よろず戯言

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バケモノの子

2015-08-06 00:30:04 | 映画

先日の休みに息子と一緒に映画を観に行った。

細田守 監督最新作、“バケモノの子”だ。

時をかける少女”,“サマーウォーズ”,“おおかみこどもの雨と雪”に次いで、

満を持して公開された、細田監督の最新作。

キャッチコピーは、“キミとなら、強くなれる。”。

 

 
3年前、おおかみこどもの雨と雪を初めて観て衝撃を受け、

またそのときに寄せられたコメントなどから、

実は凄い方で、ファンが大勢居ると知った、細田守監督。

ジブリアニメが衰退顕著な昨今、世界に討って出れるアニメ映画を挙げれば、

真っ先に思いつくのが、細田監督作品。

ただ、自分がアニメ業界に明るくないので、

この人しか思い浮かばないのが現状ではあるのだが・・・。

 

最初に観たのは劇場に設置されたチラシだったろうか。

でもって いち早く、細田アニメのファンであるにょきさんに伝えたと思う。

今回はこれまでのように、少女マンガというかオタクアニメっぽさが払拭されていて、

大人でも堂々と鑑賞に行けるような内容だ。

息子にこの作品を、夏休みに観に行くか訊くと、「観たい!」と即答だった。

ちなみに、ポケモン映画は「どっちでもいい。」だった。

夏休みに入って最初に息子と遊べるようになったその日、さっそく鑑賞に行った。

 

 

母親の急死によって、ひとりぼっちになってしまった少年、蓮(れん:宮崎あおい)。

親戚から逃げ出して、夜の渋谷の街を彷徨っていると、

路地裏で不思議な世界に迷い込んでしまう。

そこは人間とは相容れない、バケモノ達が住む世界だった。 

そこで出会った粗暴なバケモノ、熊徹(くまてつ:役所広司)に、

ひょんなことから、弟子入りすることになった。

蓮は熊徹から、“九太”と名付けられる。

 

 

バケモノの世界では十万の住民を宗師と呼ばれる人物が統べる。

熊徹と九太が暮らす、渋天街(じゅうてんがい)の宗師(津川雅彦)は、近々引退することを表明していた。

宗師になるには、絶大な強さと品格が求められ、弟子が居ることが条件。

そこで次期宗師の候補として名前が挙がったのが、猪王山(いおうざん:山路和弘)。

強さは渋天街一、品格も備え、弟子も多数抱える猪王山。

誰もが次期宗師として、異論を唱えることはない。

だが、そこにもうひとり、宗師候補に名乗り出たのが熊徹だった。

 

 

熊徹は確かに強い豪傑、猪王山に勝つ可能性もある。

だが粗暴で品性の欠片もなく、そんな性格が災いして、弟子はひとりも居ない。

そんなとき突如現れた人間の子ども九太を、待望の弟子として育てることにしたのだった。

だが、九太はひ弱な人間の子。

こんな ひ弱な人間が、屈強なバケモノのなかで強くなれるはずがない。

それどころか、バケモノにとって ご法度ともいえる人間の弟子。

人間は心に闇を抱える。

闇を抱えた人間は、バケモノをはるかに凌ぐ恐ろしい存在となる。

九太も将来、そんな闇を抱えるやもしれん・・・。

周りは人間の子どもである九太をよく思わず、熊徹の行動に異を唱える。

 

熊徹は単に猪王山との大きなケンカに勝ちたいだけ。

宗師の座なんか、ハナから興味はない。

そのケンカのため、なんとか条件を満たすため、九太を弟子として育てようとする。

だがそこは根っから不器用で粗暴な熊徹。

弟子の指導の仕方がまったく解らない。

ことあるごとに、衝突する熊徹と九太。

それを呆れて見守る、熊徹の親友、百秋坊(ひゃくしゅうぼう:リリー・フランキー)と多々良(大泉洋)。

だがなぜか現宗師は、熊徹にあれこれと助言する。

 

 

どっちが師匠でどっちが弟子だか判らない、熊徹と九太。

ふたりのドタバタ修業は月日を重ね、なんとなく絆が芽生えていく。

ひ弱だった人間の少年がたくましくなり、

熊徹の評判がだんだんと上がり、

なんと熊徹の元に弟子入り志願するバケモノが長蛇の列を作るまでに!

 
九太(染谷将太)が17歳になったある日、ふとしたことで渋谷の街、人間の世界に戻ってしまう。

そこで彼は高校生の少女、楓(広瀬すず)と出会う。

9歳のときにバケモノの世界に迷い込んで以来、学校に行っていない九太。

彼は漢字が読むことができず、楓から勉強を教えてもらう。

そうして、学ぶことの楽しさを知った九太は、

毎日、渋天街と渋谷、バケモノの世界と人間の世界を行き来し、

熊徹や弟子達と日々の修業をしつつ、楓から勉強を教えてもらうのだった。

 

 

人間の世界で勉強して、いろんなことを知ってゆき、

楓は九太に大学に行って、さらにたくさん学ぶことを勧める。

大学進学のためには、きちんと人間の世界で戸籍を置かなければならない。

役所でその手続きをする際に、

両親の離婚によって、九太が幼い頃に家を去っていた父親の存在を知る。

ほどなくして離れ離れだった父親と再会。

ずっとお父さんに会いたかった九太、ずっと蓮のことを探していた父親。

人間の世界で、父親と共に暮らすことを決意する。

 

ここ最近 修業を抜けがちで、毎日どこかへ行く九太に、熊徹は不機嫌になり、

九太もまた、粗暴な熊徹ではなく、優しい本当の父親の方に心移りし、

ふたりの距離はだんだん離れていってしまう―。

 

 

そんなある日、急遽、宗師が引退を宣言する。

なにも知らない九太が渋天街に戻ると、

闘技場で今まさに、次期宗師を決定する、猪王山と熊徹の戦いが始まろうとしていた―。

 

 
面白かった!

おおかみこどもより、断然解り易くて楽しめた。

子どもにとっては、間違いなくこのバケモノの方がいい。

とくに男子には、戦いのシーンや、修業のシーンなど、奮起させられる場面がたくさんある。

バケモノの子どもたちから、いじめられていた九太が、

修業を積むうちに、たくましくなり、それらをまとめてのし、

逆に友達になっていくという、昔の不良漫画のような爽快な描写や、

擬人化された動物がユーモラスなバケモノ達も見ていて楽しい。

 

 

大人が観ても楽しい。

だが、やはりそこは細田作品、考えさせられることも多い。

今回もまた“家族の絆”がテーマで、

もっと具体的にいうと、“親と子ども”の絆。

さらに掘り下げると、“息子に対する父親の在り方”になろうか。

監督自身が現在の家族の在り方に疑問を抱き、脚本を書き制作に当たった。

親の子への対応、接し方を鑑賞者と共に考えたいと語っているように、

親子を超越した絆の物語が展開されていく。

 

 

キャスティングも絶妙だった。

プロの声優さんと俳優さんを織り交ぜて、なかなかどうしてしっくりきていた。

役所広司は、パコと魔法の絵本清須会議での演技で、

あの熊徹の粗暴な喋り方は板についていた。

 

九太の少年期を、女優の宮崎あおい。

前作、おおかみこどもの雨と雪で、ふたりの母親、花を演じ、

今回もまた、細田作品にキャスティングされた。

宮崎あおいだとは判らなかった。

たまごごはんを頬張って、「おえぇぇぇぇ!!!」って嗚咽するシーンが笑える。

 

 

百秋坊役のリリー・フランキー。

実写で役者として登場すると、その台詞など、どうにもヘタに見えるものだが、

今回は知的で穏やかな役柄もあって、淡々とした喋りに違和感を感じなかった。

 

多々良役の大泉洋。

これがプロの声優さんだとばかり思っていた。

この声、洋画の吹替えなんかでよく聞く声だよな~。

・・・って思っていたら、なんと大泉洋だった。

豆腐小僧でも、死神役で異彩を放っていたっけ。

主演の深キョンが棒だったから・・・ってワケじゃあないぞ。

ううむ・・さすが劇団員上がり、声優業もなかなかのもの。

 

 

宗師役の津川雅彦。

これまたプロの声優さんだと思っていた。

あの飄々とした しゃがれ声、これはキートン山田さんに違いないっ!

そう思い込んでいたのに、最後のスタッフロールで津川さんと知って驚く。

ああー!そういえばまんまそうだわ。

 

猪王山役に、山路和弘。

昨年のNHK大河ドラマ、軍師官兵衛で、安国寺恵瓊を演じた役者さん。

このとき初めて知ったのだが、役者業以外にも、ナレーターや声優業もこなす方で、

洋画や海外ドラマの吹替え多数、実は相当なキャリアを持った方だった。

その山路氏が、冷静沈着でありながら、どこかに闇を抱える猪王山をカッコ良く演じる。

 

 

 

ラスト、熊徹の不器用だけど熱い魂のこもった九太へのメッセージは泣ける。

これは是非、息子を連れて、お父さん方に観てもらいたい作品だ。

とくに、息子を殴ったこともないような、軟弱な父親に観てもらいたい。

息子の教育をブライトさん・・いや熊徹のようなひとにやってもらうか?

あ、もちろん、お坊ちゃんが手を挙げるような必要がない良い子だとしたら別だけど。

 

そんな冗談は置いといて・・・、

学校でも教師が生徒に手を上げたり、熱く叱ったりができない昨今、

昔は学校の先生が、周りのお年寄りやおじさんが、

周りの大人が叱ってくれて、子どもが大きくなっていった。

それがなくなり、それどころか実の親子の絆すら希薄になりつつある。

叱られなくなり、孤独になって脆くなった子どもは、

困難を乗り切る術を知らず、さらに孤立してゆく。

大人は大人で、そんな子どものSOSに気付かず、手を差し伸べる術を知らない。

そんな現在の大人と子どもの関係に、親子の在り方に一石を投じる作品だった。

 

 

 


購入したグッズ。

タオルと熊徹の刀のペン。

それと息子に買ってあげた、劇中のマスコットキャラクター、“チコ”のぬいぐるみ。

 
 

おおかみこどもの時と同様、コラボされたポップコーンセットがあったので購入。

紙製のトレーは裏側は渋天街の門がかたどられた凝った造り。

 

そのポップコーンセットにオマケで付いてくる巾着。

チコがプリントされている。

 

カジュアルショップ、Right-onとコラボしたTシャツも販売されていた。

 

なにこれ!?

熊本県とのコラボ!?

熊徹だから、くまモン!?

映画の半券添付で応募して、抽選で熊本の肉が当たるキャンペーン!

あか牛!!

 


上記のポップコーンセットのトレー、部屋に放置していたら、

お母んが勝手に部屋を片付けて、こんな小物入れにしてやがった・・・。

かんべんしてくれ・・・。

 

 



4 コメント

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見に行って本当によかった (トモユキ)
2015-08-10 23:39:10
お盆休み初日な上、TOHOシネマズのメンズデーなので、
今年2回目となるポケモンに続いて見てきました。

声は俳優さん中心でしたが、違和感がないどころか、
皆さん見事に役にピッタリで、すごく印象的でした。

まあ、それ以上に印象的だったのは、
熊徹、百秋坊、多々良、楓といった、
九太の「親役」となった人達ですね。
自分が子供だった頃を思い出して、
思わず泣きそうでした。

中でも熊徹は、若き日の父と似ている部分が多く、
つい先日三回忌を迎えたばかりで、
父の事が頭の中でグルグル回っていたこともあってか、
特に感情移入してしまいました。

手が出るのが早くて、言葉も不器用で、
他の人と衝突することが多くて、
軟弱だった自分も、よく殴られたものですが、
人一倍家族の事を気にかけていただけでなく、
身内の中でただ一人「強い子に育って欲しい」と
願い続けていたので、あれが父なりの愛情の
注ぎ方だったのかなと、改めて思えるようになりました。

自分は今でも、母親譲りのおっとりさんですが、
ある趣味を始めて以降は、体育会系の父親譲りの
滾る熱さも目覚めて、ああ、自分は間違いなく
父の子だと強く感じるようになり、
更に今回、この映画を見て、
少し救われたような、そんな気がしました。
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ポケモンも今度観ますよ ()
2015-08-11 22:23:05
トモユキさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
 
トモユキさんも観られました~。
てゆうかお盆休み早いですね!
かなりの大企業にお勤めでいらっしゃいますね。
 
お父様が、熊徹に似ていますか!?
これは なかなかですね。
今の時代、ああいった人はなかなかいないですからね。
うちの親父も若い頃はかなり無茶苦茶・・・
いや、還暦過ぎた今でも無茶苦茶だわ。
はたしてトモユキさんみたく、うちの父が他界した後、
今の無茶苦茶から何か家族愛のようなものを感じ取ることができるだろうか・・・?
たぶん・・・ないな。
うちの親父に限っては。
 
境遇や置かれた立場によって、見方の変わる作品だと思います。
トモユキさんもいずれ結婚なさって、ご自身の子どもができたときなど、
またガラリと見方が変わるはずですよ。
そのときは自身とお父様、そして息子さんと重ねて、
より深く楽しめるのではないでしょうか。
 
お盆のこの時期、きっとお父様も満悦されていることでしょう。
ただ、カートのことかしら?
あまり熱くならないように気を付けましょう。
返信する
早く観に行きたい!! (にょきさん♪)
2015-08-14 19:45:37
早々に観に行かれたのですね!
私はまだ観に行けてないので、ブログの内容はパスさせて頂きました。
※ネタバレ含んでいそうなので。。。

劇場アニメも完全に世代交代した感じですね。
以前なら、宮崎アニメ・ジブリアニメに期待もしていた物ですが、
今の期待は細田アニメに移ってしまった様な。

ジブリ内での世代交代も結局は上手くいかなかった様で、
この先、ジブリは何処に行くんだろうか?
※ジブリも劇場アニメばかりではなく、TVアニメの下請けもしてますが。

ちなみに・・
先日、NHKの「プロフェッショナル」と言う番組が細田守氏を取り上げ、
そこで始めて知ったのですが、
細田さん、あのジブリアニメ「ハウルの動く城」の監督を務める予定だった
そうですね。ジブリからも公式発表されていたとか・・

ただ、当時のジブリは「千と千尋の神隠し」の追い込みで忙しく、
まだ企画段階の細田版「ハウルの動く城」に割ける人も満足に居らず、
細田さん自身がプロデューサーみたいな動きまでしなければならず、
結局は行き詰って、細田版「ハウルの動く城」は中止となった様ですね。

細田さんに次回作の監督を依頼するあたり、
ジブリも先見の目があったとは感じますが、
そのあたりで上手く対応出来なかったのは残念だったのか?
或いは、ジブリ=宮崎駿氏の色に染まらなかった方が良かったのか?

今のジブリの作風を見る限り、私はジブリから離れた方が、
結果的には良かったのでは無いかと思いますね。

この細田版「ハウルの動く城」の企画中止は細田さん自身も傷ついて、
誰も自分を信用してくれないだろう、表立ってのアニメの仕事は無理だろう
とも思っていた様で・・

それでも、新たな劇場アニメの話が浮上し、
但し、ミニシアター規模、全国でたった21館で上映開始、
それが「時をかける少女」。(ジブリの同時期はゲド戦記)

当時を思い起こせば、確かに「時をかける少女」って当初は全く目立たず、
私の世代では、どうしても「原田知世」さんの実写イメージが強くって、
何でわざわざ今更アニメ映画化・・とも思っていましたが、

雑誌などでもジワジワと「面白い」との話題が掲載される様になり、
最終的にはDVD発売前までの9ヶ月のロングラン、100館での上映と、
細田さんの名前が知れ渡るきっかけになりました。

※宮崎駿氏の様に一般にも知れ渡るきっかけは「おおかみこどもの雨と雪」
でしょうかね。

さて・・
今まで夏アニメと言えば「ポケモン」しか興味が無かった長男も、
中学生になった今年、先日の「サマーウォーズ」を観て以降、細田アニメに
目覚めた様で、初めて「ポケモン」以外のアニメである本作を観たいと
言い出しました。(当然「ポケモン」も観るらしい)

長女と観に行く約束をし、嫁に連れて行ってもらう相談するそうな・・。
おいおい・・親父も観たいんだが・・。

では~。
返信する
ラピュタとタヌキ合戦が好き ()
2015-08-14 22:54:08
>にょきさん
コメントありがとうございます。
 
雑誌や映画サイト、チラシで書かれている程度の、
ストーリーの大筋を語っているだけで、
核心に迫るネタバレは文章にしていませんが、
どうせなら予備知識なしで鑑賞に挑んだ方が面白いと思いますので、
まあ文章隅々まで読まないでいた方がいいかもしれません。
 
ハウルの監督予定だったというエピソードは、
自分も最近なにかでそれを読みました。
ただそこの記事では、途中まで制作していたにも関わらず、
途中で交代させられたみたいに書かれていました。
ああ、それであのアニメ、酷いことになってたんだな・・・と納得しました。
 
ジブリに愛想尽きたのがハウルでした。
ああ宮崎アニメ終わったなと。
その後のポニョもテレビで観たけれど、まったく意味不明。
もうその後の作品はスルーでした。
ただ高畑監督のかぐや姫は観ましたし、あれは面白かったと思いました。
 
そういや時をかける少女、まだ観てないなー。
サマーウォーズの方は未だに食指が動きませんが、
時をかける少女の方は観たいですね。
 
バケモノの子、少女要素が低いですが、
にょきさんもきっと楽しめると思いますので、
是非楽しんできてほしいです。
どうせなら一家で行ったらいいのに。
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