近畿大学工学部(広島キャンパス)地域貢献 公開講座 一般向け
平成27年6月27日(土)13:30〜15:00
講師 次世代基盤技術研究所 特任教授 矢野 智昭
【教室案内】
(はじめに)
私がエネルギー問題を考えるとき、新聞などで賑やかに報じられている問題、ウランや石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料にいつまでも頼るのか、それとも再生可能エネルギーを利用するかということだけに注意がいきます。
また、視点を変えてエネルギーをより効率的に機械などに利用するという、水素化社会の方向もあるは程度考えます。
今までは第3の視点に気づきませんでした。でも、エネルギーを使う機械の側を根本的に革新して、機械の側で電力消費量を大幅に削減するという視点もあったのですね。そこで、私は本日の公開講座に大変興味をもって参加させていただきました。
(講座内容)
モータは、自動車からロボットまでさまざまなところに用いられています。日本では1億台以上のモータが動いていて、電力の6割近くを消費しています。ある家庭用電気冷蔵庫を調べたら11台のモータが、また、ある自動車を調べたら150台のモータが使われていました。
「ものを動かし、操る」アクチュエーター技術は、科学・産業の基盤技術ですが、実用化されているものは、運動が回転又は直動の1自由度に制限されています。ロボットの関節など多自由度の運動を行うためには自由度数と同じ数のアクチュエーターが必要になっています。
【ロボットの腕機構】
矢野先生は、1980年頃、自動縫製機械を作ったとき、2kgのミシンを動かすのに7台のモータ、220kgの腕機構を必要としました。そこで3自由度があれば100kgで済むことに思い至り、以降球面モータの制作に取りかかりました。
1台で手首のような動きをする球面モータがあれば、3台のモータを1台の球面モータで置き換えることができ、電力消費を減らすことができます。
【球面モータの特徴】
球面モータは、ロボットの関節駆動から宇宙船姿勢制御用リアクションホイールの直接駆動まで幅広い応用が考えられる、自動車の車輪駆動に用いるとステアリング機構が不要になります。また、マイクロマシンにおいても大変有効です。
まだ、実用化にまで行っていませんが、球面モータの構造及び寸法を最適化する設計・解析手法、ロータをスムーズに回転可能な支持機構、ロータの位置および出力トルクを検出するセンサ、センサ情報を用いてロータを任意の方向に駆動し、静止させる制御方法、高トルクが必要な用途に必須の減速機構、特性評価装置および評価方法の開発が必要になります。特に高トルクを要する機械では減速機の開発が急がれています。
【1軸を2個使った模型】