鈴芽は、要石となった草太を救うことを決意する。
鈴芽は、閉じ師である草太のおじいちゃんから話を聞こうと考え、おじいちゃんが入院している病院へと向かう。
その話の中で、鈴芽は「幼いころに後ろ戸を開いちゃって常世に行ったことがある」ということが判明する。
だから、宮崎での最初の後ろ戸の扉を開いたときには、常世を見ることができた。
草太を救うには、草太が封印されている、死後の世界とも言える常世に行かなければならなかった。
しかし、あの時の後ろ戸からは常世には入れなかった。
1つだけ常世に入れる後ろ戸があり、それが幼いころに迷い込んだ後ろ戸であることを、おじいちゃんから教えてもらう。
鈴芽は、2011年3月11日に起こった大震災の被災者であった。
そこで、お母さんを亡くしており、そのことを受け入れられていなかった。
鈴芽は毎日いなくなったお母さんを探す。
暗くなるまで瓦礫の街を一人で歩き続け、そこで偶然にも常世につながる後ろ戸を見つけていた。
その扉を開けて常世に迷い込んだ鈴芽は、そこで死んだはずのお母さんと出会う。
この記憶のことを、草太のおじいちゃんに伝えると、「その扉を探しなさい」とおじいちゃんは言う。
こうして、宮崎から始まった鈴芽の旅は、愛媛、神戸、東京を経て、故郷、東北を目指すことになる。
幼いころの断片的な記憶を頼りに、東北の後ろ戸を探す旅。
鈴芽を心配して東京まで追いかけてきた叔母の環さん、草太の親友・芹澤くん、西の要石の化身・ダイジン、東の要石の化身・サダイジンという、3人と2匹の奇妙な組み合わせで東北の後ろ戸を目指す。
そして、最終的に鈴芽は、東北の後ろ戸を見つけ、常世に入ることができた。
ダイジンの行く先々で後ろ戸が解放されており、「ダイジンが扉を開けている犯人なのでは?」とも思えたが、実はダイジンはミミズを暴れさせていたのではなく、今にも暴れそうな後ろ戸の存在を教えてくれていたのだということが、常世に入るタイミングで判明する。
やせ細っていたダイジンであったが、鈴芽の「ありがとう」の一言で、体がふっくらと膨らむ。
常世で要石となっていた草太は救い出され、西の要石ダイジンは元の要石としての役割に戻っていく。
ミミズを封印した鈴芽と草太は、常世をしばらく歩く。
常世は死者の世界でもあり、全ての時間が存在している場所とも言われている。
常世には、あの日、津波で流された残骸がいたるところに散乱していた。
そこには、お母さんが作ってくれた三本足の椅子が落ちていた。
その椅子はまだ新しく、震災で流されたばかりの椅子であった。
ここで鈴芽は、三本足の椅子を常世で拾ったことを思い出す。
幼いころにお母さんに作ってもらったという記憶は…
そこに小さな人影がゆっくりと歩いてくる。
幼いころ、常世に迷い込んできた、あの日の鈴芽であった。
あの時、幼いころに会ったあの人はお母さんではなく、鈴芽自身であった。
大声で泣いている幼い鈴芽に、
「すずめはこの先、ちゃんと大きくなるよ!
だから心配しないで。
未来なんか怖くない!
あなたはこれからも誰かを大好きになるし、
あなたのことを大好きになってくれる人ともたくさん出会う。
今は真っ暗に感じるかもしれないけど、
いつか必ず朝が来る」と、鈴芽は言う。
「お姉ちゃん、誰?」
「私はね、鈴芽の明日」
こうして、幼い鈴芽は、三本足の椅子を握りしめて現世へと帰っていく。
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