むかし、ある豪商の屋敷に、お菊という名の女中が居た。
ある日お菊は、主人が大切にしている10枚組の皿のうち一枚を過って割ってしまう。
主人から皿を割ったことを厳しく責め立てられたあげく、折檻までされたお菊は、
失意のあまり、その日の夜、屋敷の井戸に身を投げて自殺する。
それからというもの、夜になると屋敷の井戸に女の亡霊が現れ、
「いちま~い・・・にま~い・・・」と皿を数える、おどろおどろしい声が響き渡る。
お菊の霊が無念のあまり、夜な夜な井戸で皿を数えているのだという。
やがてその豪商は衰退し、滅亡してしまう・・・。
・・・・・。
子供の頃に聞いた(読んだのかも?)、怪談話・皿屋敷のお話はこんな感じだった。
実はこの皿屋敷、大まかな部分が類似・共通し、細かなディテールや事後談ありなど、
ストーリーに多少の変化があれど、日本各地にその言い伝えや伝説が残っており、
最も有名な東京の“番長皿屋敷”はじめ、元祖説が有力な、兵庫の“播州皿屋敷”、
その他にも中四国・九州の西日本を中心に、日本各地に40以上もの場所で、
その言い伝えが残っている。
そして自分の住む福岡県にも、この皿屋敷伝説があった。
しかもすぐ近所の、嘉麻市に!
昨年夏に、嘉麻市の碓井(うすい)にある織田廣喜美術館へ、
大河原邦男展を観に行ったとき、道路に設置されている案内標識に目が止まる。
「皿屋敷跡」。
!?
皿屋敷だって?
皿屋敷て、あの番長皿屋敷の?
え、あの話って福岡で、しかも碓井にあったの!?
そんなわけで初めて福岡に存在する皿屋敷伝説を知ることになる。
ちなみに全国各地に類似の伝説があることを知るのは最近になってから。
で、嘉麻市の皿屋敷の話は、自分が子どもの頃に聞いたのとちょっと異なる。
>時は元禄、清左衛門という豪農が居た。
>清左衛門は家宝の10枚組の皿をとても大切にしていた。
>ある日、屋敷に来客があり、清左衛門は客に家宝の皿を自慢げにお披露目する。
>宴が終わり客が帰った後、家宝の皿が一枚足りないことに気付く。
>
>すぐに女中のお菊を呼び出し、皿を一枚どこへやったのか訊ねる。
>お菊が言うには、皿を片づけたのは奥様だという。
>清左衛門は妻を呼びつけ、皿を一枚どこへやったのか訊ねると、
>奥様はお菊をにらみつけ、皿を片づけたのはお菊だと言い張る。
>
>お菊の言い分は聞き入れてもらえず、清左衛門と奥様に激しく責めたてられるお菊。
>皿を紛失した罪を着せられたお菊は、失意のあまり、
>その日の夜、屋敷の井戸に身を投げて自殺する。
>以来、夜になると、井戸にお菊の亡霊が現れては、
>「いちまい・・にまい・・・・・・きゅうまい・・・」と、皿を数える声が屋敷に響き渡ったという。
>
>お菊には三平という許嫁が居た。
>三平はお菊の死をひどく悲しみ、成仏できない彼女を弔うため、
>お菊の母親と共に、四国八十八カ所巡りの旅に出る。
>長い月日をかけて巡礼を終えた二人は、帰路に就く。
>四国から本州に渡り、播磨の国にたどり着いたとき、お菊の母親が病に倒れてしまう。
>
>三平は仕方なく、お菊の母親の看病のため、しばらくこの地で暮らすことにした。
>そこで三平は、若い娘と出会い恋仲になる。
>なんとその娘の名前は奇遇にも、“お菊”だった。
>
>ある日、三平と“お菊”の二人が高名な僧侶と出会う。
>僧侶が読経を始めると暗雲立ちこめ、激しい落雷が起こる。
>気を失っていた三平が、目を覚ますと、隣に居たはずの“お菊”の姿がなく、
>来ていた着物と、それに包まれた一枚の皿が残されていた・・・。
>この地で出逢った“お菊”は、三平を慕い、未練を残したお菊が、
>姿を変えて現世に戻っていたのかもしれない・・・。
>・・・・。
細部のディテールが異なり、事後談が長いことが本家?と異なるが、
大筋で大体同じ、“皿屋敷”のストーリーだ。
これは、織田廣喜美術館と併設されている、
碓井郷土館で、このビデオを見ることができる。
碓井郷土館。
昨年、大河原邦男展を観に行った、織田廣喜美術館と同一建物。
向かって右側が碓井郷土館、左側が織田廣喜美術館。
裏側が美術館の正面入口だが、どちらから入ろうが両方の施設を利用できる。
アニメーションはチープだが、味のあるバアちゃんの語り部さんと、
モニタだけでなく、その試聴ブースに設置されてある小物に仕掛けがあったりと、
なかなか凝った演出がなされていた。
ただ、他の展示物と合わせてじっくりと見学し、小一時間ほど居たが、
自分以外、誰ひとりとして来館者がなかったという・・・。
平日の昼下がり・・・そんなもんか。
で、郷土館のすぐ近くに、その皿屋敷の跡があり、
そこは“お菊大明神”として、お菊が祀られ、また身を投げたと言われる井戸も残っているとか。
皿屋敷ブースに、「ご自由にお取り下さい」と、小さな紙切れが置かれていて、
それに、お菊大明神への案内地図が書かれていた。
どうやらこの郷土館から徒歩数分の、本当にすぐ近くのようだ。
ご丁寧に蛍光ペンと赤のボールペンで、迷わないようにしてくれているが・・・。
その紙切れを手に、郷土館を後にする。
公園を通り抜け、ご丁寧に蛍光ペンで色塗りされ矢印まで書かれた、
スタッフのハンドメイド丸出しな地図のとおりに歩を進める。
が・・・これ合ってるのか?
えらく遠回りのように、ぐねぐねと歩かされる。
地図を見ながら、道路を確認する。
矢印に従うと、川に沿った歩道を進むようになっているのだが、
その歩道の先を見ても、全然らしき建造物も雑木林も見当たらない。
うーん・・・やっぱり違うと思うのだが・・・。
で、その地図を見ると、皿屋敷跡と、お菊大明神が、
別々の場所に在るように描かれている。
今行こうと思っていたお菊大明神を後回しにし、先に皿屋敷跡へ行くことにした。
地図によると、碓井小学校の脇にそこへ通じる道があるようだ。
そういえば、あの通りにもその案内標識があった。
進路を変えて、小学校の方へ歩を進める。
交差点にさしかかり、その先の小学校脇の農道へと直進する。
「碓井小学校」と並んで、「皿屋敷跡」の案内標識もある。
うん間違いない、この農道の先に皿屋敷跡があるのだろう。
農道の先は、ものすごくうっそうとした雑木林・・というか森が広がっていた。
あの森の中だな。
そう確信するも、一抹の不安を抱く。
交差点の一角に畑があり、おじさんが一人、農作業をやっていた。
地元の人に訊くのが一番。
「すみませーん、皿屋敷へ行きたいのですが・・・。」
迷わず、そのおじさんに訊いてみた。
するとおじさん、苦笑いしながらこちらへ向かってきて、
「みんなここでウロウロしようけんね。」
みんな迷うんだ・・・。
で、おじさんの道案内を聞くと、皿屋敷は今自分が通ってきた所だった!
え?この先なんじゃ?
それはお菊大明神なんじゃ?
「一緒たい!」
それで、このおじさんに郷土館でもらった地図を見せる。
「こら間違うちょるばい!」
ちょ・・・。
おじさんの丁寧な道案内で、場所を特定できた。
農作業を中断させてしまい本当に申し訳ない。
本当にすぐそばにあった。
通りからはずれた狭い路地、住宅の並ぶ一角だった。
おじさんの畑からほんの数十メートル。
そして郷土館からも100メートルちょいくらい。
大きめの古い住宅の建ち並ぶ一角にぽつんとそれはあった。
奥の黒い屋根瓦の建物はお菊大明神に隣接する民家。
手前のほんの小さなお堂のようなものが、お菊大明神。
畳三畳くらいの広さだったか。
お菊大明神の手前にあった、よく判らないほこら。
皿屋敷に関連するのかなんなのか?
いくら伝説たって、怪談話の舞台となった跡地、
もっとこう、日中でも薄暗くて、なんとなく薄気味悪いような場所を想像していたが、
すぐ横は空き地で開けていたこともあり、とても明るく、
初夏のポカポカ陽気も相まって、
なんとものどかな雰囲気のなか、皿屋敷跡を訪れることになった。
お菊大明神。
簡素な木造作りだが内部は派手な装飾で豪華に見える。
お菊さんの名前にちなんで、キクの花がカラフルに描かれている。
お菊大明神の内部は“菊廟”と名付けられ、その霊を弔われているようだ。
お菊大明神の脇に設置されている、皿屋敷跡の概要プレート。
近所のお寺にはお墓も存在しているとか。
またこの大明神にお参りすると、腰から下の病気を治癒してくれる御利益があるとか。
先月腰をやってしまった、お母んを連れてくるか・・・。
あ、ケガじゃダメなんかな?
賽銭箱があったので、財布から100円玉をとりだし、お参りする。
“大明神”ってくらいだから、神社扱いなんだろうが、なんとなく合掌礼拝。
参拝すると腰から下の病気が治るという。
自分も腰の具合が芳しくないから、治るといいな・・とか思ったり。
そしていよいよ井戸。
お菊さんが身を投げたと言われる井戸が残っているらしく、
嘉麻市のサイトでもその写真を見たが、古びた井戸に、
これまた汚れたすだれがかけられていて、妙におどろおどろしかった。
だが実際にあった井戸は・・・。
雰囲気まるで無し。
幽霊が実在したとしても、これじゃあ皿数えたくとも出てこれない。
落下事故防止のためか、ゴミの堆積防止のためか、
がっちりと、スレートというかタキロンのようなもので屋根が設置され、
不気味さもおどろおどろしさも皆無、
著しく景観を損ねた、残念な井戸がそこにはあった。
屋根の隙間から中を覗くと、中は中で鉄格子のフタでがっちりと塞がれていて、
内部を観察することはできなかった。
これじゃあ貞子も出てこれない。
あ、ブラウン管から出てくるんだから鉄格子くらい平気か。
そしてその井戸の脇には、なにやら放置された井戸?が。
よく見ると石のフタも乗っかっていて、
この石のフタは今ある井戸の上にぴったり合うような感じ。
タキロン屋根が取り付けられて、不要になって放置されたか?
そして円筒形の井戸みたいなのはなんだろう?
コンクリート製っぽいので、よりそれっぽく見せるために今ある石のやつに変えられて、
そのまま放置されたとか?
放置された井戸?とフタ。
なんだろう・・・想像と大きく異なったが、おもしろかった。
こういう史跡?巡りもまた楽し。
せっかくだから、お菊さんのお墓があるというお寺にも行きたかったが、
気付けば汗だくになっていて、時間も午後4時をまわっていて、
お墓に行くのはやめた。
皿屋敷跡のすぐ近所、道の駅うすいにある自販機に、
“お菊ちゃん”なるキャラクターのイラストが!
怪談話のキャラクターを、マスコット化する大胆さに脱帽。
お菊大明神、セコムしてました。
さて、この時期に、このようなホラースポットのレポートの記事を書いた。
ということは、今年も毎年恒例のあの時期になったということ。
だが・・・昨年はそれをすっぽかしてしまい、
楽しみにしていた方(居たのか判らないが・・・)には申し訳なく思っている。
準備はきちんとしていた。
恒例のイラストもラフ画はできあがっていたし、あとは日時を決めて募集するだけだった・・・。
で、今年は二年ぶりに是非とも開催したい。
マリオカートWii 納涼おばけ杯!
来春にはWii Uでマリオカート最新作が発売されるということで、
マリオカートWiiのWi-Fi対戦のサービスがいつまで続くか判らず、
本当の本当に最後の開催になるかもしれない。
なので、忙しさにかまけてとか、ドラクエにハマってとか、
そういう言い訳無しで、この夏のうちに必ずや開催したい。
・・・というわけで参加者募集。
日時は決まり次第にフレボおよびこのブログで発表します。
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YouTube: Wii VC SFC版 がんばれゴエモンゆき姫救出絵巻 ステージ1 ボスエリア
コナミから発売された、スーパーファミコンソフト、
“がんばれゴエモンゆき姫救出絵巻”。
ステージ1のボスが、井戸から登場する若い女の幽霊で、
皿屋敷のお菊さんがモチーフだと思う。
ただし皿を数えるのではなく、皿回ししながらその皿を投げて攻撃してくる。
このキャラクター、同じくコナミのスーパーファミコンソフト、
“実況!!おしゃべりパロディウス”※でも、ボスキャラとして登場する。
※スーパーファミコン版のみ登場
この怪談話もゴエモンの動画もとても懐かしいですね。
皿を数える幽霊の話という大雑把な内容しか覚えていなかったのですが、
今回、題名と話の詳細を知ることができました。
マリオカートは、4ヶ月近くストップしてたのを
今年の4月から7の方を再開させて以来、F1のルーム戦と併せて
夢中にプレイしていますが、Wiiの方は少ししかやっていなかったので、
納涼おばけ杯が開催されるなら、久々に堪能したいなと考えています。
余談ですが、実は64版のゴエモン(でろでろ道中オバケてんこ盛り)で、
井戸に現れる「お菊さん」にお皿を渡すというイベントがあったりします。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7980711
の20:40と24:10にご注目を。
マリオカートですが、7の方はごくたまにやっていたりします。
以前、バグショートカットのせいで離れていたのですが、
それが修正されてしばらくして、再開してみたら楽しくて楽しくて。
とはいえ、レートはまだ2,500くらいですが・・・。
Wiiの方はオンラインは一年近くやっていませんので、
納涼おばけ杯開催までには、ぼちぼち再会したいなあと考えています。
都合が良ければぜひ参加してください!
64版のゴエモン情報、ありがとうございます。
さっそく試聴させていただきました。
やはり井戸の幽霊といえば、お菊さんですね。
最近じゃ貞子か・・・。
それにしても、64でゴエモンのタイトルが発売されていたのは知りませんでした。
これバーチャルコンソールで出ないかな?