K馬日記

映画や美術、小説などの作品鑑賞の感想を徒然なるままに綴っていきます。

村上隆の五百羅漢図展

2016年01月10日 | 美術
今回は2016年の美術館初めを飾った「村上隆の五百羅漢図展」の感想を書こうかと思います。


村上自身が羅漢に扮した作品。ものすごくリアルで目が動いて怖かった笑

村上隆と言えば、スーパーフラットと呼ばれる芸術概念を確立した、日本を代表する現代美術家ですが、そんな彼の代表作とも言える五百羅漢図が森美術館で展覧中です。21世紀のアジアを代表する作品と言っても過言ではなく、今回は未完成だった北の1枚(五百羅漢図は東西南北4枚で1作品)が完成品として初めて展示されます。
数年前に芸術新潮でこの作品が取り上げられたときから、いつか生で見てみたいなと思いつつも作品はカタールだし無理だろうと諦めていたので、2016年の美術鑑賞をこの作品でスタートできたのはとても嬉しいです。(年始で人が少なかったのでゆっくりと鑑賞できましたし!)

いやあ、スケールの大きさにただただ圧倒されるばかりでした。東西南北それぞれ1枚ずつ、それぞれの方向を司る聖獣(東:青竜、西:白虎、南:朱雀、北:玄武)とともに、多くの羅漢図が描かれています。そこに描かれた羅漢や四聖獣の描写の細かいこと…朱雀には手塚治虫の「火の鳥」の片鱗が見て取れたり、青竜の絵画では伊藤若冲の鯨と象が援用されていたりと、伝統美術と漫画文化を織り込む洒落た心意気もあるのです。白虎なんてまんま太った猫ですが、日本美術史で虎が猫のように描かれるのはよくあったことですし、雲龍図のような青竜はまさに日本美術を代表するテーマです。


≪五百羅漢図[白虎]≫より
西の壁画外観 デカすぎて収まりきらない


≪五百羅漢図[青竜]≫より
雲龍図に着想を得たであろう青竜図


≪五百羅漢図[朱雀]≫より
手塚治虫の火の鳥をオマージュした朱雀図


≪五百羅漢図[玄武]≫より
もののけ姫のシシガミ様を思わせる獣


≪五百羅漢図[青竜]≫より
伊藤若冲を意識した白鯨図

歴史を踏まえて新しい作風を確立するというのは伝統的なアヴァンギャルドの在り方ですが、そういう意味でもまさに王道たる作品群と言えますね。


もちろん、五百羅漢図だけではなく、その他の作品も多数展示中なので、最近の村上隆氏の作品動向が包括的にわかるようになっています。
今回の展示では、いわゆるサブカルチャーを指向した作品はそれほどなく、どちらかというと曼陀羅のようなアジア的宇宙観や平等を示す円融概念など、仏教の影響が色濃く出ている作品が多いです。(そもそも、羅漢がそうなわけですが!)なので、これは日本人アーティストの作品というよりも、アジア的な作品だと言いたくなるわけですね。


≪円相≫連作
ミニマリズムのように敷き詰められた髑髏は曼陀羅のように宇宙的な広がりを感じさせます。


≪見返り、来迎図≫
国宝の≪阿弥陀二十五菩薩来迎図≫(通称:早来迎)を元絵とした作品。

こんな豪華な展示会が見れるのは本当に今だけ(そういう意味では会田誠展や杉本博司展を見逃したのは非常に残念でした…)だと思われますので、みなさま是非会場で作品の力を体感してみてください。

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