福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

福富マップ入稿

2019-09-30 22:23:15 | 日記
 最後はやはり、きわきわの滑り込みセーフだった。
 漫画家の卵さんの絶大な協力のもと、同僚隊員と制作していた福富町のイラストマップ。今日の午後、何とか入稿した。
 本当は先週の金曜日に脱稿し、「通常スピード仕上げ」の印刷で注文しようとしていた。しかし、作業が立て込んでしまい、直前になって「割り増し料金の『特急仕上げ』でやっちゃおう」と方針転換。土日が作業に使えることになったため、怠け者の隊員&卵さんはあっさりと気が緩んだ。
 昨夜遅くに卵さんから受け取った最終データを今朝になって確認すると、複数の修正箇所が見つかってしまった! やばい。入稿の締め切りは午後3時。遅れると、「マップを配ります」と公言している町最大のイベント「アクアフェスタ」に間に合わない。
 しかし、卵さんは今日はアルバイト先へ出勤中。LINEで修正点が出たことを知らせると、「昼休みに家に帰ってデータ直します!」と感動的に答えてくれる。ありがたい!
 でもでも、1時間の昼休み。ちゃりで帰宅して、作業して、職場に戻る。そんな時間あるか?
 時計を見ると、午前10時半。隊員は卵さんの脚となるべく、福富支所を風のように発った。卵さんを家と職場に送迎し、会って修正点の打ち合わせもしようと思ったのだ。
 フラカンのCDをオン。広島へ車を走らせる。

 ♩青春ごっこを今も 続けながら旅の途中
 ヘッドライトの光は 手前しか照らさない
 真っ暗な道を走る 胸を高ぶらせ走る
 目的地はないんだ 帰り道も忘れたよ
    (フラワーカンパニーズ「深夜高速」)

 途中かかってきた他の業務のごたごたした電話もいなしながら、ひたすらGo west。ちょうど昼休みのタイミングに卵さんの職場にすべり込んだ。
 隊員は、最後までこんなドタバタに巻き込んだことを卵さんに平謝りし、すぐにエラソーにマップの修正点を指示する。人のできた卵さんはニコニコと聞いてくれる。ほっ。
 卵を拉致って再び車を飛ばす。1時間弱の作業の後、車の中でパソコンからデータを入稿。間に合った!
 お互いフーッと脱力…。する間もなく、卵さんを職場に送り届ける。休憩時間を15分オーバー。ごめんなさい。昼ご飯代わりのお菓子を渡し、谷村新司ばりの「ありがっとう!!」で見送る。久々に締め切りギリギリを味わったなぁ。感慨に浸る間もなく、福富でのアポのため、三たび車を飛ばす。
 卵さんは最後の最後まで、色やデザインをいろいろと試してみてくれた。それもあって、とっても楽しい仕上がりとなった。印刷品が届くのは、10月3日の予定。楽しみ! しっかりと宣伝しようっと。

one for all

2019-09-29 20:33:35 | 日記
 日本がラグビーにわいている。開催中のワールカップ(W杯)の1次リーグで、世界ランク9位の日本が、同2位で優勝候補のアイルランドを破る大金星。番狂わせ、快挙、奇跡などの文字がネット上にあふれる。日本代表は、国民の心をわしづかんでしまった!
 サッカー少年だった隊員はこれまで、ラグビーとの縁はまるでない。無理矢理挙げれば30年ほど前、京都の伏見工業高ラグビー部をモデルにした熱血ドラマ「スクールウォーズ」にハマっていたことぐらい。山下真二率いる弱小チームが、ラグビーと無縁だった優男や落ちこぼれ、不良たちを巻き込んで全国の強豪へと成長していく青春物語を、しばしば目から鼻水を流しながら見た。名場面の二つ三つは今もアフレコできてしまうから、「熱中する」ってすごい。
 まぁこんなことをラグビーとの「縁」というほど、無縁だったというわけ。
 隊員自身はそんな感じだが、隊員にはかつて、ラグビー少年だった一人の友人がいた。大学時代に知り合い、お互い性格は似ても似つかなかったが、波長や志向が合ったのか、急速に仲良くなった。
 彼は知り合って1年余り後、山での単独行中に遭難して亡くなった。そのときのことは今、詳しくは振り返らない。ただ、隊員は一連の出来事を経て、何かが変わった。大げさに言うと、生きるということへの姿勢だろうか。その姿勢は、かたちを変えながら脈々と続き、今に至っている。
 簡単には書き表せない、当時の傷。そして、彼の家族や当時の仲間たちとのその後の日々。にわかに沸いた国内のラグビー熱は、不意にそんなことを思い出させる。しばらく顔を合わせていないみんなは、どんな思いでテレビの中のフィフティーンを眺めているのだろう―。


アダムの草刈り

2019-09-29 00:06:27 | 日記
 「ああ、また草を刈らんといけん」「草だきゃ、ほんま嫌んなる」。8月に福富に来てすぐ、こんなせりふのシャワーを浴びた。やれ草刈りだ、ほい草刈りだ。大変じゃ大変じゃ。まるで、この世のすべては草刈りか、草刈りでないかの二者択一。エデンの園を追われて草刈りを課された人々かっ! と思うほどの草刈り話ざんまいだった。
 「草を取るだけでしょ。そんな大変かなあ」「しんどいなら、気にせずしばらくほっとけばいいんでは」。ひょっこり転がり込んできた都市生活社の隊員は、アホづらしながら内心思っていた。
 でも…。大変でした。はい。畑に草、庭に草、あぜ道に草、のり面に草。夏の日差しとたっぷりの雨を受けて、素直にぐんぐんと伸びる伸びる。ちょいっと刈っても、2週間もすればしっかり勢いを取り戻す。気にせずしばらくほっておくと、刈る気も失せるほどに茂ってしまう。おまけに、あちこちにある公共のスペースや施設の周りも、住民が集まって一斉に草を刈る。ああ、草刈り人生。
 草刈りなんて無縁で暮らしてやれ! ぐらいに思っていた隊員も、さっさと白旗。先日、マイ草刈り機を買った。「草刈りのプロ」揃いのご近所さんにいろいろなタイプの草刈り機を使わせてもらった挙げ句、ホームセンターを数日渡り歩き、特売中の2万円ほどの最安マシンをゲットした。先端を付け替えてナイロンひもでも刈れるタイプのやつだ。使い心地も、性能もなかなか良くて気に入っている。機械をいじるとなんとなく楽しいし、草がなくなっていく爽快感が無邪気にうれしい。草刈り牧歌の時代よ続け、と願う。
 「見てみぃ。あそこはうまく刈っとるわ」。お試し草刈り機を貸してくれた一人の、恰幅のいい近所のご主人が、遠くの法面を見てしみじみとこぼす。庭師を評価するかのような、草刈りチェック。ご主人によると、どれぐらいのペースで刈っているか。仕上がりは美しいか。刈った後の道ばたは片付いているか―。その人の人物像が透けて見えるらしい。深いね、草刈り。草刈り入門者の隊員は「はあ、そうですねえ」と、やはりアホ面して返すしかない。

続・高校入試改革

2019-09-28 00:20:04 | 日記
 しばらく前に、「広島県立高校の入試制度の見直しが始まるらしい」ということをブログに書いた。隊員が注目していたのが、いわゆる「内申書」。中学校側が生徒の中学3年間の成績やスポーツ活動、生徒会活動などを記録する書類の扱いがどうなるかが気になった。
 その後の地元紙の続報によると、県教委が示した入試見直しの素案は、内申書に大きな「メス」を入れる方針が盛り込まれているようだ。スポーツや文化、ボランティア、生徒会などに関する生徒の活動を記録するのはヤメ。学習の成績も、2年生と3年生時だけに絞る。
 いい方向性だと思う。中学入学したらすぐに、内申書のことを気にしながら学校生活を送らざるを得ない今の仕組みはいびつだもの。
 内申書の要素をたくさんなくす代わりに、「自己PR書」というものが登場するらしい。生徒自らが「中学生活でこんなことを頑張った」「高校ではこんなことを学びたい」ということを書く。高校は自己PR書を使って受験生全員の面接をすることになりそう。
 子どもにとっては、何をしたいから高校に行くのか、なぜその学校を選ぶのか、を「偏差値」にかかわらず考えやすくなるような気がする。大人の側も、その子の志向や意欲によりフィットした進路指導、合否判定につなげやすいんじゃないなか。
 学校は行かなきゃいけないところ―。そんな当たり前に信じられてきた言葉が説得力を失いつつある今の時代、学校が魅力ある場所にならないと、子どもにそっぽを向かれる。県教委の試みは、内容の細かいところはさておき、必要な取り組みだと思う。

スモーキング田んぼ

2019-09-26 06:33:06 | 日記
 数十センチほど積まれたもみ殻。ぶっすりと突き刺さった煙突から、白煙がゆらゆらと立ち昇る。農作業の手伝いに訪れたご近所さんの田の隅で、そんな光景を目にした。「地元に伝わる儀式か?チベット仏教か何かか」と思ったが、違った。「こりゃ女房が炭を作りよるんよ」。恰幅のいいご主人が言う。もみ殻をいぶして作る燻炭(くんたん)というらしい。
 「炭ですか。BBQに使うんですか」。炭といえばキャンプのBBQしか知らない隊員がアホ面で尋ねると、「燃料にゃならんよ。肥料いうか、土を良くするんよ」とご主人。畑にまくと、作物が育ちやすくなるそうだ。
調べてみると、もみ殻燻炭はアルカリ性なので、やせた酸性の畑に堆肥などと一緒にまくと、pHが調整される。微生物が棲みやすくなり、作物が根を張りやすくなるなどするという。土壌の改良剤。ホームセンターなどでも売っているが、こちらは何でも手作りだ。
 作る仕組みは簡単。もみ殻の山の真ん中に、煙突のついたアルミ缶のような箱を置く。箱に藁を詰めて着火。もみ殻をかぶせていぶし焼く。いぶされた箱の周りのもみ殻をかき混ぜながら、量によっては1日以上かかるらしい。げ、大変だ。
 もみ殻の山を後にして、「ウンカが出とる」という田んぼの稲を鎌で刈った。雨で稲穂が倒れ、根元が腐り始めている。茎や土の上を白い小さな羽虫が飛び回る。ウンカ被害なんて教科書でしか見たことなかった。「へえ、これがウンカですか」。ひとり感心しながら鎌をふるう。稲の一部はもう使い物にならないという。
 そんなキビシー状況だが、秋空の下の作業は気持ちいい。遠くに見える燻炭の山は、マイペースで白煙を上げる。田んぼがタバコを吸ってるみたいだな―。雑事を忘れてしばらく、ひたすらカマキリ男となった。