福富での夜の会議を終え、翌日の広島での仕事のため西へと車を走らせる。闇に沈んだ集落、峠の道ではハイビーム全開。対向車も前を行く車もほぼいない。CDの音量を上げ、気持ち良く突っ走る。今夜の共は真心ブラザーズ。
♩心のガソリン満タン いい感じ
オレの仕事は欲望執行人
ひとつひとつ欲望を叶えてく
ついさっきも仕事をこなしたよ
光陰矢のごとし 光より早く
(真心ブラザーズ「スピード」)
快適な夜のドライブ。1時間足らずで、広島市中心部に着く。信号待ち。仕事で何度も通った高層オフィスビルの窓の電気は、まだまだたくさん灯っている。ビルの下を行き交う路面電車。「はしご酒」中なのか、おやじ2人連れが目の前の横断歩道をふらふらと歩いて行く。
シカとイノシシの飛び出しを警戒しながらハンドルを握っていたついっさきまでとのギャップがおもしろい。そして思う。ああ、自分はどっちの空間も好きだなと。ひょっとすると、二つあるから両方ともずっと新鮮でいられるのか。東京暮らしと古里での暮らし。海外生活と日本での生活。知的労働と肉体労働―。思えば、ずっとそんな二つの世界を行き来して過ごしてきた。要は、どこにも根を張れないただの根無し草。張りっぱなしでいることに、魅かれない。
でも、仕事でも遊びでも暮らしでも、「もう一つの世界」があるのは、悪くはないと思う。少なくとも隊員は、自分が過ごしてきたいくつかの「二つの世界」が今、すべて愛おしく思える。
♩ 根無し草はどこ吹く風 さよならは鼻歌ついで
「ついて来い」とは言えない臆病者 ごめんよ
幸せは弓張月の上 泣いた夜も数知れず
おとぎ話を今でも信じてる 笑うかい
(山崎まさよし「根無し草ラプソディー」)
広島の部屋に帰ると、悪ガキ2人はまだ起きていた。仕事が立てこみ、しばらく会えていなかった。「あれ、父ちゃん、どしたん!? 日曜じゃないのに」。素っ頓狂なリアクションにほっとする。2人が寝静まった頃、消防車が何台もサイレンを響かせ、目の前の道を通り過ぎていった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます