
一方、初参加した福富のえびす講は、きわめてほのぼのムードだった。早朝からみんなで竹の幟を立て、小さなほこらの前に畑で取れた白菜などのお供えを並べる。集会所の中では女性たちがせっせと餅つきの準備を進めている。
神事を始める時刻の30分以上前に準備万端。暇つぶしに、年季の入った太鼓をみんなでポコポコと叩いていると、軽ワゴンがのそのそとやって来た。宮司さんの到着。軽ワゴンには、祭事道具と趣味の釣り竿がぎっしりと積んである。
のんびりした神事を終えると、餅つきスタート。完全に不慣れな隊員だが、周りはお年寄りばかり。「体験独占」ばかり、張り切って杵を振るう。

「変わってみぃ」。すぐに御年80うん歳のおじいちゃんが、隊員のへっぴり腰にギラリと厳しい視線を送り、杵を奪う。「力任せにやるんじゃない。臼を叩いて、杵のくずが出るぞ」と的確な指摘。マエケンのような力の抜けたなめらかなフォームを繰り出した。「へい!了解です!」
餅は甘さ控えめのぜんざいで食う。おかわりをしていると、御神酒でほろい酔いの地区の長が寄ってきた。「子どもさんは来んかったんね?」。上の子は将棋の大会に参加。下の子を連れてくるつもりだったがが、体調が優れず断念したことを伝えた。「わぁ、ほんま残念じゃわぁ。餅をつかしてあげたかった」。ひどい落胆ぶりに、ひたすら「すんませんっ」と繰り返した。
しかし、周りを見て、ふと考える。30人ほどいた参加者の8割は高齢者。残りも50代以上。子どもはかろうじて、移住組家庭の小学6年生が1人いただけだ。うーん、もしここに保育園児のわが息子がいたら、遊び相手がいなくて困ったかもなぁ。山里の祭りの現実。
この日、すぐ隣の地区でもえびす講があった。「今年を最後にやめるから、写真撮りに来て」と言われ、こちらもはしごでお邪魔した。なるほど、こちらはかなりこじんまり。つかの間の滞在だけど、住民たちの話を聞いたり準備の段取りを見たりしていると、「こんな小さな町の小さな地区ごとでも、カラーが違うなぁ」と感じる。お供えする鯛の大きさもだいぶ違ってて、おもしろい。

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