たけのこ新聞の事件簿

離婚をきっかけに、今まで心に溜めていたことを書いています。離婚、エコ、世間の常識(のようなもの)についての疑問などなど。

行くぞウィーン ひとり旅 17日本へ③

2023年05月30日 | 旅行

暗い機内(暗くなくてもよいのだが)でぼんやり過ごすのが好きだ。映画や音楽など消費できないほどのサービスが、目の前のにモニターにはあるけれど、せっかく10時間以上乗るなら何もしない(何もしなくていい)贅沢を味わいたいもんだと思う。帰ったら、ぼんやりする時間なんてなかなか取れないもの。楽友会館と同じで、味わいたい時間というのはあっという間に過ぎる。ぼんやりしたり、うたた寝したり。

足元の広い座席を追加料金を払って買った、と以前に書いた。左隣数席が空いていた。女性2人組が

「こっちが広いわ~」

と移ってくる。お金払ってるの?と不審に思っていたが、CAさんは特に何も言わない。そのうち二人で何やら相談を始める。旅行会社の添乗員らしい。それにしてもうるさい。落ち着いてぼんやりできないじゃないかと、睨みつける。座席の料金は払っているのか?もっと静かにできないのか?そのうち私の座席エリアの足元にも荷物を置く。足で荷物をよけてにらむ。私の視線に気づいたのか、少し静かになる。帰りはちょっぴり不快な旅になる。

日本に着いた。残念なような、安心したような気持になる。まだ、ウィーンに残してきたワインに気持ちが引きずられ、悔しい気持ちも。意外に時差ボケなく、元気。

 

数カ月前にウィーンへ!と思った時からすでに始まっていたひとり旅。行く前も、滞在中も、ずっとドキドキ・ワクワクして楽しかった。また日常に戻るんだ。日常生活とは、ルーティンワークの繰り返しだ。この旅を振り返ると、ルーティンではない上に、予想のつかないこと、スムーズにいかないことだらけだったのではないかと思う。これが楽しさの素なのかもしれない。適度に(ここは大事)予想通りにならないことがあるというのは、生きていくうえでの面白みになって良いものだと思う。

次回のためにお金を貯めよう。そしてまたウィーン貧乏旅行をしよう。次に訪れた時、同じ景色がどう見えるのだろう?そして少しは旅慣れてスマートに巡ることができるのだろうか?楽しみなことがまた一つ増えてうれしい。


行くぞウィーン ひとり旅 17日本へ②

2023年05月29日 | 旅行

もう一つトラブル。

行き同様、帰りも空港でスマホが使えなかったため、飛行機のeチケットが表示できなかった。スタッフに伝えても、Wi-Fiが使えない訳がないと言われる。でも、本当に使えないんだもん(宿では使えた)。別のスタッフに手伝ってもらい、自動券売機からチケットを出す。ウィーンでも、フランクフルトでも。こういうことがあるので、紙のチケットの方が安心できると思った。まあ、結局は飛行機に乗れたけれど、こんなトラブルは疲れる。

さらにウィーンでは、搭乗前にアナウンス。

「飛行機のトラブルのため、機種を変更します。座席番号が変更になります。詳しくは係員まで」

係員に聞くのは、ハードルが高い。固まっていると、次なるアナウンス。

「搭乗口の機械にチケットをかざすと座席番号が出てくる(らしい)」

順番に並んでチケットをかざしている。銀行の受付みたいに、感熱紙に座席番号が印字されている。私の順番になってチケットをかざすが、何も出てこない。もう一度かざす。

しーん。

後ろは行列しているのでもたもたできず、そのまま機内に歩いていく。私の座席はあるのだろうか?後ろを歩いている男性が「ラッキー、俺ビジネスクラスになった」と話しているのが聞こえる。とりあえず元々の予約席を探してみる。

あった。私の席だけぽっかり空いていた。良かったあ、私の座席番号は変更がなかったのだ。英語力が怪しいのに、次々想定外のトラブル。勘弁してほしい。

飛行機が少し遅れたのか、フランクフルトに着くと、係員さんが先に立って日本行き飛行機のゲートまで案内してくれた。無事乗り継ぎ機にも搭乗できてあとは心配なく日本に連れて行ってもらうだけ。そして何より、日本語のアナウンスが嬉しい。

 


行くぞウィーン ひとり旅 17日本へ①

2023年05月26日 | 旅行

朝目覚めると、雨。ウィーンで初めての雨だった。早くに目が覚めたので、昨日のカツ、パン、ザワークラウトなど、今あるものすべてを食べる…のは無理なほどたくさん食料が残っている。とにかく食べる。勿体ないので食べる。最後、どうしてもパンが残ってしまったので、『もしよかったら食べてください』と書置きを残しておく。荷物をまとめ、土産の入った重い荷物と、食べ過ぎの重いお腹を抱えて、オーナーの家に鍵を返しに行く。

土砂降りの雨、キャリーをごろごろ転がす。帰国のもの悲しさも相まって、少々ブルーな気分。地下鉄でエアポートバスのバス停まで行く。早朝にもかかわらず数人待っている。雨なので屋根のある場所に人も荷物もひしめき合う。

エアポートバスも2回目となると、勝手知ったるという感じで、運転手から切符を買い、荷物置き場にキャリーバッグを並べる。ほんの4日前の緊張と興奮を思い出す。見ようと思っていたところは大体訪れた。でももう1回来れたらいいな。

ウィーン空港に着くと、人の流れに付いて行く。受付手前で呼び止められる。楽友会館の時みたいに、自分のことではないと思っていた。再度呼ばれる。

「?」

横手にあるカウンターへ行くよう言われる。訳も分からず行ってみると、案内係が

「どうしましたか?」

「分からない。ここに来るよう、あの人に言われた」

「ここに荷物を置いて」

重量オーバーで、キャリーを奥へ持っていかれる。行きは持ち込みできたのに?と慌てるが、よくよく考えると、行きはまず最初に長距離路線の大型ジェットだったから、持ち込めたんだ。帰りはフランクフルト(乗り換え中継地)までの小型飛行機なので、キャリーが持ち込めないと気付く。

「日本まで自動的に運ばれますよね?」と確認する。

機内持ち込み用ショルダーと、土産を入れたエコバッグを持って改めて受付カウンターへ。

「液体は?」

「あります。ワイン2本」

と、バッグを開けて見せると、そのワイン、取り上げられてしまう。

「何故?」「どうしたらいいのか?」

と聞くも、持ち込めないの一点張り。楽しみにしていたウィーン産ワインをすべて持っていかれる。今回の旅、最大のショックかもしれない。飛行機に乗っている間中「がーん」が、頭の中に鳴り響いていた(帰国後、友達に話したら、当然だよ、知らなかったの?と驚かれた)。


行くぞウィーン ひとり旅 16楽友会館②

2023年05月25日 | 旅行

さあ、落ち着いて席に着こう。照明が落ち、舞台が輝く。和音が、メロディがあっという間に流れて去っていくのが惜しく感じられる。音が耳に届いては、ぽろぽろ零れ落ちていく。そんな零れていく音が目に見えたなら、ホールの黄金を反射して光り、美しいだろうと思う。

そんな空想をしながら上からピアニストを覗き込む。ベートーヴェンのソナタ、シューベルトの即興曲、その他、知らない曲。きれいやなあ。音がきれいなのか、ホールが美しいのか。そんなきれいが入り混じって、空間丸ごときれいやなあ。…まるでお上りさんの感想のようだ。演奏会の2時間、きれいだと惚けたり、現実に戻って客席を観察したり、ピアニストの指を見つめたり忙しい。アンコールも終わり、夜9時ごろになる。コンサートの終了を惜しむ気持ちと、暗がりの中一人帰る不安と、二重の意味で、帰りたくないなあと思う。

帰りのクロークでは私の印象が強力だったのか、それとも係員が優秀だったのか、私の姿を見ると荷物(エコバッグ)をすぐに渡してくれる。これだけの人がいて荷物と人物がすぐに一致するって、すごい技だと思う。

 

ホールを出て駅まで歩く。思ったより駅へ向かう人が少ない。コンサートの帰りらしき人の後ろにぴったりついて歩く。地下鉄も、まばらだが乗客はいて安心する。問題は降車後だ。アパートメントは駅前とはいえ、大通りを横切るのに地下道をくぐらなくてはいけない(信号はない)。夜の地下道怖いよお。壁には落書きがあって嫌な感じ。

怖いと思っていた夜の地下道だが、若い女性の一人歩きさえあり、誰も怖がっている様子がない。覚悟を決めて地下道に来たのに拍子抜け。でもやはり怖いので、若い女性に追いついて、後ろをくっついて歩く。私の方がよっぽど不審者だと思う。地下道を出るとアパートメントのゲートまで全速で走る。鍵穴が暗くてよく見えない。何度目かにようやく開いて、建物に入る。はぁ、安心。こんな時間に出歩いたことがない私は、暗がりの中、部屋へ登る階段の照明スイッチがどこにあるか分からない。暗すぎて、足元さえ見えない。階段下で怪しい動きをしていると、アパートメントオーナーの息子がたまたま通りかかって照明をつけてくれる。

 

今晩は、クロークで料金が払えるかドキドキして、音楽やホールのすばらしさにドキドキして、帰りの夜道にドキドキ、暗がりのアパートメントの階段にも。ドキドキのフルコースだった。無事に帰ってみると、あー楽しかったという感想。あと一晩寝たらいよいよ日本へ。


行くぞウィーン ひとり旅 16楽友会館①

2023年05月24日 | 旅行

いよいよコンサート会場へ。受付を終えたが、どの入り口から入ればいいか分からない。なんとなく前の人に付いて行く。途中カウンターがあり、呼び止められる。私のこととは思わず素通りすると、再度呼ばれる。えっ、私?

どうやら荷物を預けるクロークだったらしく、手持ちのエコバッグを預けるよう言われる。うーん、この肉臭いエコバッグを?昼ご飯の残り物をクロークに預けるのは私くらいだろうなと恥ずかしく思いながら、バッグを手渡す。そのまま行こうとすると、預かり料金を払うよう言われる。えっ?有料なの?そんなこと言われても…さっきカフェでコーヒーを飲んだことを後悔する。お金足りるかな。

クロークの料金表を見せられる。きっとチップも含めて多めに払った方が礼儀にかなっているんだろうけど、そんなことを言っている余裕はない。払えるか?全然スマートじゃないけれど、財布をひっくり返して、小銭を一枚一枚数えながら払う。小銭ばっかり山と積み上げて、とにかく既定の料金は足りた。セーフ…なのか?『優雅なマダムごっこ』はどこへやら。

 

ホールに入り係員に席を案内してもらう。2階で、ピアニストの背中を見下ろす感じの席。ピアニストの指の動きも見える。黄金のホールというだけあって、全体がキラキラしている。まだ時間があったので、客席をうろうろしながらホールを眺める。さっき小銭を積み上げたことも忘れて、王侯貴族の気分になる。

音楽にしても、建築にしても、自分を捧げて何か最高の物を作ろうとするエネルギーには圧倒される。その美しい作品にも心を動かされるが、その作品に詰まっているエネルギーを感じて私たちは力付けられるのだと思う。建築には全く興味もないが、そんな私でもホールを見ているとドキドキ高ぶる。


行くぞウィーン ひとり旅 15土産を買って、うろついて②

2023年05月23日 | 旅行

昼ご飯、どこのレストランにしようか。特にガイドブックを見るでもなく、行き当たりばったり。歩き疲れたあたりで、その場にあったレストランのテラス席に座る。

メニューが読めず、写真とともに書いてあるドイツ語を指して

「これがこの写真の物か?」

「違う」

えー?じゃあ、この写真のメニューはどれよ??説明されるが、よく分からない。私の理解が違っていたかと、別のウェイターさんにまた尋ねる。やはり違うらしい。ややこしい。

「じゃあ、この写真のを頂戴」

値段もわからず注文する。

ウィーンの名物料理と言えば、ウィンナーシュニッツェル。ウィンナーシュニッツェルとは、ウィーン風ビフカツもしくはトンカツのこと。皿からはみ出るほど大きい、というか平たく伸ばして大きくしたカツのこと。今までなんとなく食べ損ねていたが、最終日にしてようやくありつく。

それにしてもデカい(カツ)。

足もしんどかったので、休めるつもりでゆっくり食べるが食べきれない。包んでもらい、持ち帰る(明朝の朝ごはん…朝からカツか…)ことにする。ホイルに包んでくれる。持参したエコバッグに入れるが、ほのかに肉の匂いが昇ってくる。

 

コンサートまであと2~3時間ある。ベーゼンドルファーのサロンを外からのぞいたり(入る勇気はなかった)、メルセデスベンツ社のタンクローリーにびっくりしたり。工事現場に紅白の派手なタンクローリーがあったので、よくよく見ると、正面にベンツのマーク。乗用車以外にもイロイロ作っているのね。コンサート会場の楽友会館へ向かいつつ、街をほっつき歩く。

ユーロがあと少し残っていた。明日のエアポートバスの代金を取りおいて、残りはぱあっと(ぱあっというほどない)使ってしまうつもりで、カフェに入る。コンサート入場まであと30分ほど。懐具合を計算しつつ、コーヒーを注文する。使いづらい小銭、いっぱい余っちゃったな。


行くぞウィーン ひとり旅 15土産を買って、うろついて①

2023年05月22日 | 旅行

ウィーン観光も終盤になってきた。本当にあっという間だった。

今日は観光できる最後の日。最終日は帰るだけなので、今日はお土産を買いにスーパーへ行ったり、散歩したり、予定を決めずに過ごすつもり。夜は楽友会館でピアノコンサートがある。足は痛いし、少々お疲れ気味なので、朝はのんびり。荷物をまとめ、明朝のエアポートバスの時刻を調べる。

あっという間だったのに、ウィーンに着いた時のことが遠い昔に感じられる。時間感覚って伸びたり縮んだりするものだと思う。なんだか不思議な気分。コンサートに備え、少しお洒落して出かける。

スーパーではリクエストされていたジャム。その他チョコレートやインスタントスープ、土地の物ではないが、なぜか安かったキャビアの瓶詰。別の日に買ったウィーン産ワイン2本。これ以上は持って帰れない。

チョコレート、知人に差し上げる分はモーツアルト印のものだけど、友人・自宅用は(オーストリア産ではない)リンツの板チョコ、数枚。一般のスーパーだと思うが、壁一面にリンツの板チョコがならんでいて、その種類の多さに圧倒される。食べたいものすべてを買っていたら大変なことになるので、長い時間かかって吟味する。マヨネーズひとつでもたくさんの種類(ラベルは読めない)があって…もしかして高級スーパーだったかもしれない。見ているだけでも面白い。長期滞在ならもっと見知らぬものを食べられたのに、と残念に思う。

 

 


行くぞウィーン ひとり旅 14ウィーン少年合唱団とベートーヴェン④

2023年05月18日 | 旅行

バスを降りて、『迷子症』の私は慎重に調べた道をたどる。観光客が見当たらなかったので、シェーンブルン宮殿の時のように、誰かに付いて行くことはできない。それでも、ほぼ迷わずにホイリゲ(ベートーヴェンの元住処のひとつ。現在は酒場)の前に出た。ちょっと寄り道して、一杯ひっかけたかったけれど、混雑しているようなので素通り。

 

その少し先に、ベートーヴェンの遺書の家と呼ばれる、元住処がある。ガイドブックの通りに入場料を準備していたが、ちょっと値上がりしたよう。財布のお金が足りなくて、空港の時のように首からぶら下げて服の下に入れていたユーロを、ズルズルと取り出して支払う。恥ずかしい。

使ったピアノ、ベートーヴェンが書いたとされる遺書などが展示されている。音楽家なのに耳が聞こえなくなっていく苦悩、そして、自分が面倒を見ている甥の奔放すぎる行動など、辛いことの多い人生の中、最期まで音楽家であり続けた。投げようと思った人生を投げずに自分の中に収めた。変人で、周囲との軋轢もかなりあったらしいけれど、それでも生きて作り続けてくれて有り難いと思う。さらに、その作品が200年以上も時代に埋もれず残り続けてくれて良かった。私はどれほどその作品に救われたことか。耳が聞こえなくなったという状況を体感できる装置も置いてある。直筆の楽譜も。彼の存在のよすがを目に焼き付ける。

 

遺書の家を出て、ベートーヴェンの散歩道へ。行き過ぎたようで、周囲が畑になっている丘に登ってしまう。明らかにおかしい?と戻って、本物の小径に出る。人がほとんどいない林の小径。たかだか200年前、この木々たちは生きていたかもしれない。私は今、彼と同じ木を眺めているかもしれない。風景を共有しているかもしれないと思うと、心が浮き立つ。まるで恋をしているみたい?

彼の胸像にはちょっと興ざめだが、ベンチに座ってぼんやり過ごす。気が付くと肌寒くなり、日も陰ってきた。帰ろう。いつかまた来よう。

帰りのバスの中、案内アナウンスのドイツ語を真似てつぶやいていた。無意識に。正面に座っているおばあさんに笑われ、恥ずかしかった。

「どこ行くの?」

「ハイリゲンシュタット駅」

下車する時、駅はあっちと、指差しで教えてくれる。

 


行くぞウィーン ひとり旅 14ウィーン少年合唱団とベートーヴェン③

2023年05月18日 | 旅行

近くのレストランに入る。ガラス越しに、ピザを焼いているのが見られる。メニューもパスタやピザと言ったイタリアンなものが多い。食べ慣れているので安心。

注文後、すぐにトイレ。ガイドブックには有料のトイレの話が載っていたので(散策中、それらしいトイレがあったが、利用の仕方が分からないので寄ることはなかった)、ウィーンにいる時は、行きたくても、行きたくなくても、お店や観光施設に入るたびトイレに立ち寄った。お店のトイレは、日本のそれと同じくらいきれいで、不快な思いをしたことがない。逆に話のネタとして、一度くらいトイレで戸惑う経験があっても良かったかもしれない。

席に戻って待っていると、パスタが運ばれてきた。んー、ラザニアを注文したと思うんだけど?私が固まっていると、「間違ってました?」と聞かれる。注文票にも、私の注文したものが正しく表記されている。ラザニアじゃないよなあ…?と思いながら、「これでいい」と返事をする。ここでは、パスタのことをラザニアというのか?あまり深く考えず、まあいいかと食べ始める。後で調べたが、やはりパスタはパスタ、ラザニアはラザニアである。何故パスタが出てきたのかは、いまだに謎。

やはりここでもチップはなしで、メニュー表通りの金額を支払った。とは言え、チップは本当に要らないのかと疑念がぬぐい切れなかったので、お札で払って様子を見る。きちんと額面通りのお釣りが戻ってくる。

さてと、午後はベートーヴェンの散歩道へ行こう。特に何があるわけでもない散歩道…なのだが、今回のメインイベントとして私は位置付けていた。電車とバスを乗り継いで、ウィーン郊外のハイリゲンシュタットへ。有名な話なので知っている人も多いと思うが、ベートーヴェンは、聴覚を失ったことの苦悩から、ここで遺書を書いている。遺書も含めてベートーヴェンの住んでいた家が公開されており、そこから徒歩圏内にベートーヴェンの散歩した小径がある。途中には、彼の住んでいた家(現在はホイリゲ・酒場)もある。彼は引っ越し魔だったので、そこら中に元住処がある。

 

 

 


行くぞウィーン ひとり旅 14ウィーン少年合唱団とベートーヴェン②

2023年05月17日 | 旅行

大きな大きな、一抱えもある金ぴかの聖書を恭しく持って神父さんらが入場。煌びやか過ぎる。さすが王宮。コーラスは有名なだけあって、やはり上手。教会とはきれいに響く造りになっているのだろう。ソロの声なんて美しすぎて、少年の顔が見たい…けど見えない。合唱は美しかったけれど、本当はミサであり、コンサートではない。宗教に関心のない私には、祈りの部分でやっていることがよく分からなかったので、やはり立ち見で充分だったと思う。

ところで王宮のミサなら、誰か王族の人が来るのかと思っていたけれど、そうでもない様子。観光客ばかりだったと思う。本当のところはどうだったのか?誰か教えて欲しい。

 

王宮を出て、ウィーン大学近くのベートーヴェンハウス(パスクァラティハウス)へ向かう。地図を頼りに近くまでは辿り着く。近くまでは。そしてお決まりの迷子となる。地図によると、この道沿いにあるはずなのだが??と同じところをぐるぐる。

周囲を見回すと、道路横に土手があり、土手の上を人が歩いている。その先には観光地マークの旗がぶら下がっている。あれだー。

アパートメントと同じ、ロの字型の建物。門をくぐると中庭らしき空間に出る。看板に沿って階段を上り、オーストリア式数え方で言う4階に受付がある。この部分だけが展示場になっており、他は一般住居みたい。この床を歩いたのか、このピアノを弾いたのかと、彼の足跡をたどっているようで嬉しくなる。自筆の楽譜も残されている。ワイルドすぎて読めないけど。

こうした自筆の楽譜を見るたびに思うこと。『音楽に長けた○○夫人は、できたばかりのベートーヴェンの楽譜を初見で弾いた』という話があったりするけど、それ本当?きれいに印刷されている楽譜ですら、初見は無理です、私。音楽家ではなくても、そんなツワモノがいたのか、と疑うやら感心するやら。


行くぞウィーン ひとり旅 14ウィーン少年合唱団とベートーヴェン①

2023年05月16日 | 旅行

明日は早起きをして、ウィーン少年合唱団の声を聴きに行く日。早起きできるだろうか?と少し心配しながら床に就く。

 

いつもと同じ朝食…本当に同じで少し飽きてきた…をお腹に詰めて出掛ける。

王宮のミサは9時15分ごろから。無料の立ち見で良い場所を確保するため、早めに並ぶつもり。ネットでは8時半には並ぶ方がいいと書いてあったので、張り切って7時半にアパートメントを出る。

「?」

20分後には、王宮前に着いていた。うまく時間がはかれない。一昨日下見をしたので、今回の旅の中では珍しく迷わず歩く。ちょっと早すぎたので、リングを散策する。美術館、博物館が向かい合って並んでいるが、知らずに通れば、これが宮殿と勘違いしそうな豪奢な建物。向かい合った真ん中が公園になっていてマリアテレジアが座っている。彼女が見ているのは道を隔てて正面の王宮。

その王宮内には散歩している人、ジョギング中の人が割といた。それにしてもごみが多いな。

礼拝堂前に着いてみると誰もいない。しーんとしている。本当にここで合ってるよね?迷わず来たつもりだけど、実は迷ってたなんてオチはやめて欲しい。一人で座っている。四角い石の建物、石畳など、角角(かどかど)に囲まれて背筋が伸びる。ひんやりした石の冷気に当てられて、体も心も静まる。

しばらく待っていると夫婦二人連れがやって来る。耳を澄ますと日本語を話している様子。少し立ち話。開始1時間前、礼拝堂から人が出てきて何やら言っている。近寄っていくと、ここに並ぶようにとジェスチャーで示される。2番目に並ぶ。これでベストポジションを獲得!

「あとどのくらいで始まる?」

「9時15分スタート。あと1時間くらい」

長いなあ。この時点で礼拝堂前にいたのは、私を含め3組ほど。その後列は長くなり、最終100人弱程が列を作った。そして入場。入口で旅のよすがにということか、0ユーロと書かれた入場チケットの半券を渡される。気が利いている。

立ち見の最前列で見る。靴ずれが痛かったので、持参したスリッパに履き替える。


行くぞウィーン ひとり旅 13ナッシュマルクト

2023年05月15日 | 旅行

午後は市内散策。あさって聞きに行くコンサートの会場、楽友会館の下見。地下鉄のどの出口が近いのか分からず、大回り。わたしはどこへ行くにも、正しい(最短)ルートを必ず外すような気がする。

その後ぶらぶらしていると、ナッシュマルクトという市場に出る。人が多いのでショルダーバッグを抱えるようにして歩く。おいしそうなものがあれば試そうと思っていたけれど、ケーキにしてもチーズにしても塊が大きすぎて、食べきれる自信がない。見るだけにしておく。こういう時、複数人でいるとシェアできていいと思う。

歩いていると、後ろから二人組のお嬢さんに声をかけられる。店の場所が分からなくて困っている様子。

「○○という日本料理の店へ行きたいが、知っているか?あなたは日本人か?」

そうだと答えると、急に親し気に「日本人の友達がいる」など、いろいろおしゃべりを始める。何故いかにも観光客の私に道を尋ねる?変だな。と思ったけど、話を合わせる。鞄からガイドブックの地図を取り出し「現在地はここで…」と説明をすると、突然「もう分かった」と去っていく。

「?」

その時は気にも留めなかったけれど、その晩よく考えると、もしかして泥棒だった?と思い当たる。私に道を聞くのも、地図を見て一瞬で分かるのも変な話。地図を取り出す時、彼女らの後ろを向いて(鞄の中身が見えない向きで)出したり、無意識に鞄を抱えていたことでトラブルを未然に防げたのかもしれない。財布も大丈夫だった。あっぶな~。

 

歩き疲れて、ウィーン大学の中庭に入り込んで休む。中庭は芝生が広がっていて、ブルーの移動式チェアーがいくつも並んでいる。好きな場所に移動させて、仲間と、あるいは一人で座ったり寝転んだり。とても自由な感じ。私も関係者のふりをして座る。夕方寒くなってきたので、明るいうちにアパートメントへ戻る。


行くぞウィーン ひとり旅 12シェーンブルン宮殿③

2023年05月12日 | 旅行

煌びやかな部屋も、観光客としてたまに見学するのなら『優雅で高貴な私ごっこ』ができて楽しい。ただ、根っからの庶民である私は、毎日ここで過ごしていたら落ち着かないかもしれない。それとも慣れてしまうのだろうか?豪華さにも、周囲の自分に対する態度にも。

 

予定していた時間を大幅に過ぎ、出口に着いたら遅い昼ごはんの時間。レストランに一人で入るのは、勇気がいる。けれど、宮殿内のレストランにエイっと足を踏み入れる(屋外テーブルだけど)。良いかどうか分からないが、空いているテーブルについて、のんびり待つ(内心ドキドキ)。すぐにウェイターが来る。メニューはザ観光地なので、当然どれも高い。フライドポテトやウィンナーなどのつまみ風の盛り合わせとゲシュプリッターというワインの炭酸割を注文する。ここでも、ゲシュプリッターという単語すら通じなくて、メニューを指さす。私のドイツ語…というか単語の発音すら壊滅的と分かる。トホホ。本当はワインが飲みたかったけれど、ひとり旅で昼間から酔っぱらうのも危ないので、我慢する。

楽しそうにしゃべる人、黙々と食べる人、慣れないのかオロオロする人、いろいろ。快晴、日差し強めだったけど、気持ちの良い日。優雅なマダムごっこは継続中なので、がつがつ食べないよう注意する。びっくりするような長いウインナーにお腹がふくれる。

懸案のチップ問題も忘れてはいけない。みんなはどうしているんだろ?と周囲の様子を観察する。どうもチップを渡しているようには見えない。客が支払いをすると、ちゃんとお釣りを返している。別のテーブルでも、小銭を数えて払っている。チップはいらないのかな?恐る恐る紙幣を出すと、きちんとお釣りをくれた。ガイドブックの『チップ要』は、何だったんだろう?観光地だから?分からないままお釣りを受け取る。


行くぞウィーン ひとり旅 12シェーンブルン宮殿②

2023年05月11日 | 旅行

シェーンブルン宮殿とは、マリアテレジアらハプスブルグ家君主の離宮。そしてマリーアントワネットが幼少を過ごした宮殿でもある。マリアテレジアの好きな黄色、テレジアンイエローと呼ばれる黄色の建物。

ところで、もし私だったら?ピンクが好きなのでピンクの宮殿にする?多分しないな。黄色と聞いてどんなに派手な宮殿かと思ったけれど、実際見てみると、そうでもなかった。長い間その場に存在してきた風格というか、堂々とした趣がある。ちゃんと周りの風景になじんでいる。もしピンクにしたとしても、将来、風景に溶け込んで風雅な宮殿と評価されるのだろうか?なーんて、ピンクの姿を想像する。

 

内部の見学は、イヤホン式オーディオガイドを聞きながら巡る。オーディオガイドは、各言語がそろっている。もちろん日本語も。ちっとも役に立たない私のドイツ語を一度でも使ってみたくて、イヤホンガイドを受け取るとき「Japanisch bitte」と言うつもりで、口の中で準備する。いざ受付のお兄さんを前にした途端、「Japanese please」と口走る。ああ残念。単語すらいえなかった。

 

昨日のモーツアルトハウスでも思ったが、従者やメイドの控の間だけでも、うちの寝室より随分広い。こんな広々したところに住むと、心も広々おおらかになるのではないか。目先の散らかりが感じられないだけでも、注意したり、何度も怒ることがなくなるかもしれないよなあ。細かいことを気にしたり、いら立ったりするのは、うちが狭いから…なんて思いたくなる。

さあ、内部へ。

各部屋やたらと肖像画が多い。そして、絹や漆。絵や肖像画を描かせたり、宮殿を建て増しさせたり、絹や漆で飾り立てたりすることに人生の大半をつぎ込んでいたのではないだろうか?と思うくらいたくさん。権威を保つことを自分の使命として、自分(国)を大きくすること、見せることを人生の目標として生きた。娘たちも政略に利用し、『娘たちが夫と神に仕え不幸な人生を送っても、魂が救われるのなら満足です』って、きっと本気の言葉なんだと思う→マリアテレジアのこと。魂が救われる状態って、何を指すんだろう?

国や時代、立場によって、大切にしたいものって大きく変わる。


行くぞウィーン ひとり旅 12シェーンブルン宮殿①

2023年05月10日 | 旅行

オーナーは、シェーンブルン宮殿まで徒歩で10分くらいと言っていた。足の靴擦れは痛むが、ゆっくり歩いていくことにする。昨日、おとといは散々道に迷ったが、今日は大通り一本道に沿って行くだけなので、迷いようがない。ふふん♪

アパートメントの建物を出るには鍵付きのゲートをくぐるのだが、鍵がうまく開けられない。ガチャガチャしていると、通りすがりのおじさんが、開錠のコツを教えてくれる。ドイツ語で。よく分からないが、分かったふりをしてふんふん頷く。

ヨーロッパの5月は肌寒いと思っていたが、この日は半袖でもいいくらいの陽気。迷うはずのない通りをひたすら歩く。前方に宮殿入り口だろうか、洒落た造りの受付が見えてきた。中には、券売機らしきものが並んでいる。中に入ってみると券売機、さらに奥には地下へ通じるゲート??

宮殿は地下…のはずはない。よく見ると、昨日利用した地下鉄の改札に似ているような…?見上げると、シェーンブルンという文字。もしかしてシェーンブルン駅だったりして?どおりで周囲の人が受付(と思っていた建物)に入らないはずだ。ちょっとおしゃれな感じの外観だったので、宮殿の一部だと思ったよ。

気を取り直して見回すと、駅左手に道が続いていて、観光客がたくさん歩いている。間違えたのは私だけなんだろうかと思いつつ、みんなの後についていく。ようやく本物の宮殿にたどり着く。写真にあった通り、本当に黄色い宮殿。