福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

コミュ力

2019-09-17 00:28:35 | 日記
 広島市内であった発達障害について考えるシンポジウムに参加した。基調講演の講師は、大竹市にある広島西医療センター小児科の湊崎和範先生。同センターで、小児の発達や心身症の専門外来を担当している。発達障害の子どもの思春期の支援をめぐる、温かい目線の講演だった。
 大人ができるのは、「生きにくさ」を感じている子が安心できる環境をつくり、楽しい体験、認められる体験を増やしてあげること。子どもが「できること」を増やしていくのが大切だけど、何でも一人でできるようにするためじゃない。「できないこと」にはどう対応すればいいかを、丁寧に教えていければいい―。そんな考えだったように理解する。
 本筋ではないが、こんなことも言ってたな。「いま世の中はサービス業が主流。コミュニケーションが苦手な子にとっては、すごくしんどい」
 激しくうなずいた。職場も社会も、二言目には「コミュニケーションが大事」。自己啓発本にも「やれ、コミュニケーション」。まあ、そうなんだろう。普段の生活でも、生涯を通じても、昔とは比べものにならないぐらいたくさんの人と関わる時代だもの。スピード感に乗って生きていくためには、コミュ力は要る。
 でも、一方で思う。ちょっと過大評価しすぎでないかと。もちろん、英語力と同じで、コミュ力もあるに超したことはない。「ない方がいい」理由なんてない。ただ、なければないで、その人なりの歩みがあるはず。必要以上に自信を失う必要ないよ。

 ♩「反省」なんかオレの辞書にない
  ふさぎこむ理由はどこにもない
  勘違いだけは人一倍
  笑って生きるのさ それの何が悪い
  (斉藤和義「社会生活不適合者」)

 「いま、コミュニケーションが強く求められないのは、1次産業とスーパー銭湯ぐらいですかね」と湊崎先生。まあ、そんなこともないけど、言いたいことは分かる。その人なりの歩みができる世界がずいぶん限られている(ように思わされてしまう)。
 湊崎先生はこれまでに何度も取材などでお世話になったことがあった。子どもの心を扱う寄稿連載の担当をさせてもらった際は、丁寧かつ適切に言葉を使い分けながら、センシティブなテーマを粘り強く解きほぐしてくれた。「シンプルに言うと、こういうことでいいんですかっ」とすぐに白黒はっきりさせ、結論を急ぎたがる隊員の思慮の浅さをただされた気がしたものだった。
 休憩時間に久しぶりにあいさつし、隊員の「子ども農園」の企ても話した。「そうなんですか!? 体を動かせる農作業は、子どもにとって絶対いい。引きこもりの子には、外に出てもらうだけで、全然違います」。普段の柔らかい表情をさらにふにゃっとさせて喜んでくれた。


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