※ 当記事、「HK 変態仮面」には、下品な内容を多く含んでいます。
このような記事が苦手な方はお読みにならないようお願いします。
休日を利用して映画を観に行った。
週刊少年ジャンプで20数年前に連載された、
あんど慶周 原作の伝説のギャグマンガ、“究極!!変態仮面”。
それがまさかの実写映画化、“HK 変態仮面”。
入場の際、スタッフが半券を切りながら言う。
「11時30分上映のエイチケーですね、8番スクリーン、通路奥の右側です。」
“エイチケー”・・・客が恥ずかしくないように、タイトルをそう言うよう指示されているのだろう。
タイトルの“HK”てのはアレだ、それを考慮して設けられたな。
前に観た綾瀬はるか主演の、“おっぱいバレー”のときも、
スタッフはタイトルを“オーピーヴィー”って発していたのを覚えている。
色丞狂介(鈴木亮平)は、拳法部に所属するふつうの高校生。
刑事だった父親譲りで、人一倍正義感が強いものの、ケンカはからっきし。
そんな自分を鍛えようと、拳法部に所属した。
ある日、狂介のクラスに女の子が転校してきた。
名前は姫野愛子(清水富美加)、ちょっと天然の入ったお嬢様。
愛子が教室に入ってきた瞬間、狂介は一目惚れ。
隣の席になったあげく、拳法部のマネージャーとして入部して来て、
愛子との距離が一気に縮まり、想いがどんどん膨らむ狂介。
その日の帰宅途中、銀行強盗の立てこもり事件に遭遇する。
警察と野次馬が銀行のビルを取り囲み騒然とするなか、
犯人に捕まっている人質のなかに、愛子の姿を発見する!
居ても立ってもいられない狂介はビルの非常階段から侵入し、自ら愛子を助けようとする。
侵入した部屋は女子行員の更衣室。
たまたま見張りに来た強盗のひとりを倒し、その強盗の服に着替える。
強盗団の仲間になりすまし、愛子を救出しようと考えたのだ。
ところが、強盗の着けていた覆面と、女性のパンツを間違えて被ってしまう。
すぐに被り直そうとしたが・・・パンツが皮膚の一部になったかのように顔面に貼り付き、脱ぐことができない。
それどころか体内で何かが沸き上がり、エクスタシーを感じる。
狂介の中に眠っていた、SM女王をやっている母親譲りの変態の血が覚醒。
“変態仮面”誕生の瞬間である。
変態仮面となった狂介は、人間離れした身体能力と変態技で、
銀行強盗をあっさりとのし、無事に愛子を救出することに成功する。
それから変態仮面が大活躍。
様々な犯罪が発生する都度、パンツを被った変態仮面が現れては、
悪人を懲らしめ、事件を未遂にして解決する。
連日、テレビや新聞紙面を賑わし、学校でも話題に。
すべて狂介が正義の味方として行っていたことだった。
そして愛子は、優しくしてくれる狂介に惹かれつつも、
自分を助けてくれた変態仮面にも恋心を抱いていた。
「ヘンタイだけど・・ヘンタイだけど・・・かっこいい?」
自分の正体を隠して、愛子に接近する狂介。
変態仮面に憧れる愛子に自らの正体を言えないジレンマ。
そして自分は変態ではないと拒みつつ、
ついついパンツを被って変身してしまう、認めざるをえない変態の事実。
そんな二人が葛藤を抱いた淡い高校生の恋を展開するなか、
舎弟を引き連れた怪しい男・大金玉男(ムロツヨシ)が転校してきた。
転校してその日のうちに空手部を潰して我が者にし、次に標的にしたのが拳法部。
その大金の魔の手が、狂介と愛子、そして変態仮面に迫る――。
くだらなかった。
実にくだらなかった。
そして、つまらなかった。
原作ファンだったからまだいい。
正直原作レイプのつまらない脚本だったが、
“変態仮面”の完成度の高さだけは評価できるし、
あの動きを実写で再現してくれて、それだけで観てよかったと思っている。
だが・・原作知らない人だったら、最後まで耐えられないかもしれない。
変態仮面は良かった。
あの肉体をよく再現していた。
鈴木亮平という俳優さんは今回初めて知ったが、
なんでもこの役作りのために体重を増やし、さらにそれを絞って、
一年かけて、あのムキムキの肉体美を作り上げたという。
独特の変態チックなポージングも、コミックスを見て研究したのだとか。
愛子役の清水富実加ちゃんも良かった。
素朴な感じで、愛子のスレていない純粋でおっとりした感じがよく出ていた。
永井豪原作のマンガ、“けっこう仮面”の男バージョンのような作品。
ただ露骨にいやらしかった、けっこう仮面に比べ、
変態仮面はマンガではいやらしい部分もあったが、映画ではそれほどでもない。
スカートめくりのシーンで若い女性のパンツが次々に現れるシーンくらいか。
納得いかないのが、設定もストーリーも原作からまるっきり変えられていたこと。
まず狂介は、“ケンカが弱い”設定だが、
原作では最初から拳法が強く、一年生ながら部のホープとして活躍している。
原作オリジナルキャラが、狂介以外には愛子と母親しか出てこないこと。
いちおう大金も原作で登場するが、映画ではまったくの別キャラ。
あのムロツヨシとかいう俳優さんも初めてみたが、どうも気に入らなかった。
阿部サダヲと同じ臭い(アドリブがオーバー過ぎる)を感じた。
拳法部の面々、早乙女主将に、石田副将、
マネージャーの里美ちゃんに、狂介の親友、亀山と猿渡の二人組は欲しかったし、
なによりも、中国からきた、春夏と秋冬の四季姉弟が出ないのが痛い。
狂介をめぐる、愛子と春夏との間で繰り広げられる静かな戦いや、
狂介とパンツ男(変態仮面)との間で揺れ動く春夏、そして秋冬に迫る主将・・・。
まあ四季姉弟を出してしまうと、ストーリーが絞れなくなる恐れもあったろうが。
あと「フォォォ・・・!」っていう叫び声、
唸るように低い声で叫んでいるのを想像していたが、
レイザーラモンHGのように、高い声で伸ばして叫んでいた。
こういうのひとつとっても原作からのイメージが異なっていて、ちょっとがっかりしたりする。
そして原作ファンとして、もっとも受け容れられなかったのが、ラスト。
原作では最後まで決して誰にも正体を明かすことがなかったのに・・・。
それなのに一番バラしてはいけない人物に・・・、
こともあろうか、その場でそれを要求してしまうし・・・。
それにしても脚本がいただけなかった。
何年か前に公開された、柴崎コウ主演の少林少女と同じくらいのお粗末脚本。
最後なんて、なにアレ? CGでロボットて・・・。
で、よくみると、“脚本協力”小栗旬。
戦犯はコイツか?
原作ファンは、このダメダメ脚本の原作レイプっぷりを観に行くのもアリ。
まあ、個人的に変態仮面だけでも観る価値はあると思う。
お決まりのセリフ、「それは、わたしのおいなりさんだ!」もある。
「WELCOME!」が無かったのが残念。
原作を知らない人には、到底お勧めできない。
ここから映画ではなく、原作マンガ、“究極!!変態仮面”について語りたい。
今でも大切に所有している、コミック全6巻。
映画化に伴い、文庫版全5巻としてリメイクされたものが復刻発売されている。
連載された当時、高校生だった自分。
当時からバカなことが大好きだったので、この変態仮面もすぐにお気に入りになった。
周りがドラゴンボールやスラムダンク、幽々白書に熱中するなか、
変態仮面だけのためにジャンプを借りて読んでいた。
放課後、クラスメートの机の上に、
でっかく鉛筆で変態仮面のイラストを描くイタズラをよくやった。
書くのは決まって、「WELCOME!」のポーズ。
女性のパンツを被る・・・。
この男の変態・究極的な願望を、マンガでいとも簡単にやってのけた作者に脱帽した。
それまで頭にパンツを被るようなマンガ※はあったが、
顔に、しかも鼻に陰部の部分が来るように被るなんて、誰が想像したろうか。
さらにブリーフを肩まで伸ばし、股間を強調したあのコスチューム、
網タイツにSM用の鞭、アブノーマルな要素もミックスした、まさに“究極”なマンガだった。
変態仮面を知らない人でも、2ちゃんなどでAAだけならば見たことがあるだろう。
これらAAが使い続けられるのを見ても、
変態仮面がいかにインパクトの強い、伝説的なマンガだったのが判る。
これがまさか20年以上の時を経て、実写映画化されるなんて誰が想像できたろうか・・・。
高校のとき友人から来た年賀状。
九谷君 元気かな?
映画を観終わって劇場を出て、グッズ売り場へ向かった。
目的はもちろん、映画パンフレットを購入するため。
だが、ショーウインドウにパンフレットが見当たらない。
店員の若いおネエちゃんに訊いた。
「変態仮面のパンフレットってないんですか?」
「少々お待ち下さい。」
そういってカウンター裏を探すおネエちゃん。
「ちょっと奥を探してきますね。」
そういって、なかなか出てこないおネエちゃん。
しばらくして、別のスタッフが現れた。
「すみません、変態仮面はパンフレット自体、販売されていないようです・・・。」
そうだったのか・・・パンフくらい作りなさいよ!
グッズも色々買いたかったのに、グッズもひとつもありゃしない・・・。
仕方がないので地下の食料品売り場にあった、
いなり寿司専門店で、“おいなりさん”を買って帰った。
美味かった。
美味いんだこれが。
※ えんどコイチ作:ついでにとんちんかん,御童カズヒコ作:温泉ガッパドンバ など
コメントありがとうございます。
自分も実写映画化を聞いたとき、「嘘だろ?!」と驚きました。
記事にあるように、内容は残念なものでしたが、
これを実写化したことだけでも評価できると思います。
原作は確かにかなり強烈ですよね。
出てくるキャラクター達も強烈な個性を放っていましたし、
それが実写映画には活かされていなかったのも残念でなりません。