月を見るのが好きだ。毎日姿を変え、大きさも変え(ているように見える)、頭上から光を降り注ぐ。田舎に住んでいるためか、月が明るい。お月見をしていると、眩しくさえ感じる。
不思議に思うのだが、月を見ているとなぜか心が浮き立つ。三日月、満月、十六夜…どんな形の日でも、「月がきれいだよ」と言って回りたくなるし、実際に言っている。その時、一緒に浮き立ってくれる人がいないのが残念。私は前世でオオカミだったんだろうか?いやいや、満月でなくても嬉しい気分になるので、オオカミじゃないか。
月は、今日の失敗を慰めてくれる。愚痴を聞いてくれる。明日へ期待している自分を、見守ってくれる。そして涙が出そうになる。別に悲しい訳じゃないんだけど。どうして月を見るとこんな気持ちになるのか、いつも考える。結局分からないまま、気付いたら月を見ながら眠っている。
昔、心理療法をしていた頃のこと。ある特定の子どもの箱庭の最中だけ、どうしても抗いきれない眠気に襲われていた。私の先生から「それには何か意味があるんだよ」と言われた。考えようとすると睡魔に意識を連れていかれていた。そんなことを思い出した。あの子はどうしているだろう?
気候の良い晴れた夜はゆかしい。蚊取り線香にいぶされながら、擦り切れたキャンプ用椅子に座って(それにしても最近の椅子は、なんて座り心地がいいのだ!)お茶時々ビールを片手に、ぼんやり空を見上げる。月に会えた嬉しさと、自分が抱える不安や悲しさ、楽しかったこと、いろんな気持ちがないまぜになった、名前のない感情を抱えながら。