも(性悪)

今回はデヴィット・ベント監督の『帰ってきた、ヒトラー』の感想です。ちょうどギンレイシネマでリバイバル上映中ですので、よければぜひ飯田橋へ…



<Story>
リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。
自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、大衆の心を掴み始める。しかし、皆気づいていなかった。
彼がタイムスリップしてきた〈ホンモノ〉で、70年前と全く変わっていないことを。
そして、天才扇動者である彼にとって、
現代のネット社会は願ってもない環境であることを―。
(「映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト」より)


コメディアンとして世界征服を目論むコメディ映画と思って観たんですが、全くそんな映画ではありませんでした。寧ろ現代のネット社会の孕むリスクに警鐘を鳴らす社会派的な内容。


初めてインターネットに触れたヒトラー

大志を持たない民衆の心の弱さを痛烈に批判しているようでもありました。ヒトラーの剣幕と力強い語調に、閉口してしまう人々。笑い飛ばしたいのに心から笑い飛ばせない、それは作中の民衆もさることながら、何より私たち観客の心の弱さが露わになるようでもあります。


コメディー番組で大衆に演説するヒトラー

「ヒトラーは死なない、ヒトラーは人の心が生む」という台詞こそ、この映画の本質を端的に表していると言えるでしょう。ヒトラーの為したことは悪である、そんなことはあたかも自明であるかのように私たちは捉えていますが、しかし、現実に確固たる信念を持った指導者が現れたとしたらどうなるのでしょう。
領土や人種、経済など社会に鬱憤が溢れる中、私たちは指導者という独裁者を自ら選択しはしないでしょうか。強いリーダーを求めることは是のようでありますが、そこには大衆の弱さの裏打ちがあります。
最早過去を愚かだとは言えません。社会の脆弱さと人間の弱さとは普遍的なものであり、今はただ圧倒的な指導者が現れていないだけなのです。

コメディーを装った社会風刺。こういう皮肉が効いた感じ、大好きです。



最新の画像もっと見る

post a comment